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ゲーム感想 スチームワールドディグ2

この記事はノートから書き起こされたものです。詳しい事情は→この8か月間に起きたこと。

 土に埋もれた秀作。

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 『スチームワールドディグ』の1作目は確か、ファミ通の記事で見かけて、800円なので買ってみたんだと思う。これがまたえらい面白くて、一時はえんえんこのゲームで土を掘り、そのうちにもタイムアタックにも挑戦し始めて、ルートを独自開発で作り出し(攻略サイトなどは一切見ず)、最終的には日本の公式タイムアタック記録3位よりも1分遅い記録を出すところまで行ったんだったかな。
 気になるところはあるので「大傑作」「名作」とは言わないけれども、素直に「これは面白い! おススメ!」と言える作品だ。お値段的に1作目が800円。2作目が1800円とお安いので、買って損はしない。このお値段以上に楽しい思いができるということは保証できる。
(1作目は今でもニンテンドー3DSを引っ張り出して遊んでもいいゲームだ)
 しかしどうもこの作品、日本国内ではそもそも存在があまり知られていないらしい。海外ではそこそこ知られている作品なのだが……。ニンテンドーeショップのランキングにこの作品が載っているのを見たことがない(載っていたことはあるかも知れないけど)。それじゃ惜しい気がするので、今回は「感想文」のついでに作品自体の紹介と「面白いぞ! おススメだぞ」というメッセージを込めて書きたいと思う。

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 まず基本情報から。
 舞台は炭鉱。登場キャラクターたちは全員ロボットで、おそらく蒸気機関で動いている。今時のキレイなロボットではなく、油と錆びまみれの泥臭いイメージだ。
 舞台となっている街の主産業は炭鉱。主人公は炭鉱の中へ入り、穴を掘り、鉱物や宝石を発掘し回収、街に戻ってお金に変えて、得たお金で様々なアイテムを入手して、より効率よく仕事を進められるようになる。
 ゲームの攻略は、まず「自分が掘った穴がルートになる」だ。これが下手に掘ると、行って戻る時面倒くさい思いをしたり、最悪の場合には帰還不能になる(ゲームが詰まないように色々配慮はある。それでも駄目なら「自爆」でデスルーラになるが)。どういった掘り方をしたらスムーズで効率よくゲームが進行できるか、考えながら進めなければならない。
 ゲームに慣れてタイムアタックを意識し始めると、直下掘りするようになる。結局は真下にダーッと掘るのが一番早いし、鉱物は全回収するよりも「高額な鉱物」のみを狙って集めた方が良いという考え方になってくる。まあこの辺りは「慣れれば」だけど。
 そうすると「鉱物の場所はランダムではないのか?」と思われそうだが、実はすべて手付けで配置されている。鉱物やアーティファクトの置かれている位置は変わらない……という説明は次の段落に移ろう。

 炭坑内の設計だが、今どきのインディーズゲームとしては珍しく「自動生成」の手を借りず、ほぼすべて手付けでステージ内のすべてが構築されている。自動生成の手を借りてないということは作り手にとっては非常に大変。でもおかげでステージ全体の構成が良く、鉱物の配置、隠し通路、収集要素であるアーティファクトなどの配置がバランスよく全体に散らされている。
 自動生成に頼っていないということは、「運悪くクソマップに出くわす」という事態も避けてくれる。すべてのプレイヤーにフェアな体験を提供してくれる。
 もちろんタイムアタックも「運頼み」にならず、破壊不能な岩や鉱物の位置を覚えてそれを目指していけばよりタイムを縮めることができる。
 ただ、自動生成に頼らないということは「入るたびに体験が変わる」というような新鮮さが得られない、ということと、あとはやはり作る方が大変。自動生成に頼らなかったこその作品評価だとは思うけど。
 本当はいうと、どこかにオマケ要素として「自動生成マップ」があれば良かったのにな、とは思う。クリア後の「高難易度マップ」じゃなくて、もっとカジュアルな感じの。高難易度マップは実際あるのだけど、あまりこの作品に相応しいようには思えない。

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 基本的にはコツコツ土を掘って、お宝を入手して帰ってお金に変える……というゲーム。こういうちまちました作業、ほとんどの日本人は絶対に好きだと思う。なのに日本ではあまり存在が知られていないのはなぜだろう? という不思議はある。
 私なんて、一時は毎日のように新しいファイルを作って最初から掘りなおすということを繰り返してしまった。土を掘るというちまちました作業に加えて、自分で掘った道がそのまま攻略ルートになってくる。だから次第に自分で掘った道が恋しくなり、変な掘り方したくなくなってくる。何度もゲームを繰り返しているうちに、いかに綺麗に掘ってやろうか……とか。砂場遊びをしていた子供の頃の気分がどこかしらに戻ってくるのを感じた。えんえん掘りたくなるから、エクストラ自動生成マップが欲しかった。

