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ブログ:映画の話

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映画の感想文。
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記事一覧

映画感想 ヴァチカンのエクソシスト

 エクソシストは語る。悪魔は実在する――と。  2023年、日本でもなかなかのヒットとなったホラー映画『ヴァチカンのエクソシスト』が早くもAmazon Prime Videoに登場! あのアクション俳優・ラッセル・クロウがエクソシストを演じる。この配役からすでに面白いのだけど、日本で話題になったのはプロデューサーのジェフ・カッツ。日本語に通じたプロデューサーで、本作が日本で劇場公開されたとき、SNSで感想をあげるとジェフ・カッツから返信が来ることが大きな反響となった(ハリウ

映画感想 アリータ:バトル・エンジェル

 未完成のSF大作。  木城ゆきと原作の『銃夢』がハリウッド映画化する! ……というニュースが最初に出てきたのは2000年代初頭の頃。当時は「漫画・アニメの実写化は失敗する」と言われていた(その実例が大量に生産されていた頃だった)が、しかし監督はあのジェイムズ・キャメロンだ。当時よくある例として、原作の権利を買ってタイトルは使うけど、原作とはまったくの別物にされる……それで失敗作の山が築かれていたわけだが、ジェイムズ・キャメロンはそういった例とは違う。わざわざ日本までやって

映画感想 M3GAN/ミーガン

 人間がロボットに依存するかも知れない……その危機を描いた作品。  2022年公開で話題になったホラーといえば本作『M3GAN/ミーガン』だ。製作はホラー専門映画スタジオ・ブラムハウス、プロデューサーはジェームズ・ワン。この2つの名前を聞いただけで、もう信頼が置ける。  米国では2022年12月に公開され、スマッシュヒットを記録。当時は歴代興行収入第3位を記録することになる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開中だったが、『M3GAN/ミーガン』はその真後ろに迫り、週

2月6日 映画『スーパーマリオ』を見ながら、ゲームの映画化の歴史に想いを馳せる。

前回  この記事を書く前日、『映画感想 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を書いたのだけど、そこでの書き漏れ、というか作品の外枠の話をするので、別の章を設けることにした。  長くなりそうだったしね。  話は「なぜ今になってようやく『スーパーマリオブラザーズ』は映画になったのか」あるいは「映画にすることができたのか?」という話。 実写版スーパーマリオはなぜああなってしまったのか? 話は1993年、実写版『スーパーパリオ 魔界帝国の女神』の頃に遡る。  ここからはW

映画感想 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

 こんにちわ、こんにちわ、映画のマリオの国から。  とうとう視聴しましたとも! 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』!  本作は2023年劇場公開。公開してから記録的な大ヒットとなり、公開9日間で全世界で3億8000万ドルの興行収入を獲得。『アナと雪の女王2』が保持していた記録を破り、アニメーション史上最大の興行収入を記録。もちろんゲーム原作映画の中でも歴代最高。前年には『ソニック・ザ・ムービー2』がゲーム原作映画史上最大の記録を作っていた(3日間で7210万ドル)が

1月14日 美術館見学に行こう! ドキュメンタリー『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』の感想文

 私の映画感想文は無駄に長い。あれは書くほうも読むほうも疲れる。バイト期間中であんな長い感想文を書く余裕もないから、ちょっと気楽な感覚でドキュメンタリーを見て、その感想文でも書こう。  ……と見始めたドキュメンタリー『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』だが……なんと3時間! 気楽に見られる長さじゃなかった……。一気に3時間視聴はしんどいので、日を改めて2回に分けて視聴。  ではその内容は?  まずイギリスの美術館【ナショナル・ギャラリー】について掘り下げていこう。  イ

1月3日 『レンブラントは誰の手に』 名画の秘めたる魔力――それに狂わされる人、踊らされる人。

 映画感想文も休止していることだし、たまには気楽な気持ちでドキュメンタリーでも観ましょう。……というわけで、今回視聴作品はオランダのドキュメンタリー映画『レンブラントは誰の手に』。原題は『MY REMBRANDT』なので、『私のレンブラント』という意味になるのかな。内容はレンブラントの描いた名画を所有している人々の話。ある種の群像劇のようになっている。  お話しの前に、まずレンブラントの基本情報から入りましょう。  レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン。1606年生

