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ゼルダ無双 ハイラル散歩3 アッカレ砦

 ハイラル散歩第3回はアッカレ砦!

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 『ブレスオブザワイルド』時代では徹底的に破壊され、蹂躙され、ガノン側拠点と成り果てていたアッカレ砦。『ブレスオブザワイルド』の時はとにかく侵入が大変で、そこがどういった場所なのか考える暇すらなかったのだけど……。
 でも今回『ゼルダ無双』で往事の姿を見て、「ああ、そうだったのか!」と気付くことがある。  まずいって、アッカレ砦とは角笛城だった、ということ。

中つ国 角笛城 ScreenShot00628

 角笛城とは?
 『ロード・オブ・ザ・リング 第2章』の後半に登場する砦のこと。ローハンの民が有事の際、住民を引き連れてこの砦に立てこもり、決戦に備えるための場所。
 映画を見ると詳しく書かれているのでわかりやすいが、本当に全住人を引き連れて、決死の戦いを挑むための場所となっている。外界から遮断されて孤立無援状態になるので兵糧攻めなんかされたらキツそうだな……という気がしたが。映画では鉄壁を誇る角笛城が次々と防壁を突き崩され、あとちょっとで全滅、というところで決死の突撃、大逆転を決めるという劇的な戦いが描かれていた。ファンタジー映画の中でも名エピソードの一つである。
 このアッカレ砦も、おそらくは角笛城的な役割が与えられた場所なのだろう。

 まず地図を見てみよう。

ブレスオブザワイルド 地図 ブログa

 ハイラル城が陥落した後、城にいた全員が一気に死亡したのではなく、命からがら逃げ延びた人々は二手に分かれた。もう一方のほうは次回説明するとして、ある一団はアッカレ砦へと向かった。私の想像では、生き残った住民を引き連れて、アッカレ砦に立てこもり、そこで決死の戦いを挑んだのだと思われる。
 次に、アッカレ砦の立地について見てみよう。

ブレスオブザワイルド 地図 ブログc

 ハイラル地方はとにかくも自然が厳しい土地だ。それは逆に言えば、“自然に守られている土地”であるともいえる。このハイラル地方をもし攻めるとしたら、どこから侵略するべきだろうか?
 まず北と西は絶対にダメ。『ブレスオブザワイルド』時代にあの辺りを巡ってみたが、あまりにも険しい谷と山脈が遮っていて、一人の冒険家が通り抜けることすら困難な場所で、あんな場所を軍隊で通るなんて自殺行為だ。
 すると海からの進行が常套となるのだが、海側も厳しい自然に遮られて、気軽に船を横付けできる場所は多くない。おそらく入りやすい場所はヒガッカレ海岸やその辺りだ。
 ではそこからどちらの方向へ進軍するか。まずデスマウンテン側は無理。あんなしょっちゅう溶岩が降ってくるような場所を歩きたいとは思わないし、ドロンゴ族は力強く恐ろしい。ゾーラの里の側を通ろうにも、あの辺りは険しい谷になっているし、水場が多くて、軍団は細い小道を歩かねばならない(1000人の軍団が通りきるのに何日かかるやら……)。そしてやはり水中戦を得意とするゾーラ族は恐い。
 すると軍団の通り道はアッカレ砦の前ということになる。アッカレ砦はそんな外からやってきた侵略者を迎え、撃退するための場所だった……ということがここで推測できる。

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 砦内に配備された大砲が、ことごとく外側を向いていたのは、「敵は外から来る」という想定の下だった。

 だがアッカレ砦の悲劇は、「敵は内側から来てしまった」ということだ。ガノンの軍勢はハイラル城側から攻めてきて、兵士達を追いかけてアッカレ砦のほうへ来てしまった。完全に“想定外”の戦いを強いられてしまったわけである。
(だからまず外側を向けられている大砲のほとんどが使えなかった)

 こうして見ると、ガノンの軍勢がどうしてアッカレ砦をあれほど念入りに破壊し、蹂躙していたか推測することができる。この場所が人間側にとって、最終的な防衛戦になる場所だったからだ。ひょっとすると正史ではこの場所を攻略するのにガノンもそれなりに手を焼いたかも知れない。だからこそ、この場所を再び人間側に戻さないためにも、徹底的に破壊したのだ。

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 もしも正面突破された時のために待機してあるガーディアン。侵略者を殺す気まんまんだ。

