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わが城わが楯 3 毒の流し込み

 毒薬をバケツに入れた特技兵は、暗い道を歩いて、土山の上にあるため池に、粉をいっきに流し込みます。

 白い粉が、煙をまきあげながら水のなかに入っていきます。

 そうして、村のなかにいる人びと、占領軍、また動物たちが死にます。

 毒は生活のための水だけでなく、こうした生き物が歩く土や、なにもない空気にもしみこんでいきます。

 占領軍の兵隊たちは、支給されたブーツがぼろぼろになり、穴が開いているのを発見しました。

 裸足で歩いた兵隊は、すぐにひりひりとする感覚を覚えました。そして、足の裏が紫色にはれあがり、やがて真っ黒に腐っていきました。


 村の人たちは、夜が明けて起きると同時に、水を汲んで朝食を食べました。そして、いっせいにのたうち回りました。かれらは激しく暴れまわり、椅子や扉は壊れ、窓は割られました。

 そうした屍体は、どれも悲惨な様子でした。


 林と外山、毒薬の特技兵は、あらかじめ用意していた防護布を前進に巻いて、朝方には離れた地点まで歩いていました。

 遠くから車のエンジン音が近づいてきて、かれらの横で停止しました。

 依頼人たちが銃を持って下車します。

「わたしたちは、占領軍を追い払ってくれと頼んだはずだ。しかしわたしたちの村も、全部死んでいるじゃないか」

 林が回答しました。

「占領されて、ふつうに暮らしているわけでしょう。それは、命を売ったと変わらない。敵に寝返ったという解釈です」

「あんたたたちは頭がおかしい。わたしたちの家族も死んだ。許さない」

「勝手なことをいうな。間者隊は害虫駆除ではない。敵は敵、敵を殺さないやつも敵だ」

 依頼人たちが銃を撃とうとしましたが、ひと呼吸早く林たちが相手を射殺しました。

 車の運転席にいた若者は、あわてて逃げようとしましたが、外山が狙いをつけて後頭部を撃ち抜きました。


 林たちは道に転がっている屍体を草むらに埋めてから、自動車を点検しました。

「この自動車は使うべきではありません。すぐに占領軍の検問にひっかかります」

「よし、歩こう」


 3人は、自動車に残された弾薬だけを回収して、次の野営地に向けて前進します。

[おわり]

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