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ゼルダ無双 ハイラル散歩4 ハテノ砦

 ハイラル散歩第4回はハテノ砦。ハテノ砦は『ブレスオブザワイルド』プレイヤーにとっても因縁深い場所である。

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 双子山およびクロチェリー平原、ハテノ砦へやってきた時、「え? ここ?」となった。『ブレスオブザワイルド』で見た風景をまるっきり違う。『ブレスオブザワイルド』時代のクロチェリー平原は、ガーディアンの残骸だらけで、それこそ何も残っていない……というような場所だった。それが『ゼルダ無双』時代では要塞と言っていいほどの砦がいくつも築かれた場所だった。ではクロチェリー平原がどういう場所だったのか……を考えてみよう。

ブレスオブザワイルド 地図 ブログb

 地図から見てみよう。ハイラル城陥落後、生きのびた人々は二手に分かれて逃げ延びた。その一方は無敵を誇っていたはずのアッカレ砦。もう一方の一団はハテノ砦を目指した。なぜならここにも、鉄壁の防衛ラインが築かれていたからだった。
 ではどうしてこの場所に物々しい砦が築かれたのか。

ブレスオブザワイルド 地図 ブログd

 やはりヒントは地図で、ミナミノ湾からハイラル領地への進入が可能な土地だったから。そうはいっても、こちらの道はヒガッカレ海岸と較べるとかなり厄介な道のりだが、それでも進行可能と言えば進行可能。
 もう一つのポイントは双子山の地形。あの地形を見て、私たちはピンと来るものがある。あれは「テルモピュライの戦い」だ。

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 映画『300 スリーハンドレッド』という映画をご覧の方はよくご存じだとは思うが、たった300人のスパルタの精鋭が、テルモピュライという場所で数万人の軍勢を押しとどめた……というお話で、話を聞くと空想のように聞こえるが、歴史上の実話である。

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 映画『300 スリーハンドレッド』で描かれた地形というのが、ちょうど双子山のような二つの山が接しているような、ごく十数人しか通行できないような細い通りであった。レオニダス達はここを拠点に、屈強な肉体を盾にこの場所を死ぬまで守り続けたのである。
 ここでどうして双子山を手前にした平原に砦が築かれたのかを推測することができる。もしも砦を突破されても、双子山の地形を利用して通行止めができるからだ。そうした想定の元に、ここが拠点となったのだろう。

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 しかしアッカレ砦の時と同じく、想定外のできごとが起きてしまった。敵が外側からではなく、内側から来てしまった。ガノンの軍勢がガーディアンを乗っ取り、ハイラル城のほうから来てしまった。双子山の地形を活かした防壁は何の役にも立たず、後のタモ沼に築かれた砦もあっという間に陥落し、統制立てた戦闘ができないような混乱状況に陥ってしまった。
 ガノンもただボコブリンの軍団を突っ込ませるだけではなく、いかにすれば人間文明を崩壊させられるか、知恵を働かせてくる。人間側が対ガノン向けの兵器を用意しているなら、その兵器を乗っ取る。ガノンにはそれだけの狡猾さがあった。
 現代でももしも近代兵器を全て乗っ取られ、人間側が肉体のみで戦わねばならない……という状況を突きつけられると、どうにもならなくなってしまうだろう。ハイラルの人々はそういう状況に陥ってしまった。

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 ところで、双子山の地形はどのように造られたのか?
 とある人が「ビーム兵器説」を挙げていて、「ああ、なるほど!」と思わされた。確かに双子山の地形は自然に造られたもののような感じはしない。

 オイオイ、ビーム兵器なんてどこにあるんだ? と思われるが……。
 ここにある↓

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 なんならガーディアンが放つ光線もビーム兵器。
 でも神獣のビーム攻撃でもこれだけの山脈に穴を開けるのは難しい。どこかの時代では、これだけの巨大な亀裂を造れるほどの、超強力なビーム兵器があったんじゃないか……と想像する。人間側の兵器は、神獣だけじゃなかったのではないだろうか。

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 ビーム兵器説を聞いた時、すぐに「そうかも」と思った理由は、『ブレスオブザワイルド』の時に、奇妙な地形を見付けていて、気になっていたからだった。あの山脈の穴の開き方は、少し不自然じゃないだろうか? あれもビーム兵器が使われた痕跡だとしたら、それなりに納得できるものがある。
 もしかしたら他にもビーム兵器跡はあったかも知れないが、長い風雪の間に自然の風景と同化してしまったのかも知れない。ビーム兵器が使われたとしても、相当古い時代なのだろう。

