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翻訳経験ほぼゼロの私がトップスタジオで翻訳者になるまで

はじめまして、翻訳者・レビューアの小島です。
時が経つのは早いもので、この春、トップスタジオに入社して5年目に突入します。

振り返れば約4年前、「翻訳者になりたい!」という思いから、ほぼ未経験の状態で入社しました。最初はわからないことだらけでしたが、日々の仕事で知識や経験を積み重ね、今では自信もついてきました。

今回は、私がどのようにして翻訳業界(トップスタジオ)に入り、翻訳者・レビューアになっていったのかを書いてみます。その過程で読んだオススメの本も、最後に少し紹介します。翻訳学習中の方や、私のように翻訳者歴の浅い方の参考になればと思います。

翻訳をやりたいと思ったきっかけ

そもそも私が「翻訳者になりたい!」と思ったのには、前職の仕事が影響しています。

トップスタジオに入る前、私は某IT企業で「英語なんでも屋」なポジションで働いていました。その会社では開発工程の一部を海外の企業に委託しており、委託先の人と英語でやり取りする必要がありました。ですが、チーム(日本人)には英語が苦手な人が多かったため、英語を使う諸々の作業を私が行っていたのです。

海外企業との進捗ミーティングで通訳をしたり、仕様書やテストケースなどを翻訳したり、バグ報告書を英語で作ったり…。と、いろいろな仕事をしましたが、そのなかでも、翻訳や文書作成の作業がとても面白く感じました。変に思われるかもしれないのですが、修飾句の位置をずらしてみたり、単語や言い回しを変えてみたりと試行錯誤しながら、わかりやすい文に仕上げる過程が楽しかったのです。自分にはこういった仕事が合っているのではと思いました。

それから、IT関連の洋書を自分で少し訳してみて、「やっぱり翻訳は面白そうだ」と感じ、翻訳者を目指そうと決めました。

トップスタジオに入社した経緯

いざ翻訳の仕事を探し始めたとき、「経験」の壁にぶつかりました。翻訳者求人の多くは、「実務経験〇年以上」という条件があったのです(これは専業翻訳者としての経験のことなので、前職の経験では条件を満たせませんでした)。メーカーなどで内部文書を翻訳する社内翻訳者ならば「未経験可」の求人もあったのですが、幅広く翻訳をしてみたいと思っていたので、これらは選択肢から外していました。

「翻訳者求人で未経験可のものはないか…」と諦めかけていたころ、トップスタジオの求人を見つけたのです。

厳密には翻訳者の求人ではなく、「プロジェクト管理、コーディネートなどを含めた翻訳関連全般に従事する職種」としての募集でしたが、翻訳をする機会もあり、未経験でもよいとのことでした。最初から翻訳をたくさんやらせてもらえるわけではなさそうでしたが、コーディネータなどを経験してから翻訳者になる人も一定数いると知っていたので、まずは現場に入ってみるのも手だと思いました。

そうして応募してみたところ、無事に内定をもらえました。

一応そのときに翻訳トライアルも課されたのですが、訳文を今見返してみると、英文和訳調であいまいさも残っており、商品翻訳としては失格なものです(「今だったら絶対こうは訳さない…」と苦々しく思います 汗)。翻訳者としての求人であれば採用されなかったでしょう。訓練すれば芽が出ると感じてもらえたのか、単に翻訳以外の業務ならできそうだと判断されたのかはわかりません。ですが、このときにトップスタジオに入社できたおかげで、翻訳者への道を歩み始めることができました。

入社から現在まで

入社してから2年ほどは、プロジェクトマネージャ、コーディネータ、チェッカーの仕事をメインにしていました。ただ、いずれは翻訳をしたいという気持ちがあったので、ときどき上司や先輩に自分の翻訳を見てもらったり、担当プロジェクトの最終成果物を対訳で分析したりして、少しずつ翻訳スキルを習得しました。また、翻訳関連の本や雑誌を読んで、知識などを身につけていきました。

3年目くらいからは、翻訳やレビューを以前より多くやらせてもらえるようになり、そこで実地訓練を重ねました。よかったのは、プロジェクトマネージャ時代に、翻訳後の工程(レビュー、納品前チェック、編集、DTPなど)にも関わってきたこと、お客様の要望を直接聞く機会が多かったことです。このおかげで、自分で翻訳する際も、後工程で使いやすい訳文やお客様の好みに合う表現を自然と選べるようになっていました。

それから2年近く、ほぼ毎日、翻訳やレビューをしています。
今では複数のお客様から継続的にお仕事をいただけるようになり、自信もついてきました。

そのことを考えると、あのとき未経験でも業界に飛び込んでみてよかったなと思います。そこから意欲をもって現場で勉強すれば、翻訳者になれるのだと身をもって知りました。

とはいえ、翻訳者になってからも勉強は必要だと感じます。

特に私の場合、学校で翻訳の基礎をしっかり固めてから翻訳者になったわけではなく、ほとんどの知識やスキルを実務で習得してきました。

そのため、自分の知識やスキルが偏っていないかを確認する「ベンチマーキング」の意味で、翻訳関連の本を読んだり、翻訳の講座やセミナーを受講したりするようにしています。本や講座で言われている内容とこれまでの自分のやり方が大きくずれていないかを確認し、自分が間違っていたことがあれば直し、新しい情報があれば取り入れるといった形です。

これからもこのように勉強を続けながら、自信をもって翻訳者を名乗れるようでいたいと思います!

おまけ:オススメの本

最後におまけとして、これまでに読んできた本のなかからオススメを3冊紹介したいと思います。

(1) 『日本人の英語』 マーク・ピーターセン著(岩波書店)

日本人が英文を書くときに犯しがちな誤りを取り上げながら、「英語的発想」をわかりやすく説明した本ですが、英日翻訳にも役に立ちました。冠詞、時制、関係代名詞などを、英語ネイティブがどういう場面でどのように使うのかがわかるようになるので、「原文ライターの意図をもれなく訳文に含めよう」という意識がつくと思います。著者の飾らない語り口が小気味よく、読み物としても楽しめます。

(2) 『翻訳スキルハンドブック』 駒宮俊友著(アルク)

英日の産業翻訳に役立つスキルをまとめた本です。無生物主語の訳し方、訳し下げの手法、品詞転換といった、翻訳作業に使えるスキルだけでなく、その前段階である原文分析、リサーチ、ストラテジー(どのように訳すかの方針決め)のスキル、翻訳後の校正のポイント、さらにはクエリシートの書き方や納品前チェックまで触れてあり、とても実践的です。1つのスキルが数ページでまとまっているので、忙しくても少しずつ読み進められます。

(3) 『翻訳とは何か 職業としての翻訳』 山岡洋一著(日外アソシエーツ)

翻訳を生業とする人の心構えがわかる本です。翻訳を「執筆の一種」、翻訳者を「物書き」ととらえ、それくらい完成度の高い日本語に仕上げるべきだという主張が印象的でした。語や句の表面的な置き換え(英文和訳)ではなく、原文の意味を伝える「翻訳」には高度な技術が必要だとわかり、その難しさを思い知らされますが、だからこその面白さにも気付け、励みになりました。翻訳学習者に特にオススメしたいです。

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