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音楽劇「スラムドッグ$ミリオネア」 感想

スラムドッグ$ミリオネア、開幕おめでとうございます!!
8/1の初日が8/6ソワレへと延期され、少々ドキドキしていましたが、無事に幕が開け、今も皆様元気に公演できていること、とても嬉しく思います。
遅くなりましたが、ゆったりと作品の感想を書こうと思います。

相変わらずバリバリにネタバレするのでお気をつけて。

音楽劇「スラムドッグ$ミリオネア」 とは

アカデミー賞8部門受賞映画「スラムドッグ$ミリオネア」
この音楽劇では同作の原作小説「Q&A」(ヴィカス・スワラップ著)を元に、ラム・ムハンマド・トーマス青年の数奇な人生と逆転劇を描いています。
映画版では、小説の「クイズショーで億万長者になった青年が、警察に詐欺を疑われる」「クイズショーでクイズに正解したのは、彼の送ってきた人生の中に、答えがあったから」という骨子を残し、かなり設定や展開が変わっています。主人公の名前や、親友の存在なども違います。
音楽劇版では、小説の細かい設定も生かしつつ、3時間弱の上演時間に収まるよう、いくつかのクイズと、それに関わる物語を抜粋していました。

STORY/ストーリー
スラム街出身の青年・ラム(屋良朝幸)は、人気クイズ番組《億万長者は誰だ!》に出演し、司会者である国民的人気タレントのプレム・クマール(川平慈英)や番組スタッフ、オーディエンスの予想を裏切り、12問にも及ぶ難問を次々とクリアしていく。が、「教養があるはずの無い彼がなぜ答えを知っていたのか?インチキをしていたに違いない」と、番組の制作会社の陰謀でラムは詐欺の疑いで逮捕されてしまう。警察の拷問でラムは自白を強要されるが、突如現れた弁護士スミタ・シャー(大塚千弘)に救われ釈放される。スミタはラムに、これまでの人生すべてについて語るよう促し、昨夜オンエアされた番組のDVDを再生する―。
捨て子として教会で神父に育てられ、育ての親の神父が殺されたこと。孤児施設に入り、映画スターを目指す親友のサリム(村井良大)と出会ったこと。怪しげな占い師から幸運の1ルピー硬貨を渡されたこと。通っていた職業訓練校で子供たちへの虐待を目撃し、施設を抜け出したこと。父親の暴力に怯える隣人の少女を助けようとし、その父親を殺害し逃亡したこと。娼婦のニータ(唯月ふうか)と出会い、燃えるような恋に落ちたこと。
次々とラムから明かされる彼の過酷な運命にスミタ・シャーは驚きを隠せずにいた。 そして、ラムは、なぜ人気クイズ番組《億万長者は誰だ!》に出演しようと決意したのか、なぜ難問を次々とクリア出来たのか、驚くべき真実を語り始めた…。
公式サイト引用)

……改めて読むと、あらすじ(での説明のニュアンス)と、実際の展開が若干違うので、本編見てください。
スラム街出身→今はスラム街に住んでるが出身は教会・孤児院。
番組の制作会社の陰謀→制作会社は「今十億ルピーを払ったら会社が立ち行かない」から詐欺の犯人に仕立て上げたいのであり「インチキだ!」と思ったことが陰謀ではない。
スミタは人生について語るように→スミタが知りたかったのはあくまでも「どうやって答えを知ったのか(知っていたのか)」 その流れで「それには俺の人生を知らないと」とラムが答えたので、人生の話をすることになった。「そして、ラムは…」で繋いでいる方が本体。
という感じ。

全体感想

スピード感があって面白かった…!!
エピソードをいくらか抜粋していてもなお、ストーリーの情報量が多く、それが歌・ダンス・パルクール・クイズショーによってテンポ良く進行していくので、見ていて飽きません。
インドの階級制度や貧富の差、子ども・女性の置かれている状況、宗教、さまざまに重いものも扱いつつも、ひたむきなキャラクター達がまっすぐに進んでいくその勢いに救われて、ただ重く陰鬱なだけでなく、パワーも感じる仕上がりになっていました。
また、ラストもインド映画よろしく踊って終わるので、明るく見終えることが出来るのも良かったです。

