【掌編】人魚

 即、肌、ではなくどうか薄絹を一枚、へだててくださいと、願いは聞かれず通じずに、私は息をつめ、愛撫にえます。みるみるうちに肌も胸も冷えきって、びくり、びくりと、身ぶるいするたび小さく白く凍りつくのに、あなたはそんなに汗ばんで、私は知らずに私の中はあたたかく血は通い、不思議と今も生きているのですね。
 でもいつか、この身のしんからすっかりと、青ざめた魚のような女となって海より来たと思い出し、海へと還ってくのでしょう。

(了)

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