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 ではどうして双子山が真っ二つに切り裂かれたのか? 何かの戦闘中の最中に偶然たまたま真っ二つに切り裂いたのか? 何かしら意図があるとしたら、それはなんだろうか?
 またまた地図を見てみよう。地図を見ると、宿場町からモヨリ橋、双子山までほぼ直線で結ばれている。何の交通の不便なく、まっすぐに進める。これは偶然ではなく、そのように意図して造ったのだろう。
 『ゼルダ無双』時代では始まりの台地は「お参りに行く場所」という宗教的な場所でしかなかったが、それ以外の時代ではもっと重要な意味のある場所だったかも知れない。あの場所に時の神殿があるのを見ると、ひょっとするとあの近くにハイラル城が築かれていた時代もあったのではないか……ということをちょっと考えてしまう。
 そうした場所への道を切り開くために、あるいは東側との交易を潤滑に促すために、山を豪快に切り裂いたとしたらどうだろう。
(……と、考えてから「だったらトンネル作れば良いのに」と思いついてしまった。どうしてトンネルではなく、真っ二つに切り裂いてしまったのだろうか……)

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 とりあえず、ハテノ砦周辺の地域を見ていこう。

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 物々しい砦が建てられている。すでに激しい戦いが始まっていて、崩壊が始まっている。
 地図を見てみると、この辺りは『ブレスオブザワイルド』時代では馬宿になっていた場所だと思う。100年後の時代では砦は跡形もなく消えて、別の建物に変わる……時代の流れを感じさせる。

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 ここの水場に入って、「あっ!」と思い出す。そうだ、『ブレスオブザワイルド』時代ではここに祠があったんだ。

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 カカリコ橋。この橋を抜けて、細道をずーっと進んでいくと、カカリコ村に行き着く。
 『ブレスオブザワイルド』時代では、単にカカリコ村へ行くために掛けられた橋……だと思っていたが、実はここにも砦が築かれて、戦略上の防壁となっていた。

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 いくつものゲートが連なっているが、そのほとんどが燃やされている。ここに入っていくと、戦場の壮絶さを体験することができる。『ブレスオブザワイルド』時代ではこの辺り、何か残っていただろうか……。

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 『ゼルダ無双』のオープニングシーン。こちらのシーンはif展開が始まる前の正史。画面を見るとわかるが、ハテノ砦へ撤退してきた兵士達の姿はすでになく、リンクがたった一人で戦っている……。
 一つの疑問として、なぜリンクはこの場所で、命を賭してまで戦ったのか? なぜ撤退しなかったのか? なぜ逃げようとしなかったのか?
 私の推測では、ハテノ砦の背後に、ハイラル城陥落から逃げ延びた人々が避難していたから……と考えている。ハイラル城や宿場町に住んでいた多くの人たちは疎開し、どこかへ避難している。その避難先はどこだろうか……と考えた時に、東端のハテノ村やウオトリー村が考えられる(オブリー平原というまとまった空間のある避難先もある。そこにテントが一杯建っていたかも知れない)。もしもハテノ砦を手放し撤退した場合、ガーディアンの軍勢はハテノ村になだれ込んで行くことになる。リンクはそれを守り切るために、この場所で命がけの戦いを挑んだのではないだろうか。

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 ハテノ村は『ゼルダ無双』の時代、もっと寂れた場所だったのではないか……後の疎開してきた人々がさらに発展させた村ではないか……という予想を立てていたが、それは違っていた。『ゼルダ無双』の時代でもすでに染めの東風屋があって、見るからに華やかな感じに描かれている。
 ということはそもそもハテノ村はそこそこ発展した村だったのだろう。

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 『ブレスオブザワイルド』は虐殺シーンをまったく描かなかった作品だ。ガーディアンがハイラル城下町を襲っているシーンを見ても、住人の姿がまったく描かれていない。ではガーディアンは何に向かってビーム攻撃しているのか?
 多分、これは任天堂的な配慮で、人間の描写を省略しているだけで、本当は何人もの人が虐殺されたんだと思う。そういったショッキングな描写を避けて、あるいはレーティングに引っ掛かるから省略しつつ描写されたのが、あのハイラル城陥落の場面だと思われる。
 リンクは虐殺の場面を目撃しつつ、ゼルダ姫を守るために手を引いて逃げ出したわけだし、ゼルダ姫はだから悲しみ、己の無力さに落胆したのだろう。ゼルダ姫は死んでいった四英傑だけではなく、国民達の命も背負ったのだ。だからこその後悔と決意だった。
 兵士達も全員死に絶えて、リンクは最後の一人になっても戦い抜いた。これ以上人を死なせるわけにはいかない。最後の踏ん張りどころだった。
 そうした最中にやっと力を目覚めさせたゼルダ姫も、自分の後の人生を投げ出す覚悟を決める。100年間ガノンを押さえ込み、いつか目覚めるかもしれないリンクを待ち続けるという……もしかすると最後まで目覚めないという可能性もあったのに。その賭けを信じて、ゼルダ姫もガノンとの戦いに身を投じていく。
 それが『ブレスオブザワイルド』で描かれたドラマだ……と私は考えている。

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 正史ではアッカレ砦もハテノ砦も陥落し、人間文明はここを境に一気に崩壊へ傾くことになる。都市が消滅し、あとは点々とした村が残るだけ。歴史消滅の危機に追い込まれることとなる。そういた黄昏の時代を描いた『ブレスオブザワイルド』。
 本当ならリンクにおける最後の戦いの場所だったハテノ平原。この場所に来ると私も少し感傷的になる。

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