持てる者/持たざる者 へのまなざし

個人的にテーマとして感じているのが「持てる者/持たざる者」という対比です。

それはラムが冒頭で言う「金持ちと貧乏人の間にある境界線を越えるな」という言葉にも見て取れる…と思っています。
金持ちと貧乏人という「お金を持っている/持っていない」という対比にとどまらず、サリムとラムの「才能を持っている/持っていない」、マダムとシャンカールの「愛を持っている/持っていない」(これはちょっと苦しいかも)、ラムとプレムの「必要とされている/されていない」という持てる者/持たざる者の対比も多く現れていると思います。

ラムは最後に、持てる者になります。
でもそれはただラッキーだったからではなくて、これまでの積み重ねの中で、「誰かのために行動してきた」ことが、その誰かに必要とされるということにつながり、最終的に「(物語に、人々に)必要とされる」存在になれたのかなと。そしてそれを、プレムは出来なかったんだな…と。
なんとなく、その持てる者と持たざる者へのまなざしが、この作品を普遍的なものにしているように思います。

役者さん毎の感想

いつも言うけど推しは番手を無視して一番最後に書いてます(長くなるので)

屋良朝幸/ラム・ムハンマド・トーマス

身体…良ッ……!!!!
やー動く動く。その動きが綺麗。二幕中盤の、ラムの心と運命のままならなさを表すようなダンスは、全身だけでこんなに説得力があるのかと感動しました。
顔立ちと体つきも、少年と青年らしさ、粗野な暴力性と均整の取れた理性を感じさせて、ラムの難しい立ち位置と気持ちがよく似合っていたように思います。
お歌もとても良くて、ふうかちゃんのニータとのハモリが綺麗ですね。あそこはダンスも珠玉…っという感じなので、目が離せません。

パルクールもすごかったな~~~~~!! 初日はまだどこか恐る恐るな所もあった気がしますが、日を経るにしたがって、段々とトップスピードに乗ってきた感じで…とにかく怪我だけはないように、思い切り走って欲しいです。一足で大きめの足場に飛び乗るのすっっっげ!!!と毎回なります。

推しのサリム・シャンカールとの関係性が良くてね~!!可愛い~~~!!いつもお手々繋いでまぁ~~~!!!
ベタベタすぎず適度に雑なんだけど、なんだかんだお互いに信頼があるのがいいですよね。
8日頃までは、シャンカールの死を看取った後、お姫様抱っこをしてはけていたのですが、今では暗転ではけていきますね。いいことです。腰を大切にしてクレメンス…(推しも決して小柄というタイプではないので…)

ラムは天文学者を殺した(仮)後、「殺す」と言うことが多く、ついつい一時の推し、デュラララ!!の平和島静雄を思い出してしまうのですが、でもラムが「殺す」って言うのは、「自分がこの人のために出来るのはこのことぐらいしかない」っていう諦観とそれでも諦められない人への愛情故なんですよね…。
この作品では持てる者/持たざる者の物語でもある、というのは上で書いたとおりですが、ラムはラストギリギリまで圧倒的に持たざる者なんですよ。でも、誰かのために行動するの。サリム・グディア・シャンカール・ニータ、全員にそう。サリムなんかは実はラムと対照的な持てる者なのに、誠実に愛情を注いでいる(これは推しの可愛い最高な演技が、愛情の説得力を更に増しているのですが)。
なんかそれがなんか…好きですねぇ…

唯月ふうか/ニータ

かわいい~~~~~!!お歌も当然素敵だし、インド風のお衣装も似合って可愛い~~~!!
結構はすっぱな言い方をするのが新鮮で良かったです。
個人的にラムとのデュエットソングである「月の下で」のイントロきっかけが、ニータの言う切れ気味の「お前ぇ!!」なのが好きです。
結構諦めた雰囲気のある美少女なのに、ラムとの交流の中で明るさと幼さを取り戻していくのが可愛すぎる。

大塚千弘/スミタ・シャー

冒頭の背中が好き。真面目な弁護士さんな雰囲気がすごい好きですね。知性を感じる…。
スミタソロの「星たち」も、グディアとの繋がりと、ラムへの優しい思いを感じて癒やされます。

