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国家と税金ニート 1

1 はじめに 「税金ニート」?

 この記事では、わたしと国家、国について脈絡なく書いていこうと思います。

 トピックとしては、愛国心、政府といった、大仰なものです。このような大きなテーマを、元税金ニートが考えました。


 「税金ニート」とは、わたしが一時期勝手に名乗っていた肩書です。

 自衛隊では、基礎教育(基本教練や射撃、地上戦闘など)課程を終えた後、各人の特技に従って術科教育を受けます。

 特技とは、航空自衛隊でいえば飛行、要撃管制(戦闘機の管制)、航空機整備、航空管制、高射運用(ペトリオット運用)、情報(インテリジェンス業務)、通信その他諸々です。

 各特技別に全国に学校があり、そこでまず一定期間教育を受けます。


 この教育機関がまた問題で、よく、現場で使い物にならない人間、心を病んだ人間、やらかした人間が送り込まれます。

 そのため、入隊間もない学生たちは、死んだ目をした教官や仕事のできない職員たちという「現実」に直面します。

 わたしは幹部候補生学校を卒業した後、術科学校に送られました。この学校でおよそ1年過ごしましたが、日中の授業はほとんどうたた寝していました。

 授業は、昭和時代のおんぼろ器材のスペックを暗記するだけで、退屈なので寝ていました。

 利口な防大出身の同期が試験直前にまとめペーパーを作ってくれるのでそれを前夜に読み込むだけでした。

 毎日5時で日課が終わったあとは、ひたすら体育館で筋トレしていました。他の同級生は、基地の近くのスナックに飲みにいっていました。

 大学を出た同級生の多くが、毎日終電近くまでこきつかわれてFacebookやMixi(当時はまだ使われていました)で鬱ポエムを投稿している中、わたしはアフターファイブを満喫しつつ筋肥大に専念していました。

 こうした状況を受けて、わたしは当時自分のことを「税金ニート」と呼んでいました。

「この環境に染まると、そのまま抜け出せなくなって人生終わりそうだ」と同期と話していました。


2 税金ニートの入隊動機

 わたしが入隊した理由は複数ありますが、まとめると以下のとおりです。

・試験が楽だった

・民間企業にあるような、あざとい面接やグループ作業がなかった

・海外旅行をしたところ、諸外国の軍人の地位が高く(公共交通機関での優待や軍人割引、社会的な評判等)、あわよくば自分も楽しておいしいポジションにつきたかった

・格闘技をやっていた関係から特殊部隊や海兵隊といった戦闘員にあこがれがあった

・まともな就職では同級生から比べられるので、物珍しい公務員を狙った(他の候補は刑事や海保)

・軍事史や歴史が好きだった(兵器スペックではなく、イギリス・ロシアの植民地戦争などマイナーな戦史が好きだった)


 このように、全体的に非常に不純な動機でした。

 ここには、いわゆる「国を守りたい」、「災害派遣で困っている人を助けたい」というような崇高な関心はまったくありませんでした。

 いま、自分の記憶を掘り返してみて、そういう立派な心は全くなかったのか、と確認しますが、やはり思いつきません。

 自分の心にあったのは、日本があわよくば戦争になったら適当な戦場でケガして、勲章をもらえればいいや、というようなしょうもない妄想だけでした。


 もちろん、こんなことを面接で話せば落とされるので、「国防を通じて日本を含むアジアの平和に貢献したい云々」というようなもっともらしい動機を発言しました。


3 政治への無関心

 自己中心的な動機で自衛隊に入りましたが、当時、政治的な関心もほとんどありませんでした。

 入隊前、都内の私立大学にいましたが、周りにはサークルや研究会を通じて自民党や政権に接近しようとする要領の良い方もたくさんいました。

 わたしはそのような上昇志向にもついていけないので、特に現実政治に特別の関心を持つこともありませんでした。

 政治に特に関心がない場合、流れてくる情報は大体以下のようなものでした。

・共産党および左翼に対する非難

・韓国・在日朝鮮人・中国に対する非難

・政府に盾突く沖縄人・日教組・野党に対する非難

・自民党・自衛隊への支持


 わたし自身は、小学生の頃に「シンドラーのリスト」を見た影響からか、外国人に対する誹謗中傷や、人種差別的な発言だけには絶対に同調しませんでした。

 個人的な趣味ですが、ナチスドイツや中東欧のファシストに関する歴史を個人的に読んでいたのも原因かもしれません。


 しかし、自民党・自衛隊への支持については、なんとなくそのとおりなのかなあ、と感じていました。

 自分自身が自衛隊員で、また自民党議員や政治家を応対する立場にあるため、どうしても政権・政府側の立場でものを考えるようになりました。

 自民党議員や閣僚たちは、よく基地祭や視察に来ては、自衛隊員を励ましてくれました。どうしても、思考はこうした政府に寄っていくことになります。


 当時は、沖縄の米軍や基地問題で異論を述べる人間や、政府にたてつく人間に若干の反感を抱いていました。

 主な情報源であるインターネットでは、自民党を評価し野党や共産党、左翼勢力を嘲笑する見方が一般的でした。

 これは、自衛隊で働く人間のなかに通底する感情でもありました。


 入隊してから数年、わたしは日本国とその政府を支持する、さらに自衛隊員として国家に貢献している、おそらくは愛国心を備えているであろう、外面的には公務に奉仕している人間でした。


 そうした、ふんわりとした政治的関心が一気に変わったのが2015年から2016年でした。



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