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Sleep Cop ~睡眠捜査官(4面)

ー初めのうちは辛抱して約束を守っていた老夫婦も、だんだんこの娘はどうやってあんなに美しい布を織っているのだろうと考え、好奇心に勝てずについつい部屋を覗いてしまった。するとそこには娘と一羽の鶴がいた。そして鶴の足下には消えかけの葵の御紋の入った布があった。問い詰めると娘は、実は鶴を使って城から反物を盗みだしてお渡ししていました、と白状した。そして娘は老夫婦に迷惑が掛かるからと、鶴と共に出て行き、2度と戻りませんでした。


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第4章
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俺はアラームをセットしたまま畳宿に飛び込んだ。

居た。ドンピシャだ。
とうとう幹部クラスにまで手が届いた。

ピピピピピピピピピ

部屋中にアラームが鳴り響く。

「ゲロッパ!!お前には黙秘権がない。全ての罪状は捜査官であるこの俺がこの場で決める。」

いつもながらのセリフを言いながら“ランギッドショット”を放った。(昔は真逆の効果の“スタンガン”というもの を使ったらしいが現在は当たった瞬間に相手が気だるさ、やる気の無さに襲われるこちらを使用している。)

確保した容疑者が澱んだ眼でこちらを眺めた。

俺は男の鞄を開け、物色をした。

「ほう?こりゃ何だ。アイマスクか。これで1 年、蛇型の抱き枕か?これは。4年と。それに…ちょっと待てお前ローズヒップ…いやラベンダーティーも服用しているな?肉球付きのモコモコスリッパまで使用してやがる。合計で懲役15年ってところか?当分出れそうにないな。刑務所は久しぶりか?しっかり国に仕えて来るんだな!」

俺は無気力で怠そうにしている男を立たせ、入室前に争ったボディガード達の死体を足で端に寄せながらその場を出た。こいつらの始末は後で他部署がやってくれる。もちろん今月分の正当防衛チケットはまだあるので大丈夫だ。

「さあ車まで歩くんだ」
男を無理矢理警察車両まで歩かせた。

男はランギッドショットが効いているらしいが何かを話そうとしている。

俺は停車中の覆面Patの後部座席に犯人と並んで乗り込み、署に向かった。

気だるさの後を引きながら男は話し出した。

「…なぁ刑事さん。最後に観た夢はいつだ?」

酷い渋滞だったので少し会話に付き合うことにした。

「そんなのはとっくに忘れたよ。ありゃ人間社会の遺物だぞ。」

「本当にそう思うのか。」

「思うさ。歴史を見てみろ。産業革命前に戻りたいか?インターネットなしの社会を考えられるか?睡眠法もそれと同じだ。」

男が言った。

「産業革命は人間性を奪った。インターネットは人間関係を破壊し、そして睡眠法は人間の“夢”を奪ったんだ。それは最後の砦ー“個人が生きる理由”を奪ったようなもんだ。」

男は段々と意識がハッキリとしてきたらしい。
ランギットの効き目が落ちてきたな。

それには構わず俺は反論した。

「いいか?この社会は人間が寝ない事で機能しているんだ。産業革命が悪だとか言うがそのおかげで多くの人間が飢えなくなった。インターネットのおかげでより多くの物資に恵まれ、そして睡眠法は日本を世界一の超先進国にした。全く眠らないで100%稼働し続ける国に勝てる国があるか?それをお前らが旧時代に戻そうとしている。俺には訳がわからんね。」

刑事としての本心だった。 男は少し間を置いて語り始めた。

「…なら聞くが、なぜ金持ち達は産業革命で得たその大量生産フードを食べない?なぜ成功者達はインターネットよりも高級車を乗り回したり等現実世界の遊びを好むんだ?そしてまたなぜ権力者達の多くが俺たちに接触して何時間も何時間も眠るんだ?」

俺が言葉に詰まっているのを見て、男は続ける。

「連中が少量しか採れない自然栽培された食糧を食べ、仮想現実を楽しまず、代理経験を毛嫌い、24時間寝ないで働こうともしないのはなぜだ。考えて答えてくれ。刑事さん。」

俺は苦しかった。俺にもわかっていたから。しかし認めるわけにはいかない理由があった。俺は刑事なのだ。しかし男の論理に押されてとうとう言葉が漏れてしまった。

「…その必要がないから…それが理想ではないからだ。」

…そうなのだ。自分が食べたい物を選び、表に出て自由にしたいことをし、愛する人が自分の腕の中で眠る幸せというものがあるという事を俺は知っていた。

「…しかし俺は、刑事で…お前らはテロリストだ…。だから」

「ありがとう。刑事さん。今日はここまでにしよう。」

そう言うとほぼ同時に、男のピアスから霧状のガスが噴射された。

「なにを…。」

クロロホルム気体だった。

「たまにはゆっくり寝たらいい。刑事さん。」

(続く)

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