2019年春アニメ感想 ハイスコアガール 13話以降
この記事は、もともとは2019年7月1日に掲載予定だったものです。事情はこちら→ご無沙汰しておりました。
今期配信ではなく、ちょっと前に配信された作品。まとめて見ちゃいましょう。
テレビシリーズ12話ラストで、日高小春の告白。それからどうなった……というのが13話。
日高小春は矢口ハルオと恋仲になるために、ゲームで勝負を挑む。自分が勝ったら恋人に、負けたら諦める……って、それなんかおかしくないか? この子もずいぶんゲームに毒されたもんです。あと、大野晶を意識しているんでしょうな。
一方の矢口ハルオはこの後に及んでも未だに恋愛の意識はない。大野晶への想いも、「大野といたらなんか楽しいよな」くらいの感じでしかない。……うん、ゲーマーってそういう人種だよ。うんうん。
日高小春はこのタイミングで新登場したニコタマちゃん(井澤詩織)の特訓を受けて、実力を高めていく。一方のハルオ君は乙女心を知るために『ときめきメモリアル』……ちょうど25周年ですよね。あのゲームが出てから、そんな時間が経っていたか……。
でも『ときめきメモリアル』ってやっぱりシミュレーションゲームだから、戦略立てて攻略を進めるゲーム。効率よくパラメーターを上げつつ、目当て以外の女の子と引っ掛からないようにさせて、好感度を高めていく。立ち回りさえうまくやっていれば、女の子が出過ぎて爆弾が付いちゃう……ってこともかなり抑えられるんだ。……やり方は忘れたけど。ゲーマーは女の子がどうこうより、そういう「攻略法」を第一に、さらに効率についても考えながら進めるんで、『ときめきメモリアル』をやってもあまり乙女心を知ることにはならんと思う。まあ、こういう作品の展開としては面白いけど。
アニメ本編は、テレビシリーズの頃とほとんど変わりはなく。アイキャッチや次回予告に少し変更があった程度。オープニング、変わったような気がするけど、見比べていないのでよくわからない。アニメ本編の続きとして、そのまま楽しむことができる。
Netflixで視聴すると、相変わらずシーンの始まりに、数コマ謎の止め絵が入る。これ、なんなんだろう?
まあまあ本編。
結局のところ、日高小春は矢口ハルオとのゲーム対決に敗北する。勝ちたいがあまり焦りが出る小春と、ゲームそのものを楽しんだハルオ。この差が勝敗を決めた。
負けた小春は「バカバカ乱舞」で矢口ハルオを殴り倒して、潔く手を引く。この子も思えば不憫な子です。
こうして小春篇は終わり、主題は大野晶へ。
現実的な背景を持つ小春に対して、大野晶はかなり虚構の側にいる。現実世界にいるのか、っていうくらいのお嬢様だし、そのお嬢様はあの家出の後、「お城に幽閉されるお姫様」になっている。鬼教師業田萌美によってじいやは職場を変えられ、ゲームとの接点も、ハルオとの接点も失っていく。“恋愛物”としての障壁はぐんぐん高まっていく。その後ろで叫び続けるガイルにいさんとザンギエフおじさん。ガイルさんとザンギエフさん、だんだん人格を持ってきたな……。
そんな時に現れるのがおねーちゃんの大野真。いたんだ、姉さん。
大野真は大野晶と正反対のキャラクター。無口な晶に対して、思ったことは何でも言う真。半ば監禁状態の晶に対して、自由に出入りができる真。裏と表。1Pと2P。晶と正反対というか、晶ができないこと、行動できないことを可能とする、晶のシャドウ的な振る舞いをするキャラクターとして登場する。
そしてラスボス業田萌美と対峙していくわけだが、大野真の言葉は、大野真を通した実は大野晶の本音という構造になっている。業田は晶の語らぬ内面をそこで知り、心を変えていく……。
……わけだが、ここの流れがずいぶん軽い。ここまでたくさんの障壁を築いてきた業田だったのに、あっさりと扉を開けてしまった。
ここは業田の心理の変化に、もう少し時間を割いて欲しかった。これだとどうにもご都合主義的な展開に見えてしまう。そんなに簡単に崩れる牙城だったら、もっと早く崩れてたんじゃないか……という気さえしてしまう。ここが惜しい。
業田の許しを得た大野真は、矢口ハルオとともにAOUショーへ。矢口ハルオは結局のところ、最後まで恋愛としての欲望に目覚めることはなかったが、大野真といること、大野真の存在を特別なものと認識し始めることになる。本当の恋愛物へ、ゆるく気持ちを動かしたところで、作品は終わる。
最後まで『ハイスコアガール』は恋愛ものにならず、その一歩手前で足を止めたが、むしろそこで留めるのが良かった。少年期の終わり、そのギリギリの境界線をうまく描いている。バカなゲーマーが少し大人になる瞬間が描かれている。
ゲームの思春期を描いた『ハイスコアガール』。急速に発展していくゲームとともに成長した少年少女の物語。あの時代のゲームに物語を与えるとしたら、きっと『ハイスコアガール』のようになっていたでしょう。色々と思い出して懐かしくなる作品だった。
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