見出し画像

村下孝蔵「陽だまり」 ああ 君に会いたい 今すぐに声を聞きたい

私のような50歳の中年にとって、アニメ「めぞん一刻」のオープニングソングとして、胸に刻まれている。そんな中年男性は多いのではないだろうか。

1987年9月21日リリース。この曲をOP曲に採用したスタッフのセンスが光っていたのだろうと推察します。ウィキペディアによると、アニメでは1987年10月14日から最終回の1988年3月2日まで「陽だまり」が採用された。

この前奏を聴くと、めぞん一刻の映像がよみがえってくるほど、すり込まれている。この曲を若い人が聴いても、いい歌だと分かると思うけど、中年男性にとっては、DNAに刻まれているような存在なのではないだろうか。1980年代後半という時代の中に確実に存在した曲だという気がする。

めぞん一刻の最終回に向けてのストーリーに、この曲の歌詞は非常に適している。これほどアニメと音楽が完全に融和しているケースは、なかなかないよね。

歌詞を見ていく。

「蝉時雨 遙か すだれごしに 水を打つ 夏の夕暮れ
石が川面を跳ねるように ときめいた君を想って
陽炎がゆらめく街 この場所から 遠く空を見て
ああ 君に会いたい 今すぐに声を聞きたい」

なんときれいな情景描写だろう。選ばれた言葉の一つ一つが美しい。その情景の中に、自身の感情を溶け込ませ、最後は強い思いを低いトーンで一気に解き放って「ああ君に会いたい 今すぐに声を聞きたい」と切なさを印象づける。

「きらきら夕焼けの中 微笑みなげて
望みを祈りにかえたら
一番大事なこと 忘れずに 輝いていてほしいよ」

また、情景に戻っていくんだけど、「きらきら」は転調して村下さんのハイトーンボイスが効果的に使われており、まさに曲の印象を決定づけるような心地よさがある。

「早く会いたい たった一言 心から叫びたいよ
きっといつかはめぐり逢い 結ばれると信じていたと
歩き出せば この背中を 追いかけて 付いてきてほしい
ああ僕は君一人のためだけのひとりぼっちさ」

2番は早速、最高潮だ。情景描写をはずして、強い思いを一気に詰め込んでいる。

「ひらひら 花びらの舞う春の午後には
祈りを誓いにかえるよ 二人で陽だまりの中 光あつめ
やさしさを分かち合えるさ
一番大事なこと忘れずに 輝いていてほしいよ」

めぞん一刻のラストを思わせるような幸せのシーンが浮かんでくる。

でも、村下孝蔵さんって、あまりテレビでも見なかったし、正直言って、あまり知らないままだったな。1999年6月に46歳の若さで亡くなっている。ハイトーンボイスの美しさと、古風ながらも繊細な言葉たちで紡がれた歌詞たちこそが、村下さんの証なのだろうね。

めぞん一刻の音無響子、五代裕作の最後のシーンは圧巻なので、曲と共にぜひ振り返ってみてもらいたい。

2022年9月29日 トラジロウ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?