ムンクの月

ムンクを見た晩の月は、ムンクの月に見えてしまう。
生卵がとろりと落ちるような、あの月だ。

・・・という物語を語ったとき、脳に映る世界は変容し、ムンクに近づくか、あるいは遠ざかる。
語ろうとしていた世界は、語ることによって失われ、もうすでに新しい世界が開けている。

語ったことによって、ムンクの月に見えてしまうのか、ムンクの月を失くしたのか、今となっては分からない。
知ることは出来ない。