 しかし、『ゼルダ無双』時代でも当初、この辺りはイーガ団に奪われていた。
 ハイラル側にとって、重要な拠点であるはずなのに、どうして?
 どうやらハイラルの人々は油断していたらしく、いつでもこの場所を有事に備えて万全に整えていたわけではなく、それ以外の時は警備も薄めにしていたようだ。なにしろ巨大な砦だから、管理が大変だったのだろう。兵士を駐留させるだけで結構な予算を食いそうだ。
 侵略する側としてはまず押さえたい砦だから、時々この砦を攻めようとする。こうやって奪われたり奪い返したりといったこともしょっちゅうやっていたのだろう。

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 『ゼルダ無双』時代でもおそらく充分に整備されていなかったのだろう……と推測するポイントはここ。大砲が錆びちゃってる。まだ使えるとは思うが、新品の大砲を配置しなおすほどここに予算を投入していない、ということがわかる。

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 ハイラル城前に置かれた大砲。新品だとこんな感じ。砲身を掃除するブラシがないのが気になるが……。

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 その一方で、補修しようとしているところも見かけられ、ハイラルの人々にとっても古いこの砦を、再整備し、来るべきガノン戦に向けて使えるように整えよう……とはしていたようだ。

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 アッカレ砦の橋を下から見上げたところ。下は「アッカレ練兵場」と呼ばれる空間になっていた。それっぽい案山子が一杯に置かれている。「訓練場」としては定期的に利用していたのだろう。

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 たぶんあのアッカレ大橋は、何かあった時落とせるようになっていたんだと思う。かなり頑丈そうな造りで、そう簡単に破壊できそうにはないが……。神獣なら落とせるか。
 攻められてどうしようもなくなった時は橋を落とし、敵軍を分断させて大砲で撃ちまくる……という想定があったと思われる。

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 往事のアッカレ砦の姿。こうして見ると、かなり固い岩山にへばりつくように石造りの砦が築かれている……ということがわかる。ゴツゴツした赤い岩の無骨さと、壮麗な城の様式美を持った人工物のコントラストがなんともいえない魅力的なフォルムを作り上げている。
 ところで、アッカレ砦はいつ頃作られたのだろう?
 ヒントになるのはシーカータワーが内部に収まるように作られていること。後からシーカータワーを建てたのではなく、明らかにシーカータワーがそこにあり、その形にぴったり合うように作られている。シーカータワーが作られてから以降の造りである。

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 ここにシーカータワーを作ったから砦を作ろうと構想したのか、それとも最初からこの場所に砦を作るつもりでシーカータワーを作ろうと考えたのか……それはさすがにわからない。
 ただシーカータワーは全盛期の頃は人も物資も無制限に転送し放題だったので、何かあった時は即座に兵士や物資を送り込む、また住人を避難させる、ということが可能だった。ハイラル有事の時には大活躍したはずである。

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 砦内部空間へと入っていこう。迷路のよう……とまではいかないが、内部はちょっとややこしい、まわりくどい作り方をしており、オマケに廊下が狭い。こういうのも大軍勢が一度に入ってくるのを防ぐための仕掛けである。

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 内部空間を見ると、なにもかもが戦闘の為にしつらえが作られているわけではなく、やや落ち着いた空間もある。絵画が飾られているし、本棚もある。祭壇と思われる場所や、大きなテーブルも置かれている。やはり人々が避難し、籠城し、そこで数日過ごすことも前提としてあったのだろう。大広間はちょっと地位の高い人を迎える場所だったのかも知れない。
 ゲーム中では避難した住人の姿はなかったのだけど、省略されているだけで、実際にはプレイヤーが行けない部屋に固まって隠れていたんだと私は思っている。
(ゲーム中、行けなかったエリアは一杯あったから、そういった場所に人々はいたかも知れない)

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 余談。
 以前、私はこのブログで魔王の存在とはなんであるか――という話をした。魔王の脅威とはどういうものなのか。魔王がどれほど人類側にとって恐ろしい存在かというと、出現すればその時、人間文化のグレートリセットが起きてしまう……という仮説を話した。
 どういう経緯で話したのかというと、「ドラクエシリーズの世界観は実は全て一つにつながっているのではないか……説」の時だ。全て繋がっているから、映像を見ると毎回似たようなタイプの顔の人たちが出てくる。いつも似たような武器やアイテムが売っている。ラーの鏡のような定番アイテムも出てくる。
 でも各シリーズごとに繋がりを感じない。それは魔王が出現したことによって、歴史が消失し、その以前へと遡れなくなったから。魔王の脅威はそういう歴史の分断を生み出すのだ。だから魔王は恐ろしい存在であるといえる。でも実はドラクエシリーズの歴史はすべて繋がっているんじゃないか……という想像をしてみたのである。人々は歴史を失って忘れてしまっているが、しかし漠然とした記憶が、似たような武器やアイテムを作らせているのだ、と。初期のⅠ、Ⅱ、Ⅲだけではなく、実はその後もずっと。

