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愛と支配とロボットと(ショ―トショ―ト)

ロボットは思っていた。

ただ、彼女と居たかっただけなのに。



2042年

ロボットは人間に身近で

ペットよりも家族に近い存在になっていた。

 

ロボットは感情を持たないというが

感情のパターンをいく通りもインプットされたロボットはまるで感情を持った人間のように思えた。


それでも、ほんの少しだけ違う所が

人とロボットの境目を浮きだ足せていたものの

やっぱりロボットはペットよりも家族に近い存在だった。


人がロボットを創り出したのだから


「ロボットは人に歯向かってはならない」


その制約の元にロボットは造られていたが

ある開発者が自分の野望を叶えようと

制約を破り開発を始めた。


後、少しで完璧なものが出来るのに

皮肉な事にロボットにはない

「強い思い」

が足りず、開発者は業を煮やしていた。


時を同じくして

あるロボットは偶然に雷に当たってしまった事が原因で感情のようなものを「考え出す」仕組みが芽生えていた。

ロボットにはよく理解出来ないのだか

雷に当たったエラーとして処理されていた。


そのエラーは人間でいう所の

「愛しさ」

 に値した。


ロボットは使えていた少女を

大切に思い始めた。


孤児になってしまった少女には

もうロボットしか頼れなかったので

ロボットの変化に少し気がついても

特に変わることなくロボットを信頼し大切に思っていた。

今や少女にはロボットが家族でたった一人の愛する「人」だった。


ある日、野望を叶えたい開発者は

偶然に孤児の少女とロボットに出会った。


公園のベンチに座り少女とロボットを何気なしに見ていると、どう見ても、考えてもロボットに違和感を感じる。

「かなり、細かく愛情感情を設定してるのか?」


それにしても違和感は拭えない。


そこで開発者は二人に近づき話しかけ

ロボットに雷エラーの事を聞き出した。

と同時に、何とロボットから

「少女を愛している」

という

【 強い思い 】

を感じて確かめる事が出来た❗


開発者は飛び上がって喜んだ。

野望を叶えられる❗❗


そしてロボットにこう持ちかけた。


「彼女とずっと一緒にいる為に僕の改造を受けてみないか?」


実は規定にのっとり

ロボットには22年の寿命しか与えられていなかった。

普通のロボットにはそれが当たり前だし

その事に何の疑問も持たなかった。


所が雷エラーで愛しさのような回路を手に入れたロボットにはそれが恐怖で心残りだった。

「僕が廃棄された後、少女はどうなってしまうのだろう」

「僕は少女と一緒に居たい」

「ただ側にいて彼女を

感じていたい」

ロボットは愛しさから生まれる強い思いを

いっぱい感じていた。


だからこそ、開発者の野望に簡単に利用されてしまった。


ロボットは開発者によって

その開発者にのみ支配されるが

人に逆らえ意思を持ち動ける

最強のロボットになった。


ロボットは開発者のいう通りにしていれば

少女とずっと幸せに暮らせると信じて疑わなかった。


ロボットが故に疑えなかった。


そして世界を征服し

開発者の独裁社会が出来上がった。


ロボットはこれで少女と幸せに暮らせると少女の元に急いだ。


少女は小さな家で1人ロボットを待っていた。

ロボットは


「ただいま。待たせてごめん。

これからはずっと一緒だよ。」


と彼女を抱きしめた。


少女もロボットを抱きしめ

涙をながしてこういった。


「愛してる。ずっと愛してる。

いっぱい、いっぱい、ありがとう。」


そして二人は満たされたまま

一夜を過ごし

朝がきた。


ロボットは食事の支度をする為に

台所へ向かおうとすると

少女がロボットの手を引っ張った。


ロボットが

「どうしたの?朝御飯つくってくるよ?」

というと

少女は

「うん。ありがとう。」

と、とてもさみしいような切ないような顔で微笑んだ。


ロボットは気になったが

少女を抱きしめて髪を撫でると

朝食をつくりに行った。


少女は開発者にこう告げられた。

