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中古のカメラに思う/X100F

 先日、中古カメラを買いました。購入したのは富士フイルムの『X100F』という機種。ひと昔前のコンパクトなデジカメ。いわゆるコンデジです。

 これを購入した理由はいくつかあって。まず「富士のカメラは色がいい」という話を聞いたから。自分でもいつか試してみたいと思っていました。

 それから「仕事カバンに収まるカメラが欲しい」というのも大きな理由。通勤途中に、ふと目を奪われるような『撮りたい瞬間』に出会えるものの、スマホではどうしても物足りない。そんなときにサッとカメラを取り出して写真を撮れたらいいのに。そう考えていたとき『X100F』を知ったのです。レトロな見た目に、ふんわりと柔らかい描写。楽しそうだなと感じました。

 ただX100Fは2017年に発売された機種で、とっくに生産終了しています。後継機の『X100V』もあるのですが、こちらは大人気で注文受付も停止中。そんな経緯もあり、散々迷った挙句に、中古のX100Fを購入したわけです。

「多少のスレや傷はあるものの、光学系には問題なく、キレイな状態です」

 そんな(お決まりの)コメントを信じて注文。届いた実物を確認すると、想像以上にキレイな状態でした……と思ったら、ファインダーに違和感が。そこには「黒い斑点」が、いくつもあったのです。

 あれ?レンズの汚れかな?ファインダーの表面かな?そんな淡い期待は、当然のように裏切られ、いくら拭いても消えやしない。ファインダー内部に黒カビが発生していたのですから、消えるわけがありませんよね。

 返品できるかな。でも写真の写りには問題ないし。だけどファインダーをのぞくたび、この斑点と向き合わなきゃいけないのは、ちょっと嫌だよな。あーあ、やっぱり中古ってこういうものなのか。そんなことを考えながら、寝転んで天井を眺めていると、視界をうごめく黒いものに気が付きました。

 「飛蚊症」だと自覚したのは、ずっと昔のこと。空に糸クズが浮いてると思ったら、視線に連動して糸クズも流れていく。生活に支障はないけれど、自然に治ることもない。これから一生コイツと付き合っていくのか。なんてこぼしたことを思い出しました。

 考えてみれば、元々飛蚊症なんだから。ファインダーにちょっとくらい、カビが生えていたから何なんだ。そんなことでクヨクヨしてるくらいなら、この子と写真を撮りに行こう。きっと美しいものが、たくさん撮れるから。

 そんな風に(自分には珍しく)前向きな気持ちになったというわけです。なんでも思いどおりに、とはいかないけれど。今あるものに目を向けたり、見方を変えることができたなら。ちょっとは楽しくなるかもしれませんね。

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