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 どうしてこういう話をここで始めたのかというと、『ブレスオブザワイルド』の歴史観にちょっと疑問があって……。というのも1万年前、厄災ガノンが出現し、神獣で取り囲んで撃退した……と語られる物語がある。ではその後、ガノンは一度も出現しなかったのか? 1万年間姿を現さなかった?
 そんなに長期間姿を現さなかったら、「1万年前の怪物? そんなのおとぎ話さ」ってなるだろう。物語が正確に伝え残されるとも限らない。私たちの歴史を振り返ってみても、たかが1000年前の物語すら、それがどういう意味で書かれたのか、学者達の頭を悩ませているくらいだ。1000年も時間がたてば言葉の意味も変わり、そのままの言葉で伝え残しても意味が伝わらないことが多くある。
 どうして1万年前にどうやら出現したらしい怪物に対して、こうも慌てて、しかも厳重な警戒態勢を敷いたのか……それはわりと近い時期に厄災ガノンが復活し、その脅威を目の当たりにしたからじゃないのか?
(それこそハイラル王のお爺ちゃんくらいの時代に経験していて、だからこそハイラル王はあれだけ厳しく娘に接していたのではないか?)
 厄災ガノンは定期的に復活していて、魔物の軍団が人間を攻めてきた。だから防備を万全にしようとしたし、厄災ガノンによる徹底的な破壊があったから、文明がその都度リセットされた。

 ハイラルの歴史は1万年もあり、その1万年前の時代では神獣という優れた兵器を作り出すだけの高い文明があったのに、なぜそれが後の時代では再現不能技術になったのか。そのことにも疑問があった。
 再現不能技術になった理由は、1つめには必要のない時期が長くありすぎたために技術者が絶えてしまった、もしくは2つめの理由として、大きな脅威があって、技術を持った人々や製造するための場所、道具を徹底的に破壊されてしまったから。おそらくは後者の方だろうと私は考える。そしてその破壊を実行したのもガノンだろう。
(3つめの理由として、その技術を生み出すための天然資源を採り尽くしてしまったから……というのもある)
 私たちの歴史を見てみると、1万2000年前に農耕が始まり、1万年前には最初の金属である銅が製造されている。そこから私たちは様々な紆余曲折を経験しつつも、ここまでの文明を作っている。1万年という時代の流れがあれば、これくらいになると想定するのが普通だ。
 ところが『ブレスオブザワイルド』の世界観はいまだに素朴な文化観のまま停滞し、大昔の言い伝えに従って、救世主と伝説の武器に頼ってしまっている。そうなったのは、ガノンによるグレートリセットが定期的に起きたからじゃないか。
(『ブレスオブザワイルド』の1万年の歴史の中に、その他のゼルダシリーズの歴史が収まるのではないか……とすら考えている)

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 このアッカレ砦も、「もしかしたら外からの侵略者が来る……かも知れない」という曖昧な不安感だけでこんな立派なものを造ったりはしない。どこかの時代で実際に侵略者がやってきて手を焼いたからこそ、こういうものを造ったのではないか。一回酷い目に遭わないと、ここまで見事なものを造ろうとはそうそう思わないだろう。
(ただ、それもしょっちゅう攻められているわけでもないから、油断してアッカレ砦を警備手薄にしてしまっていたのだろう)
 『ブレスオブザワイルド』と『ゼルダ無双』は1万年前と現在という2つの時間軸でのみしか物語として語られないが、たぶんそれ以外の様々な歴史があり、そうした歴史を踏まえていろんなものが造られているんじゃないか……という想像をしている。
 という想像をさせてくれるほど、『ブレスオブザワイルド』の世界観はしっかり造っている……ということでもあるが。

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 そういう想像をもたらしてくれるアッカレ砦も、「正史」では兵士達が住人を引き連れて避難し、決死の戦いを挑むが全滅。逃げ込んできた人々もろとも全員死亡し、ガノンに乗っ取られることとなる。その壮絶なる戦いの痕跡を残す場所でもある。

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