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寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第2回 ジョージア篇(10)

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ジョージア篇(10)
10品以上の手作り家庭料理とワインの宴
〔シグナギ〕


 ゲストハウスの夕食は8時から。私を含めた7人の旅行者が同じテーブルを囲んだ。
フランス人とカズベキスタン人の夫婦、オーストラリア、ニュージーランド、あとからロシア人とジョージア人の夫婦、食事の終盤にはダヴィドも加わった。

 一家の女性たちが手作り(ジョージアは家父長制健在)し、次々に並べられた家庭料理は全部で10品以上。
日本でも知られるシュクメルリ(鶏肉のグリル)、肉じゃがそっくりのオジャフリ、ラタトゥユふうのアジャプサンダリ、キュウリやトマトをナッツソースで和えたジョージアンサラダ、そして熱々のハチャプリ(チーズを挟んだパン)など。
量を別にすれば、どれもこれも日本人の私の舌にもドンピシャの味付け。自家製のワインやチャチャとよばれる蒸留酒は飲み放題だ。

 もうお腹いっぱいです、と言っても、給仕してくれる女性たちが、これもあれもお食べ、と次々に取り皿にとりわけてくれる。これぞ、本や映画などを通じて知っていたジョージア式宴会(スープラ)のホスピタリティか。そうとわかっていたら、ミニバスの中で昼食代わりにお腹に詰め込んだパンをやめておけばよかった。

 もうひとつ痛恨だったのは自分の英語力のせいで会話に緊張するあまり、撮るぞー、と意気込んで臨んだ料理写真がまったく撮れなかったこと。
しかたない。だってジョージアやロシア、カズベキスタンの人たちさえ微妙なジョークや皮肉を理解して笑ったり、話を深められるほどに英語が堪能。10分限界の私の会話力では、気候変動やウクライナなどの話題についていけない。

 それでもお開きまでその場に留まったのは、プーチンの悪口をユーモアたっぷりに語るロシア人や、ジョージアはアジアか欧州か、という話題で「絶対に欧州だ。なぜなら……」と一歩も引かないダヴィドの姿を新鮮に感じたから。

政治の話題はタブー とかたくなに信じられている国の習慣が身についた自分のナイーヴさをいやでも自覚させられ、もちろん気後れや恥ずかしさを感じたけれど、そこは鈍感さを装うBBA力で乗り切った。

ボドゥべ修道院からの帰路、雨のやみ間からシグナギの街を望む

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