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沖縄県内の24卒採用市場で起こったこと

沖縄県内で新卒採用支援をやっているが、今年(24卒採用市場)はかなり特殊な1年だった(まだ継続中ではある)。なので現状把握できている情報から簡単な考察をする。これから始まる25卒でも、24卒同様のことが起こる可能性もゼロではないので、あくまで予測も含めた対策もちょっと記載しておく。

就活生はどこへ行った?

例年就活のピークとなるのは「情報解禁」とされる3月。就活生が3年生から4年生へと移行するちょうどそのタイミング。リクナビやマイナビといったメガサイトがオープンし、3月1日から約1週間、何かしらの就活ナビサイトが毎日合説を開催し、お祭り騒ぎ状態となるのが恒例である。企業側も学生が活発に活動する時期なので、各社説明会を手厚く開催。3月末の書類応募の締め切りには、沖縄県内企業であっても100通、200通と応募が集まるものである。
24卒でも同じ様な動きが予想されていたが、いざ蓋を開けてみると、3月1日から連日開催される合説は昨年の動員数を大きく下回り、ピーク時期であるはずなのにナビからの説明会予約が減少し、書類の応募数もひどいところでは3分の1以下になるケースも散見された。市場から就活生が消えたかのような出来事に、各企業の人事からは「就活生はどこにいったんですかね?」と本当に困った様子での相談が増えた。

予兆

Topothesiaは例年、情報解禁以前の3年次前半(5-6月頃)から就活が終わるまで(4年次の6月頃)の約1年ほど、就活生の自己分析や企業選びのお手伝いをするサービスなので、実は「就活生はどこへ行った?」という現象をちょっと早めに体感していた。例年と比べて、サービス登録者数が減少した訳ではないのに、自己分析の進捗が遅い学生が多く、特に企業説明会への参加者数減少が著しかった。下の表①は、23卒、24卒でTopothesiaに登録のあったユーザー約500名の2月末時点(情報解禁直前)での説明会参加者の割合と、1人当たりの説明会参加回数である。

表①

23卒と比べると、情報解禁以前の単説参加者の割合が10%以上減少。2月時点で一度も単独説明会に参加していない学生が約50%いるということになる。それでも、この段階では組織内部のエラーを軌道修正しきれず、なかなかサービスクオリティを維持できなかったので、まあこれが限界かとも思っていた。
ただ面談をしていても、休学を視野に入れている学生や、自己分析が進まない、第一志望が定められないと悩む学生など、腰の重い子が多いなという印象はあったため、「これでもし3月の合説の動員数減ったら、いよいよ学生側の市場の問題もあるな」とは思っていた。なのでできるだけ2月中で各社少しでも名簿を厚くできるように、という話をしていた記憶だ。ちなみに、Topothesia登録者に対して、ほぼ毎月第一志望から第三志望までの企業をアンケート取り続けているのだが(新聞で公開されている人気企業ランキングとは全然違う結果ですが笑)、この結果でも2月時点で約半数が未定(第一志望が決まっていない状態)であった。

図①

そして3月の情報解禁を迎え、蓋を開ければ「就活生はどこへ?」の状態。うちのサービスだけの問題でもなく(もちろん改善点はあるの承知だが)、そもそも学生が市場にいないということだった。

悔いの残る大学生活

あくまでこれは自分の考察でしかないが、学生と話していると「就活をせず休学をする友達が多い」という話をよく聞く。思えば24卒は大学入学当初からコロナ禍の世代。留学に行くことや、部活、サークル、ゼミ活動、アルバイトや学生団体活動すらも制限され、就活以前に何かに打ち込むことができなかった。自分たちが就活をしていた時のことを思えば、アルバイトや、インターンシップ、部活などの経験から、なんとなく「この仕事がしたい」「こんなことに興味がある」と考え仕事選びに繋げていた。なので、熱中して物事に取り組むことができないというのは、随分と大きな足枷となっているようにも思う。先に示した図①で、第一志望企業が決められないというのも合点がいく。とある企業では職種ごとに説明会が開催されているが、例年と異なり職種を絞りきれず全職種の説明会に参加する学生がいたり、どの職種で選考を受けるか悩んで行動できなくなっているケースも見受けられた。自分の活動の判断軸や選択軸みたいなものが育まれていないのがよくわかる。

