レッドの思い出

(ブルーの画像をお借りして)。

小5で初めて同じクラスになった羽田くん(仮名)は、いわゆるクラスで一番モテる男子だった。
足が速くて、明るくて、優しくて、男子と仲良くつるみ、なんというか、ぱっとしている。
スーパー戦隊シリーズでいえば、レッドである。
私はレッドを好きになるタイプの女子でも、レッドから好かれるタイプの女子でもなかったので、これからする話はそういうんではない。

たしかクラス替えをして初日だったが、羽田くんは私の顔を見るなり「あぁーっ!」と声を上げて私を指差した。(ちょっと失礼)。
そして、「去年のプールの時、ぶつかって、すっ、ご~~い痛かったのに、ぜっ、たい、泣かなかったでしょ?!泣いていいんだよ!!」と、かなりの勢いと熱心さで力説してきた。
全然記憶になかったので、ポカンとしてしまった。
4月に、前の年の夏の話をされても、知らんがな。

その後も羽田くんは、私にはよく分からないタイミングでしばしばその話を持ち出し、やはり力説を始めるので、「やめてくれないかな…」というのが正直なところだった。

私が泣きたいのをこらえていると羽田くんが思ったとき、そう伝えてくれていたとはっと気づいたのは、数年後、わんわん泣いたときだった。

レッドは、小学生の女子は救えなかった。
けれど妙齢の女の子はさりげなく、救ったのでした。