川平慈英/プレム・クマール

大好きなんですけど…。

サリム・シャンカールはもう番外なので、それを抜くと今作で一番好きかも知れません。
実はスラム生まれの野心家で、ケチな死に方をした実業家を乗っ取って生まれ直し、持てる者側に行こうとしたそのパワーと切なさがいい…。
「俺は必要じゃなかったのか」「くっせー……母さんの匂いだ」のセリフが刺さりすぎてもう。

ラムはサリムという良き友であり持てる者に、時々「ああ俺じゃないんだな」と感じさせられてるんですよね。
セシジは明らかにサリムしか欲しがってなかったし、歌も聴いてすらくれなかった。
でも、サリムの善さと努力家なところ(ずいぶん離れていたのに「俳優を目指して修行していると思います」って言えるの、一緒にいた頃にも相当頑張ってるところ見ていたんだろうなと)に励まされていたんだと思うんですけど、プレムは多分、奪われて、手に入れられなくて、打ちのめされながらも這い上がってきたんだろうなと。
でもまた母さんの匂いのするスラムで死ぬんだよ~。泣いてしまう。

川平さんのお芝居を生で見たのが、推しと同じアインシュタイン役をやっていた「ピカソとアインシュタイン」でした。
それこそ「楽天カードマン!!!!!」の勢いにも似た、純粋な爆走天才も個性がギラギラ光っていて、推しの繊細に人生を積み上げていった先の飛び抜けた天才とは全然違って本当に素敵だったのですが、今回のプレムの腹の中にほの暗い渇望を抱えながらも、ぎらぎらと光に手を伸ばす様子も最高で…。

プレム・クマール、君の本当の名前を教えてくれよ。
劇中で本名とされてるのは、「違法賭博場で死んだ実業家」のものなんですよね…。

池田有希子

ママ…スラム街のお姉さんも、ママも好き…悲しい……。
お歌もうっまくて、「億万長者は誰だ?」のコーラスガールが可愛すぎてめっちゃ見ちゃいます。

辰巳智秋

アフロの人て(パンフに書いてあるキャラ説明)。似合ってたけど! 
パワフルでキャラが立ってるのが好きです。チャタジーさんの喋りが好き。

吉村 直

神父もいいし、冒頭のスラム街で警官に立ち向かっていくところも好き。
でも神父が子どもを作ってたのも、ラムの「俺は選ばれなかった」感を強めてるのかなーとも思ってしまう。 

野坂 弘

セシジ~!! 「俺のサリム!」という最後の言葉が好きです。
あと大学生の時の、常に脇の下に手を突っ込んでるの…なんかいたな…という気持ちになりました。

阿岐之将一

ジョン神父とか色々ダークなキャラをやっているのですが、立ち姿と顔立ちが上品なので、悪い印象が意外とない…。あとほぼほぼ説明なく当然のように出てくるアマーン・アリ(サリムが大好きな俳優。サリムがポーズをマネしている)大好きです。

當真一嘉

可愛い~幼グディアのお姉ちゃん!感が好きです。あの時の二人は本当にまだ少年・少女って感じでキュンキュンします。

中西南央

すごい…可愛い……いや男の子だとは思うんですけど、動きの緩急が結構やわらかくて、見ていて楽しい芝居をされるので好きです。イアンとかも15歳!って感じだった。

村井良大/サリム/シャンカール

推し…愛してるぞ…。

本編中でサリムが何度も「顔がいい」「声がいい」と褒められる度、「わかる…」という気持ちになります。

サリム
かかかかわいい~~~!!!
少年の頃のサリムも最高に可愛いし、大人になってラムと再会したときの「ラム~~!!」の声が、言い方が少年の頃と変わらないのに、声が大人になっていて、変わって成長した時間と、変わらないラムとの絆を感じて、キュンキュン来ました。
ラムと出会ったときの、傷つきおびえたところも可愛くて…いいやつで……自分の家族を殺した宗教も混ざった、ラム・ムハンマド・トーマスの名前に対して、優しく「正直に言ってくれてありがとう」と言えるの本当にいい奴だな…。