11月17日 映画感想文休止のお知らせ

 映画感想文の公開をしばらく休止します。  理由はパソコンが壊れたから。いや、正確には壊れかけなので、今すぐに次のパソコンを買わねば……という状態になったから。頻繁にフリーズやクラッシュするようになって、いつこのパソコンがダメになるのか……毎日ビビりながら、ちょっと進めてはセーブという状態です。データもいつ飛ぶかわからないから、怖い。  映画も2時間視聴している間にパソコンがフリーズしちゃうんじゃないか……現状、それは起きてないけど、不安で仕方ない。  そういうわけで、新

映画感想 山椒大夫

 すべてを喪っても、気高き魂は砕けぬ。  今回の映画は1954年の大映映画『山椒大夫』。溝口健二監督作品で、『西鶴一代女』『雨月物語』に続いて3作連続でヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞受賞。名作を数多く世に放ってきた溝口健二作品の中でも最高傑作と呼ばれる1本。マーティン・スコセッシ監督、映画評論家のロビン・ウッドといった著名人がこの作品を称賛し、コロンビア大学のリチャード・ペーニャ教授は『死ぬまでに見るべき1001本の映画』の中で、「映画史上最大の感情的、哲学的な旅」と評し

映画感想 雨に唄えば

 あったかも知れない、もう一つのハリウッド史。  1952年のアメリカ映画『雨に唄えば』は今でも伝説的なミュージカル映画として知られている。公開された当時から批評家から「もっとも良くできたミュージカル・コメディの1本」と称賛され、現在までその評価はほぼ変わることがない。1989年には「文化的・歴史的、芸術的にきわめて高い価値がある」としてアメリカ国立フィルム登録簿に登録。  映画批評集積サイトRotten tomatoでは批評家によるレビューが75件あり、肯定評価は堂々の1

映画感想 バビロン

 映画の世界の住人になること、それは「夢の住人」になるということ。  映画『バビロン』は2022年のアメリカ映画。監督・脚本はデイミアン・チャゼル。デイミアン・チャゼルは2014年『セッション』で注目を浴び、『ラ・ラ・ランド』が世界的大ヒットとなり、アカデミー監督賞受賞。2018年『ファースト・マン』では人類史上初めて月面着陸を成功させたニール・アームストロングを描いた。その次作として制作されたのが本作『バビロン』。映画の黎明期、モノクロのサイレント映画が、音声付き映画「ト

映画感想 長靴をはいた猫と9つの命

アメリカのアニメーションがアップデートされた瞬間。  『長靴をはいた猫と9つの命』はドリームワークス・アニメーション製作の『シュレック』シリーズのスピンオフ作品。実は2011年に『長靴をはいた猫』を主役にしたスピンオフ映画は制作されていた……知らなかった(いや、知っていたけど忘れてたのか?)。今作は11年ぶりに描かれた続編。「長靴を履いた猫」であるプスを主人公にした映画の2作目である。  監督はジョエル・クロフォード。絵コンテアーティストとしてキャリアをスタートし、2017

10月17日 台湾のあまりにもドス黒い強姦事件 映画『無聲』が暴く闇

 今回紹介する映画は、2020年の台湾映画『無聲 The Silent Forest』。台湾の聾学校で実際に起きた凄惨な性的虐待事件をもとにした映画だ。監督はコー・チェンニエン。台湾出身の女性映画監督で、作品が日本ではあまり紹介されていないが、これまで社会派ドラマを手掛けてきたようだ。映画の制作は『無聲』が初挑戦で、この作品は台湾主催の映画賞である第57回金馬において新人監督賞とオリジナル脚本賞にノミネートされた。ここでは惜しくも賞を逃すが、最優秀新人男優賞受賞、最優秀サウン

映画感想 雨月物語

 身の丈に合わない幸福は、一時の夢かも知れない。  『雨月物語』。1953年に劇場公開された溝口健二監督のこの作品は、今も「映画史上に残る最高の映画だ」と誰もが語る1本である。第13回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞。フランス映画雑誌の『カイエ・デュ・シネマ』が1954年に発表した年間ベストトップ10で1位。世界の巨匠達も手放しで大絶賛する歴史的な名作映画である。  映画批評集積サイトRotten tomatoでは(え? あるの?)32件の批評家レビューがあり、肯定評価は