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日本ではコーチングのビジネス活用は難しい?

コーチングのことをより深く理解したいと思い、「コーチングのすべてーその成り立ち・流派・理論から実践の指針まで」を読んでみました。まだ、読み終えてはいないのですが、種々の流派や実践の指針が簡潔に纏められていて、とても参考になりました。自分がクライアントに提供したコーチングの内容を思い返しながら、どの流派に近いのか、何を強化すればよいのかという方向性も見えてきたように思います。

一般的に、コーチングは目標達成や問題解決を促進する効果的な手段とされています。しかし、この書籍を読んでみて、日本では、コーチングのビジネス活用は難しいのではないかと思いました。今回はそのあたりのことを、インテグラル・コーチングで使用されるフレームワークを利用しながら、考察してみたいと思います。

インテグラル・コーチング

インテグラル・コーチングでは、「インテグラル・モデル」の4象限という考え方があります。物事を見る時に、その1つの側面だけでなく、複数の視点から全体を見るという考え方で、個人と集団という視点、内面と外面という観察する方向から、以下のように4つの事象に分類されます。

「コーチングのすべてーその成り立ち・流派・理論から実践の指針まで」より

これをビジネスコーチングに当てはめると、企業経営に関しては以下の4つに対応します。インテグラル・コーチングでは、すべての象限でクライアントを成長させる方法を話あうそうです。

  • 内的×個人的:個人の動機

  • 外的×個人的:個人の行動

  • 内的×集団的:企業文化(カルチャーマネジメント)

  • 外的×集団的:企業のシステムプロセス

書籍には、クライアントが有能なセールスパーソンになることを目標にコーチングを行うとしたら、次のような質問をするという例が記載されていました。今回は上の二つの象限の質問例を紹介します。

「内的×個人的」象限の質問例
・この目標について、あなたとって重要なことは何ですか?
・この目標を達成した時、あなたはどう感じますか?
・あなたの助けになる内的特質はどのようなものですか?

「外的×個人的」象限の質問例
・あなたの行動をどのように変えたいですか?
・あなたがどのように顧客に接しているか見せてくれますか?
・有能なセールスパーソンになることに関する論文を読んだことがありますか?

ティール組織

皆さんは「ティール組織」をご存じでしょうか?2014年にフレデリック・ラルーによって執筆された原著『Reinventing Organizations』で紹介されているもので、「旧来のマネジメント手法は成果が上がっており正解だと思われているが、実は組織に悪影響を与える可能性を孕んでいる」ということを指摘しているそうです。

彼は組織フェーズを5段階に分けて、この要因を説明しています。現状、日本企業の多くは「オレンジ組織」と呼ばれるフェーズに位置していると言われています。この組織では、効率性と成果重視の結果、人間らしさの喪失という課題があるとのこと。一方で、「グリーン組織」と呼ばれるフェーズでは、「その人らしさを表現可能であり、主体性を発揮しやすく個人の多様性が尊重されやすいことが求められる」そうです。

日本企業におけるコーチング効果の考察

日本のコーチングは、主に「インテグラル・モデル」の4象限の内(内的×個人的)に焦点を当てた「課題解決型のコーチング」が主流だと思います。このコーチングは、クライアントの「思考」や「感情」に焦点を当てるのですが、ビジネスで効果を発揮するには、クライアントの目標と所属する企業の方向性が一致していることが不可欠になります。具体的には、企業から指示された目標をクライアント自身が自発的に自らの目標として捉えることが必要になる訳です。会社の方向性を決定できる社長を除けば、社畜を誇りに生きている人というイメージが近いかもしれません(笑)。

また、日本のコーチングは、一般的にコーチを挟むことなく、部下と上司という関係で用いられることが多いかと思います。コーチングは、コーチとクライアントの信頼関係を基に成り立つものです。傾聴などのテクニックは使用できるかもしれませんが、部下と上司が信頼関係を構築できなければ、コーチングは十分に機能しません。「オレンジ組織」と呼ばれるフェーズに位置し、人間らしさの喪失が課題となっている企業で、コーチングが機能するような信頼関係の構築は、容易ではないだろうなと感じました。

もし、「グリーン組織」へと移行すれば、主体性を発揮し、個々の多様性が尊重され、クライアントの目標が企業と一致しやすくなります。しかし、この組織への転換は容易ではなく、時間と組織の変革を必要とします。

感想

書籍には「外的×個人的」象限を専門に扱うコーチングとして「行動コーチング」が紹介されていました。この行動コーチングは「思考」や「感情」に焦点を当てるのではなく、「行動」に重点的に取り組みます。個人の理想(目標)の実現には、理想を具体的な行動に繋げていく必要があります。内的なアプローチだけでなく、外的なアプローチの両方が必要ではないかと感じました。


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