見出し画像

ビヨンド・コロナの教育政策―映像配信授業をフル活用せよ!

ダメダメな日本の教育システム

 日本の教育はもともと時代のニーズに対応できていない。まず、大部分の生徒が普通科で高校まで同じことを学んでいるという点だ。その人の習熟度や将来就きたい職業に合わせた教育を受けることが難しくなっている。次に、プログラミングなど、時代のニーズに合わせた教育を提供できていない。そして、私が最も問題だと考えているのは、タブレットやPCを全面的に利用した教育を提供できていないことだ。対面授業、朝から時間割通りに行う授業という固定から脱却できていないのだ。

コロナ・ショックは固定観念をぶっ壊すチャンスだ

 (ほぼ)全国一斉休校が続いており、まともに教育を提供できていない事例が見られる。そして、コロナ後に夏休み返上の対面授業で遅れを取り戻す気だそうだ。だがちょっと待ってほしい。対面授業ができないからこそ、新しい方法を試すべきではないのか。なぜ、対面授業の遅れを対面授業を夏休み期間に入れ込むことで取り戻そうとするのか。録画した映像を用いたオンデマンド授業とzoomやgoogle meetなどを使ったオンライン授業を併用することで、授業時間を確保すべきである。
 今のまま、休暇を返上の上対面授業で遅れを取り戻すのであれば、大きな弊害が生じる。まず、課外活動に支障を来すことだ。部活動や習い事など、長期休暇中に大会やコンクールが開催されることが多い。もし長期休暇を潰すのであれば、集中して練習する期間が失われるばかりか、下手したら大会そのものを開けないということになる。勉強以外の数々の才能が発揮される芽を摘むこととなる。次に、熱中症などの問題がある。エアコン設置率が高くなってきているとはいえ、いまだに設置していない小中高校も多い。温暖化や異常気象の影響で、夏休み期間中は40℃前後の猛暑日になることも多い。そのような猛暑の中、対面で授業を行えばどういうことになるか、想像力が欠けているのではないだろうか。
 コロナ・ショックで7月まで対面授業ができないと予想される地域もある以上、対面授業にこだわるのではなく、PCやタブレット端末を使った先進的な教育システムを全国的に導入してはいかがだろうか。このような危機は、今までの固定観念をぶっ壊し、新しい価値を作り出すチャンスなのである。

オンデマンド授業をフル活用せよ

 では、対面授業を増やさずに乗り切るとしたら、どのような方法があるのか。私は、当面はオンデマンド授業(録画)をメインに据えて、学習の基礎的な項目はオンデマンドで教え切るべきだと考える。そして、ディスカッションが必要な応用事項や、質問対応は、リアルタイムのオンライン授業とすれば良い。
 オンデマンド方式には以下のような利点がある。まず、全員が説明の上手な先生のオンデマンド授業を受けることができる点だ。学校の先生方の中でも、講義が得意な先生とそうでない先生がいらっしゃる。講義の得意な先生がオンデマンドを担当することによって、全員が上手な説明を受けることができるのである。次に、何度も繰り返し見ることが出来る点だ。エビングハウスの忘却曲線によれば、1日も経てば記憶の大部分を忘れてしまう。オンデマンドであれば、忘れたところを重点的に繰り返し聴くことによって、思い出すことができる。苦手で理解の進まない科目・分野を繰り返し聴くことにも使えるだろう。勉強が得意な生徒は、逆に高速再生すれば良い。さらに、オンデマンドには利点がある。授業の数を増やせるということだ。例えば、ある中学校の数学の授業は、習熟度別授業が仮に行われたとしても、多くて3種類しかなかっただろう。しかし、オンデマンドにすれば、1つの種類の授業につき1回だけ収録をすれば事足りるので、授業の種類を増やすことができるのだ。これで、多様な習熟度や生徒の興味関心に合致した授業を行うことが可能なのだ。
 しかし、リアルタイムならではの柔軟性・双方向性がないということが、オンデマンドの欠点だ。もっとも、この欠点はリアルタイム授業を併用することで解消できる。
 このように、オンデマンド授業をメインとして活用しつつも、リアルタイムのオンライン授業も併用するという作戦には、大いなる可能性があるのではないか。

笑えない現状

 大学を中心に、既にオンデマンドとリアルタイムのオンライン授業を組み合わせた形式で、授業が行われている。しかし、それぞれの授業の形式の長所と短所を授業する側が理解していなければ、効果を最大化することはできない。とある大学では、オンデマンド授業を配信する時間帯(聴くことのできる時間)を数時間に限定している。しかし、これはオンデマンド授業の①好きな時に、②何回でも聴くことができるという最大のメリットを殺してしまっている。このようなオンデマンド授業であれば、導入しないほうがマシである。現場の新しいシステムへの理解不足が、残念である。
 もっと笑えないのは、公立学校である。公立学校は、自治体の教育委員会が方針を決めなければ、対面授業で乗り切るという方針を変えることができない。学校独自の対応が極めて困難である。オンデマンド授業はおろか、オンライン(リアルタイム)配信授業も導入するか怪しいところばかりである。
 「前例がない」ことを、導入しない理由としているのだろう。しかし、コロナショック自体が、前例のない事態なのだ。前例のない危機に対応するためには、前例のないことをしなければならない。

コロナ後の教育も見据えた導入を

 日本の画一的な対面授業システムは、世界最高水準の識字率という誇れる結果をもたらした。しかし、時代の流れに合わせ、オンデマンド授業を含めたICT教育を充実させなければならない。特に、オンデマンド授業を行うことで、最も効率的に教員を配置するとともに、多様な要望に合わせた教育を展開することが可能となる。そして、効率化で余った先生を、プログラミングなどの新しい教育内容のための授業要員に充てればよい。これは、コロナという有事が去った後こそ、真価を発揮するシステムになる。
 もし、学校現場にノウハウが足りないのであれば、東進ハイスクール、河合塾マナビスのように、学習塾・予備校業界の手を借りればいい。元々、公立高校はベネッセと癒着しているし、今さら塾業界との連携は禁じ手でもなんでもないはずだ。
 以上のような提案を実行した場合、学校教育は大きく変容するだろう。しかし、得られるものが大きいのだから、ぜひともオンデマンド・オンラインの授業を導入してほしいと考えている。コロナ後に、真に生徒のニーズを叶える教育システムが残るように、今こそ大胆な改革を実行してほしい。

この記事が参加している募集

オープン学級通信

皆さんのサポートが、記事を書くインセンティブになります。どうぞよろしくお願いいたします。