映画「ちょっと思い出しただけ」ログ
今年見た恋愛映画で、1番グッときた。
あらすじとしては、ダンサーとして致命的な怪我を機に照明スタッフに転向したテルオ(池松壮亮)と、タクシードライバーのヨウ(伊藤沙莉)のカップルが別れてしまった後から始まり、1年ずつ同じ日を遡り、別れてしまった男女の終わりから始まりの6年間を描いた恋愛映画だ。
類似した作品として
『花束みたいな恋をした』があるが
この作品では、出会い、付き合い、同棲し、カップルの絶頂から、徐々に価値観の相違ですれ違い、別れを経ていくという時系列なんだけど、
『ちょっと思い出しただけ』ではその逆。
別れてから、過去を振り返る。終わりから始まりを。
そしてそれが断片的だからこそ、めちゃくちゃリアリティを感じた。
今までの王道の恋愛映画って、どこかキラキラしていて、そもそもキャストも美男美女、大体三角関係か、四角関係、ヒール役が出てきて、揉めて、別れて、互いの大切さを知って、よりを戻す、でハッピーエンドな作品が多くて、the映画を観ました感が強い。
どこか、別の世界の話。
理想的な空想というか、よくも悪くもエンタメなのだ。だからこそ、その世界線に妄想として浸ることも出来るというが。
でもこの作品は、男女が別れて、互いがそれぞれの人生を前向きに生きているわけではないという所であったり、断片的に記憶を思い起こして、誰に語るでもない、人知れずそこに浸って、戻らない過去と折り合いをつけて、今を生きている所にリアルさをひしひしと感じたし、共感した。
恋愛をしたことがある人なら、一度は経験したことがあるのではないかという点から、これは私達の物語だ、と思わせてくれるものを感じた。
折り合いをつけて今を生きる(現実を見据えて)それがわかってしまう、物分かり良く理解できてしまう自分というところも、なんだか大人になったようで、切なさが倍増した。
大人になりたくないわけではない、むしろ大人になって年を重ねる事に楽しみな方が多いが、大人になることで、また一つ孤独に強くなってしまう自分がいるというか、情熱的で、衝動的な所と対極を歩んでいる気もして、寂しさを少し覚えた。
そして、鑑賞後もその余韻に浸れる所が邦画の良さの1つであると思う。
全てを台詞で説明しない所、場面カットで見せて観客に察知させる所、あるいは想像させるところであったりが、余白となって、鑑賞後の余韻に繋がる作品になっていた。
劇中に刺さる台詞がいくつかあったのに、あやふやにしか覚えてないから2回目鑑賞後に追記していこうかと。
そして言わずもがな、主演の2人が本当に最高だった。
表情で魅せてくれた。
声の抑揚、間のとり方、演出もあるのかもしれないが、手の使い方1つとっても、ああ…って思わせてくれた。
その他のキャストにも、尾崎世界観さん(主題歌も担当、劇中も歌ってました)
特に成田凌さん、市川実和子さん、永瀬正敏さん、國村隼さんと実力派揃いで、とてもナチュラルな演技をされていて、さすがの一言。
監督の松井大悟さんは監督でありながらも、脚本も演出も俳優もこなす、いわゆるハイブリット型な今時人なので、今後の活躍にも期待したい。
配給元の東京テアトルさんはこういうエモめな作品が多いから(花束も同じ)引き続き我々をエモ気散らしてください(意味不明)
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