ラムと一緒に占い小屋に行くところも可愛い。「ねぇ行こ~~行こう~~~~」の言い方よ。サリム家でも末っ子だったので、甘え上手なんですかね…だだのこね方と、ご機嫌なときに喋り続けるうるささが最高にショタを感じていいです。
占い小屋に入る直前、初日の頃は「僕らの未来は♪」と一緒に歌うように言って、ラムに「そんな歌知らないよっ!」と言われていたのですが、15日に見たときには「手相♪手相♪」と歌うようになっていました。
アイスの歌は初日のやつと、
「カレーライス♪ …これは食事だ」
「一緒に食べたらとてもナイス♪」
等は聞きました。「君に会えたら一生愛す」を聞きたい…ガチ恋野郎なので…。
占い師がふたりを金持ちの子どもと勘違いしたのを知ったときの、心底ガッカリした表情メチャクチャ可愛くて好き。

先にも書いたとおり、サリムは美貌と才覚と努力に溢れた持てる者で、ラムとは対照的な存在でもあるんですけど、推しのまっすぐさと可愛さに溢れた演技により、嫌味な奴じゃなくて、一緒に前を向こうと思えるキャラクターに仕上がってるのがすごいなあと思っています。恵まれていることを素直に喜びつつ、自分の夢に向かってちゃんとひたむきに努力しているんですよ…。
ラジューを見捨てざるを得なかったことを経験して、グディアとの関わりの中で「人に関わっちゃいけない。自分のことで精一杯」とラムを諭すところがあるんですけど。
あれはラムに自分を助けて貰ったように、彼を助けたい気持ちもあるなーと思うと同時に、そういう一種の諦観・無力感の中でも、自分の夢はちゃんと諦めずに、日々懸命に生きてるのが偉いなーとも思って……なんか本当にいい奴だなあという気持ちになります。
こんなん近くにいて腐らずに、サリムの為にも動いて来れたラムも偉すぎるよ。

シャンカール
かわいい…天使…。
シャンカールソロ曲のファルセットは美しすぎて震えました。そんな歌い方もあったのか、推し。シャンカール村井マジ天使。

なんというかこれは感覚的な感想なんですけど。
推しの演じる障がいのある方って、すごいフラットだなと感じていて。
というのも、健常者が障がいのある方を見る時って、どうしても「自分に出来ることが出来ない」という不自由さと、そこから来る不幸や苦しさに意識がいきがちで、それは演じるときにも出てしまうものなんですよね。ことさらに辛さを誇張してしまったりとか。
でも推しのシャンカールやマシロ(アイワズライト)って、そういう健常者からの憐れみのまなざしを感じなくて、なんなら普通の人を演じるときと変わらない、「そういう人」っていうフラットさがあるように思うんですよね。(それはご本人のご家庭の事情もあるのかもしれないんですけど)
なんかそういう、解釈する主体をすべてなくしているというわけではないにせよ、キャラクターを外側から自分の主観で見るのではなくて、内側からその人のあり方を見るような推しの演技って、やっぱすきだなーと思います。

シャンカールの言葉可愛いですよねえ…何言ってるのかわからないけど、なんとなく身振りで色々わかるというか。
あとサリムの時と、歩き方の重心がちょっと違う気がするんですよね。サリムは重心上めでタッタ、シャンカールはちょっと下でテペテペ歩いてる印象です。それもあって、サリムは活発で元気、シャンカールは温和でのんびりした性格に見えています。
かわいいね。

推しのマイムが好きすぎて、シャンカールがdgとぶつかったときの動きを、全部見たい気持ちでいっぱいです。初日はシンプルだったと思うんですけど、段々こった動きをするようになりましたよね…。
熱が出てぐったりする様子も、心配になるほどしんどそうで、毎回ドキドキします。「蜘蛛女のキス」での腹痛演技も大好きだったな…あれもまた見たい。

シャンカールが言葉を取り戻してママのことを語るところも好き~!
でも一番好きなのはラムに問われて「言ってしまった」とおびえた様子になるところです…あの時のママのことを思って不安そうなまなざしが悲しいし愛しいしで…。
そこからの死までの芝居も…無限に見られる…。

明るく見終えられるけど、心に必ず新しい温度の残る素敵な作品でしたね…。
東京公演はあと少しですが、全国ツアーもあるので、お近くの方は是非見に行って欲しいところ!


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