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わが城わが楯 2 村

 河のほとりに並んで立っている、貧しそうな数人の男たちが、1隻の木船がやってくるのにあわせて、いっせいにひざをつきました。

「お待ちしておりました」

 木船から錨がおろされ接岸したあと、林大尉、外山中尉、毒薬特技兵が上陸して、迎えの人間たちにあいさつしました。

「町は、ここから歩いてどのくらいなのか」

「すぐそこの木の柵をくぐれば町です」

 林たちの視線の先に、木の板を張り巡らせたサーカス小屋のような、黒ずんだ町があります。

 町は土山のふもとに広がり、占領軍の旗や、槍の穂先に掲げられた首長や軍事評議会員の頭部が見えます。それら首の赤い切り口が、センサー付きフェンス装置となってときどき赤く発光します。


 かれらは木の枠にそって、1人、1人が両足をそろえて並び、青い液体を顔と手のひらにつけました。

 その青い液体は、動物の骨をくだいて溶かし、さらに、洞窟の壁にこびりついていた鉱石を削り、破片を細かくすりつぶして煮詰めたものを混ぜ合わせることによってできました。

 青い色が、人間の皮ふにしみこんで、それは屍体になるまでとれませんでした。

 青い手のひらが、町にやってきた軍人たちを見て、その跡を追いました。

「この人たちが、わたしたちを統制する、外国人を殺す」

「外国人につきしがたい、わたしたちの動作および資産の管理から権限を奪い取るものを殺す」

「そのようにして、殺す」

 依頼主たちが、期待しています。


 林大尉、間者隊の解散した今となっては、階級も勲章も無意味となってしまいましたが、林が言います。

「このような小さな村にまで占領軍がやってきて、地域の再建に向けて地元の人びとと協力して、産業をおこしたり、生産を立て直したりとやっている」

「はい」

「わたしはそのような行動が許せない。幸いなことに、奴隷となることを認めない、徳のある者たちがわたしたちを呼んでくれた。わたしたちは、誠実と責任を大切だとおもう。かれらのためにも、この村から腐敗を除去しなければならないと考える」


 林と外山、毒薬特技兵は、依頼者たちが用意した肥料小屋の地下に拠点をつくりました。毒薬特技兵は、受け取った村の水道施設資料を参考に、毒薬散布の計画を立てました。

 糞便と腐敗物をくりぬいて作った肥溜め地下洞窟であっても、間者隊は規律と手順を重視します。

 嵐の中でも決められた手順を履行することが、欺へん・陽動作戦をおこなう戦闘員にとっては大切なことだからです。

 かれらは人糞でつくったインクで計画文書をつくり、人骨を掘ってつくった刻印で決裁印を押しました。

「なるほど、この村の上流にある浄水施設に毒薬を散布し、村の住民および占領軍を殺害する。残った人間については、ガスを用いた攻撃であらかじめ攻撃してから、火器によって処理する。これは正統的な方法だ」


 林らは準備を済ませると、夜が来るまで待ちました。

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