黄金王子と従者

人は黄金で生まれたあと
泥を混ぜることで成長していき
大人になっていくのです
黄金のままでいられるのは
ほんの小さな子どもの時だけなのです

ある時
眩いばかりの黄金でできた赤ちゃんが
生まれました
人々はあまりの輝きに
泥を混ぜるのが忍びなく
決して泥を混ぜないように
育てることにしたのです
周りの大人たち、そして子どもたちも
赤ちゃんに泥が混じらないように
細心の注意を払いました
時には
自分の黄金を分け与えることさえあったのです
赤ちゃんはすくすくと育ち
やがて黄金王子と呼ばれるようになりました

成長してそれはそれは強い光を放つようになった黄金王子の前に一人の若者が現れました
その若者も黄金をたくさん残した
とても魅力的な若者ではあったのですが
ひと目で黄金王子に魅了され
黄金王子の従者になることにしたのです
黄金王子も喜んで受け入れ
それからというもの
黄金王子の行くところには
常に従者の姿がありました
二人は気が合い
とても楽しい日々を過ごしました

それから多くの時が流れました

従者は少し前から具合の悪い日が続いていました
ある日の朝
起き上がって鏡を見て驚きました
そこに写っていたのは
泥だらけの泥人形だったからです
従者にもたくさんあったはずの黄金は
いつのまにか全て消え失せ
それどころか
抱えきれないほど多くの泥を身に纏い
もう身動きが取れない状態になっていました

従者は泥で重たくなった体を引きずり
やっとのことで黄金王子の元へとたどり着き
こう懇願したのです
泥が重くてもう動けない
少しだけでもいいから
君のその黄金と
僕の泥を交換してもらえないだろうかと
黄金王子は
従者の変わり果てた醜い姿に驚いた後
少し困った様子で
そんなことはできない、とだけ言いました

黄金王子の元を去ることになった
重い足取りの従者が振り返ると
黄金王子が相変わらずたくさんの人に囲まれ
眩いばかりの輝きを放っているのが見えました
従者は泥の涙を流しました

そうして二人は
二度と会うことはなかったのです

その後の従者がどうなったかって?
砂漠の灼熱の太陽に照らされ乾いて砂になり
風の中に消えていったのだという者もいたし
川を流れてやがて海へとたどり着き
そのまま海の底で静かに眠っているのだ
という者もいましたが
本当のところはわかりません
昔々のお話です
とっぴんぱらりのぷう

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