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 『スチームワールドディグ2』で懸念していたことが一画面だということ。
 前作は私の場合ニンテンドー3DSでプレイしたのだが、アイテムとマップが2つ目の画面になっていて、これが非常に良かった。ただアイテムのグラフィックが多すぎ、マップ表示が小さすぎ……とは思ったけど。
 2作目はどうなるかな……と思ったが、何も問題なく一つの画面の中に全て納まっていた。あ、高解像度化の恩恵ってこういうところにも出てくるものなのか。ただ、ミニマップはもう少し横に広く表示してほしかった。微妙に反対側の端が映らないんだよなぁ。

 『スチームワールドディグ2』は1作目で気になった「ボリューム不足」をかなり解消している。1作目はダーッと下へ下へ掘り進めたらあっという間にゲームが終わってしまう感じだったが、2作目はマップ自体がかなり拡大したし、炭鉱の入り口自体も複数あるし、縦に進むばかりではなく、横に進むシーンもあるし、シチュエーションもだいぶ細かく複雑に練り込まれている。正当なバージョンアップ版といえる。
 それに本来のストーリー進行とは別の収集物もある。収集物を集めれば、新しいスキルが解放される仕組みだ。ゲームクリア後も、しばらく収集物を求めて、マップ上を巡り歩くことになる。
 キャラクターの掘り下げも、前作よりももっと細かくなった。単純にテキスト量が増えたし、「旅のお供」となるキャラクターも出てきて、ストーリー中、ちょっとした対話ができるようになった。
 全体的に見ても、1作目の「物足りなさ」をほどよくボリュームアップさせた作品となっている。

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 主人公のスキルも見直されている。2作目で追加されたのはフックショット。これのおかげで距離のある穴を飛び越えられるようになったし、上方向にも向けられるので掘り方の失敗で詰みにくくなった。
 ただこのフックショット、後にジェットパックを手に入れるとそこからもう使う機会がなくなってしまう。コウモリに対してムチ代わりに攻撃するくらい。使いどころが少ないのが惜しい。
 『スチームワールドディグ』は1作目ですでに完成されていたゲームだから、この部分はあまりバージョンアップしたようには感じられなかった。むしろ「余計かも」と感じるし、全体のボリュームが増えたことで新しいスキルが得られるまでの間隔が長くなったような感じもある。これが全体のテンポを遅くしていたようにも感じられる。
 それに全てのスキルがアンロックされたら、その次がもうラスボスだ。せっかく得たスキルなのに、どこかの探索で試す機会がほとんどない。これならもう少しスキルのアンロックタイミングを早く、それを使った掘りを楽しめるようにしてほしかったかも……と思うところも。

 『スチームワールドディグ2』の難点に感じられたのは敵キャラクター。ほとんどの敵がプレイヤーの足場であり、ルートを破壊する障害物となっている。ゲームのコンセプト的に「足場を崩されるのが一番痛い」からこそ敵キャラクターがそこを突いてくるのはわかるが、ほとんどの敵が同じテーマで作られるのはどうかなという気がした。アーティファクト収集で何度も周回していると、敵は何度も何度も出現するのでそのたびにどんどん足場が破壊され、最終的にはそのエリアの土すべてが消えてしまう……ということもあった。破壊の仕方がやや過剰に感じた。その頃にはジェットパックがあるから飛んで行けるんだけども。
 プレイヤーにとって嫌なことをするのが敵キャラクターの務め。でももうちょっと違うタイプのものも見たかったというか……。単純に、足場を崩されるのがウザかった。せっかく掘ってルート作っているのに崩すなよ、と。カタツムリ倒しにくいわ、と。敵キャラクターのコンセプトを見るに、作り手がゲームのテーマをよく理解しているのはわかるが、破壊効果大きすぎだったと言いたい。

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 難点その2はお供キャラクターのフェン。こいつが可愛くない。生意気だけど可愛い……というキャラクターを目指しているのはよくわかるが、失敗している。ただ生意気で憎たらしい奴、で終わってしまっている。
 それが最後の最後で自己犠牲を見せるのだが……「なんで?」という感じ。お前、別にそういうキャラクターじゃなかっただろ。どうも物語展開に合わせた無理矢理。予定調和に感じられた。
 最後の難点はストーリー。「なんでそうなる?」という結末。ドラマがない。どうもこちらも予定調和な感じが出てしまっている。よく書く話だが、物語のないドラマは、何をやっても継ぎ接ぎにしかならない。「いい画」があってもその画だけが浮いちゃう。『スチームワールドディグ2』はその状態に陥っちゃったな……という残念感が残る。

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 と、後半に難点を書いてしまったのでそういう後味の感想文になってしまいそうだが、ゲーム自体は無茶苦茶に面白い。えんえん土を掘っていたくなる。ゲーム自体は秀逸なので、1800円以上の体験は得られるとはっきり言える作品。ぜひおすすめしたい。埋もれたままにしておくにはもったいない逸品だ。


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