更なる二極化

全体的に腰が重く、活動している学生の絶対数も少ない。そんな中で、アクティブに動いている就活生たちもある一定数存在する。先に示した表①にある通り、実は23卒との比較でも、説明会に参加している学生一人当たりの説明会参加回数は微増している(23卒では一人当たり4社だったのが、24卒では5社へと増加)。また、図①で第一志望が絞れない学生が多いとも示したが、その反面約50%の第一志望が決められている学生のほとんど(ほぼ100%)は早期選考にトライしている。そしてその多くが3月の情報解禁後早々、内定を複数社から獲得できていたりもする。

図②

図②に、Topothesiaユーザーの合説参加のタイミングをまとめた。これを見ると、動き出しの早い学生は8月以前から動き出し、その後12月、2月と企業との接触を試みているように見て取れる。事実、早め早めに企業情報を回収し、早期選考で複数社内定を勝ち取り、3月以降は本命の選考を本腰入れて取り組むという流れが、早期から意欲的に活動している学生たちの理想の動き方ともなっている。3月以降は本命に絞り出すので、それ以外の企業の選考に学生は参加しない。自社が求めるターゲットに出会えないという声もちらほら聞くが、恐らく2月以前で出会えていなければ、今期は正直もう厳しいのではないかとも思う。
これを踏まえて改めて図①の内訳を見てみれば、早期から意欲的に選考にトライし内定を複数社獲得している50%と、腰が重く第一志望を決めきれず悩む50%という、かなり極端な二極化がTopothesiaのような早期から動く学生向けのサービスの内部ですら起こっていることになる。もちろんうちを使わず自発的に頑張っている学生がいることも知っているので、これが全てではないと思うが、まあそうは言っても年間約2000名弱が民間就職する市場のなかの500名弱の話なので、統計的にはそんなに間違ってなさそうではある。(もっというと早期で動いてるのは2000名中35%程度というデータもある。)
そしてもう一つ、この二極化によって、各社が内定を出す学生が被るという問題が起こる。学生の絶対数が少ない上に、内定出しをしたい学生が被る。しかも3月以降の応募者数はどんどん減少している。採用目標数の達成難易度は半端なく高い。ハードモードすぎる24卒採用市場である。

25卒はどうなるのか

正直25卒も、同じようになるのではないかと思っている。というか、そう思って採用活動を行うべきだと思っている。もちろんどういう学生を採用したいかによって異なるところはあると思うが、やはり多くの企業が「3月の情報解禁がピーク」と思っていたことが、何より大きな落とし穴な気がしている。
お手伝いしている複数社では、上手くいってないなりに少数でも「承諾者」がしっかりと確保できている。これは夏からコツコツと名簿を取り続けたことが功を奏したものだ。学生が使用するツールもどんどん多様化していることや、合説に行かない選択をする学生が増えていることも含め、待ちの姿勢となる「ナビ・合説」一辺倒では沖縄であっても限界が見えてきている。また、沖縄の学生は意外と「県内県外どちらも視野に入れている」ことが多く、採用競合は県外の企業でもあったりする。県外企業の求人も増え、高待遇での採用情報も多く流れている。これにコロナ禍という特殊な状況で育ってきた学生たちという条件が加わるわけなので、やはり夏にちょろっとインターンシップをやり、3月に構えておけばいいというのでは厳しい。タッチポイントのクオリティも上げなければいけないし、そこにいる学生を刈り取るのではなく、「採用市場を育てる」というマインドがそろそろ全体的に必要なんだと思う。
正直選考開始時期は、情報解禁後の3月開始だろうと、5月開始だろうといつでもいいが、学生が「選考を受ける企業を絞る時期」に出会っていなければ、選考を受けてもらえる可能性は極めて低い。名簿さえ取れていれば、なんとでもなるはず。個人的には先に書いた通り、「3月のピークはない」という頭で、できるだけ早期から名簿集めに各社取り組んだほうがいい。(もちろんただ名簿を集めても意味がないので、学生にとって意義のある機会で、というのは大前提あるとして。)結果、3月に例年通りのピークが来れば、ボーナスステージとなるわけで。
25卒は高校時代からコロナ禍の世代。正直ここまでの考察から見ても、24卒とそんなに大差ない市場になりうる可能性は十分にあると改めて書いておく。そうは言って、腰の重い学生を変えていくことが、学生にとっても企業にとってもメリットになりうることなので、25卒はより多くの企業と一緒に「自社の採用活動」の枠を超えて、学生の就活が進めやすい環境を構築していかなければと考えている。みなさま、来期(25卒)もよろしくお願いいたします。


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