見出し画像

仮想の狂気

 『ヴァーチャル・インサニティ(Virtual Insanity)』と言われて、すぐにわかる人ってどのくらいいるのだろう。僕はわからなかった。

 じゃあ「ジャミロクワイ」なら?「あの、動く部屋で歌ってる人?」ってなるのかな。ちなみにあの人はリードボーカルの『ジェイ・ケイ』さんで。ジャミロクワイっていうのは、彼を中心としたユニット名であると同時に、彼の芸名――なんてことを、数十年越しにようやく知った。

 MVを初めて観たとき、不思議すぎて見入ってしまったのを覚えている。休み時間に真似する子も結構いたっけ。あの映像、「床」が動いてるように見えるけど、実際は「壁」の方を人力で押しているそうで。思ってたよりもアナログだよね。今の技術だったらCGで簡単に作れちゃうのかな。いや、簡単ではないのかな。

 ふと気になって歌詞の意味を調べてみると、いくつもの和訳が出てきた。ヴァーチャル・インサニティは、直訳すると「仮想の狂気」になるけれど、これを意訳して『得体のしれない狂気』としている人もいた。

 歌詞を読んでみると、想像していたより「メッセージ性」の強いもので。発表当時(1996年)みんなが漠然と感じていた「閉塞感」みたいなものが、表現されているような気がした。あの頃は世紀末だったからなのかな。でも今を生きる僕にも共感できる内容なのは、どういうことなんだろう。もしかしたら「世界は相も変わらず、狂っている」ということなのかもしれない。あるいは――

 そういやカップヌードルのCMに使われていたっけ。だからなんとなく、もうちょっとインスタントな感じの曲だと思っていたんだ。そういうことにしておこう。

 バーチャル(Virtual)という言葉は、元は「実質上の、事実上の」という意味で。これを『仮想』と訳すのは日本だけ。「実質上の」と「仮想」ではニュアンスが違ってくるような気もするけど、どうなんだろうか。

 バーチャルリアリティという言葉も「実質上の現実」と「仮想現実」では意味合いが変わるような気がする。本質的には同じなんだろうけど、表現の仕方ひとつで、印象が変わるってのも、ちょっと不思議というか、面白い。どちらにしたって、現実の一部には変わらない。なんて僕は思うのだけど。

撮影ワールド:Jamiroquai Game VRリメイク(WIP)/mouri314 さん


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?