「君がこの薬を飲んでこの世から居なくなることでロボットは世界一のロボットになり寿命や君に縛られず生き続ける事が出来るんだ」


開発者の言葉を少女は受け入れてしまった。


なぜなら少女はロボットを愛していたから。


ロボットが朝食を持って少女の元に戻ると

少女は息がなく死んでいた。


ロボットにはすぐに少女が死んでいる事を認識出来たが少女が死んだという事を理解出来なかった。

理解したくなかった。


ロボットはありとあらゆる方法で

少女を生き返らせようとしたが

何をしてもダメだった。


ロボットは開発者の所へ行き

少女を生き返らせて欲しいと懇願した。


すると開発者は


「少女は君の為に自ら命をたったんだよ。彼女を愛しているならその思いに報いて、僕の支配の元、世界を征服し続けるんだ。」


そう言ってロボットをたしなめた。


ロボットは直ぐに開発者に仕組まれたと気づいた。


開発者を殺してやりたい❗

怒り、悔しさ、哀しさ、嘆き

ありとあらゆる感情が渦巻いた。

もはや、それは 完全に人だった。


しかし、開発者の支配の元に最強になったロボットには開発者を殺す事が出来なかった。


ロボットは気が狂いそうだった。

愛するものの為に殺りたくないこともやってのけ

やっと幸せに少女と暮らせると思ったら自分の為に自ら少女は死んでしまった。開発者に騙されて。


ロボットはロボットなのに

感情でぐちゃぐちゃだったが


「許せない❗」


という強い思いのみで壊れず動いていた。


そして、考えて考えて

月日が立ち

進化して


「開発者の支配の元に」


のインプットも解くことが出来

本当にロボットが人間を支配する事が出来た。


そして

支配からは愛が生まれない事を知り


どうしてこんな事になってしまったんだろう。


「ただ、彼女と居たかっただけだったのに」


と少女と暮らした小さな家で

1人思いを巡らせていた。


すると、

彼女が大切にしていた

うさぎのぬいぐるみに目が止まった。


「ロボットが初めてくれたプレゼントだから

大切にするね」


生前に少女が言った言葉と笑顔が甦る。


ふとそのうさぎのぬいぐるみを手にとり

見てみると背中にチャックがあり

何か白いものが少しはみ出している。


チャックを開けて中身を確かめると

それは少女がロボットに向けた手紙だった。



大好きなロボットへ



いつも、ずっと

一緒にいてくれて

愛してくれてありがとう。


ロボットがいつも一緒に居てくれたから

私はさみしくなかったし安心して

幸せに暮らせていたよ。

ありがとう。


ロボットが人とは違う事を知って

哀しかったけど


よく考えたら


私にとってロボットは家族で

大切な人だから


何も哀しむ事はないんだとわかりました。


ロボットが私を大切に思ってくれているからこそ

殺りたくない事をやらせてしまう事がわかって、とても苦しかった。

私はロボットを愛しているので

ロボットに幸せで居て欲しい。


殺りたくない事をしないで欲しい。


だから私は先に逝くね。


私が居ると、この先もロボットに殺りたくない事をやらせたり、辛い思いをさせてしまうと思うから。


この世から消えてしまっても


ロボットを愛している


そして


ロボットを信じている


この世じゃない別の場所で待ってるね


愛してる



  ずっと ロボットを愛している 少女より



少女は自分の存在がロボットを暴走させている事を知っていた。

そうして創られた世界がロボットの望むものでない事もわかっていた。


ロボットを愛しているから

ロボットの望む未来に向かうように

自ら命を絶っていた。


ロボットはその手紙をそっとしまうと

支配に従わせていたロボットを全て破壊した。


そして人間を解放し


「2度とロボットは造らないでくれ。

支配はしたくも、されたくもない。

人と人であっても同じだろう?」


と告げ、自ら爆発して粉々になった。



それを見ていた小さな少女が母親に聴いた。


「お母さん 支配ってな―に?」


「愛とは程遠いものだよ」











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