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VRでも「あいさつ」は大事?

 ――毎朝見かけるその人は、いつも家の周りを掃除している。喜寿なんてとっくに過ぎていそうな年配の女性で、すれ違うと必ず「ご苦労さまです、いってらっしゃい」と声をかけてくれる。

 はじめの頃はなんだか気恥ずかしくて、会釈を返すだけだった。けれどもいつしか、自分の方からあいさつをするようになった。会釈で済ませる方が恥ずかしくなったから。知らない人にあいさつをするのは、小学生以来だ。

 あの女性、どことなく元は学校の先生っぽいと思う。ときどきいるよね、そういう雰囲気のある人。でも、それを確かめる方法はない。世間話をするような間柄ではないから。

 そういえば昔、小学校の帰りの会でこんなことがあった。

「クラスの中に、あいさつを返さない人がいます!それはいけないことだと思います!!!」。学級裁判というやつ。いまでも記憶に残っている。

 子ども同士の議論(というかケンカ?)は白熱したけれど、結局のところは「あいさつをされたら、きちんと返しましょう」「自分の方からあいさつをしましょう」という当たり障りのない判決が、裁判官(先生)から下された。

 ――あいさつは大事。古事記にも、そう書いてある。あいさつをされたら返す、というのはコミュニーケーションの基本だ。

 だけど、あいさつを返さない人もいる。僕が過ごしているVR界隈でも、こんなポストが話題になった。

 ほんとそれ。

 部活動では、先生や先輩から「あいさつされる前にあいさつしろ」なんて指導された。これが守れなかったら、すぐにグラウンドを走らされた時代。あの頃は必死になって、自分からあいさつしたっけ。

 一方で「あいさつは自分がするもの。相手に求めるものじゃない」なんて考え方もある。あいさつが返ってこなかった!と怒る人もいる。僕だって、あいさつを無視されたら腹が立つ。でもだからと言って、無理強いするのはおかしいと思うのだ。

 これは感謝や謝罪でもそう。心のこもっていないお礼。なんか怒っているからとりあえず謝っておく、みたいな反射的な謝罪は、不愉快極まりない。それならいっそ、黙っていてくれた方が余程ましだ。

 ――あいさつは大事。だけど、あいさつをするのは、自分がしたいから。あいさつすると気持ちがいいから。返ってこなくても、それは相手の自由。今のところ、こういう考え方が一番しっくりくる。

撮影ワールド:School Gym by: Rocktopus さん

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