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秋のソロライド旅|DAY01|Sendai-Sakata【往路編-前半】

10/23(土)4:30 am、日の出がほぼ6:00頃となる季節の仙台で、市民薄明も始まらない暗い曇り空の中で2日間のライド旅はスタートした。

今回の往路ルートは主に6つのセクションで構成される。まずは往路編前半として、SECTION 03、鍋越峠のダウンヒル区間を終えたパートまで。

01全体

SECTION.01|仙台-加美町

前夜はお酒は控え、ぐっすり寝すぎないようにソファで仮眠するに留めた。3:00頃から準備を始め、4:30に予定通り家を出発。

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仙台も早朝に雨予報が出ていたので家を出た時点で雨に濡れることを覚悟して秋冬に使う手袋とシューズカバーを装備して上半身はレインウェア。下半身はロングタイツにビブを重ねただけだったので雨装備としては結果的に準備が足りなかった(雨の度合いの想定が甘かった)。

走り出してみるとまだ仙台市内は降雨は見られず道路もドライコンディション。県内の通過先の加美町などで午前中から日中にかけて雨予報が出ていたのでいずれ濡れることになるのだろうと思いつつも、どれくらいの時間雨に濡れずに走り続けられるのか、早めに走り抜けたい気も逸った。

15kmほど走って大和町あたりからパラパラと降雨を確認。やがてしとしとと降り続けるようになり序盤で雨と付き合っていくことを覚悟する。

30km地点を過ぎて色麻町の田園風景を眺めながら北上していく道程はすでに路面が完全ウェット。タイヤが水をキャッチして泥はねするくらいにはひたひたに濡れ始める。そんな雨模様の中、東の空には朝焼けの美しい空が。西の空には満月が少し欠けたくらいの丸い月が見える。そして進行方向の北西の空は厚い雲に覆われ、進むにつれて西の空には大きな虹がかかっていた。

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仙台から北上して加美町を経て鍋越峠に至るルートは、今年の8月に友人と走っていた。本来ならその同じルートが秋に移り変わった様子をしみじみと味わいながら山形へのロングライドの入り口となるはずだったが、序盤からかなり雨の歓迎を受けてしまう形になりその先が思いやられた。

40kmを過ぎて雨風ともにさらに強まり不安感は募るものの若干西の空が明るくなってきたのを見て雨が上がる気配を感じる。ここからは鍋越峠のクライミングのセクションに入る。

SECTION.02|鍋越峠クライミング

予想通り空は次第に明るくなりすっかり空は青空に。雨で濡れた路面がキラキラと輝く美しい峠の上りが始まった。

峠への上り区間が始まるとその序盤に道路上に温度表示がある。いつもこの表示を自分の中で鍋越峠のスタート地点と認識していて、この日の表示は「6℃」だった。数字で突きつけられると冬か?と思うほどの気温だが、既にここまで十分濡れているにも関わらず空が晴れ渡ったことによってか、なぜか6℃ほどの寒さを感じない。既に感覚が麻痺しだしているのか、旅の高揚感がそれほどに高いのか定かではないがとにかく不思議と寒くて辛いという感覚がなかった。

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鍋越峠の宮城側は勾配が緩く、ほとんどいわゆる「ヒルクライム」をしている感覚がないまま県境の峠に到達する上り区間だ。近年道路も綺麗に整備されかつて「酷道」扱いだったとの噂はその名残もほとんどない。

路面はずっとウェットコンディションが続いているので泥はねなど全然気にならないレベルで進んでいくのだが、あとはこの一時晴れがどれだけ続くかということが焦点である。雨に降られずに峠のピークまで抜けられたら…と思いつつも秋の深まる木々と、朝日と雨水で彩られた風景に心を奪われ、少し気持ちが落ち着いた時間帯ではあった。

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峠のピーク地点でおよそ65km地点となるのだが60kmを過ぎたあたりだったと思う。空が一気にまた暗い雲に覆われ始め、またポツポツと雨が降り出したと思ったら一気に本降りの雨となった。晴れに気分を良くしGoProで映像を撮っていたカメラも慌ててバックポケットにしまい、ひたすら雨に打たれながら峠のピークを目指した。

この上り区間は何度か走っているのでピークまでの全体像は把握している。雨に濡れながらももうすぐ上りは終わりだからと案外落ち着いて走ることはできた。

やがて左に大きくカーブするスノーシェッドが見えると鍋越トンネルが現れて今回の往路ルートの最高標高地点となる。今年の8月に来た時はそうしたが、このトンネルを回避して旧道を走るとさらにもう少し上り区間を経て尾花沢市営の「宝栄牧場」に至る。天気さえ良ければのんびり眺めていっても良いのだが…この雨に寄り道は諦めることにする。

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この地点で時刻は8:00am。朝早めに出発したので時間の余裕があるのは安心材料の一つである。この先の行程でトラブルが発生した場合に時間のつぶしがきくし、目的地の酒田に早く着く分には滞在時間をゆっくり過ごせるのでスタートを早めたのは良かった。

SECTION.03|鍋越峠ダウンヒル

さて、問題はここから。何度か走ったことのある鍋越峠だが山形側へ下ったことはない。いつもは上ってきた部分を復路にして下っていくだけ。唯一宝栄牧場まで上ってから銀山温泉方面へ下るダウンヒルをして山形側へ下ったことはあるが、この鍋越トンネルの向こう側へ下って走ったことはないということだ。

下りにはトンネルが2箇所とスノーシェッドが数箇所あることは事前に把握している。宮城側の上りを考えると、山形側もそこまで急な下り勾配ではないと予想しつつも、雨の路面状況とハンドル操作、下りの冷えなどを考慮してとにかくゆっくりと下ることを優先してダウンヒルを始める。トンネルを過ぎたあたりに道路上の気温表示があり、この時点で「5℃」の表示。宮城側の上りスタート時の6℃と数字上1℃しか違わないのだが、降り止まない雨に体感気温はさらに低く感じられた。

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こういうコンディション下ではディスクブレーキは安心だ。厚い手袋をして濡れたハンドルを操作していても小さい力で確実に制御してくれるのは心強い。とにかく早く下り切れるとようにと思いながらも、事故に注意して集中して走っていく。下りの景色を楽しむ余裕なんて当然なく、完全に下りセクションのすべてを降雨に見舞われながら山形側、尾花沢市の市街地へと降り立った。

下りでは体が冷える。峠のダウンヒルが終わって尾花沢市の人里に入ってからしばらくは体を温めるため脚を回したがかなり冷え切ってしまった。ようやく最初のコンビニを見つけて駆け込むもまだ季節的に暖房が入っているような時期ではなく、室内に入っても暖かくなってウェアが乾くようなことはない。それでも雨風がしのげるだけでだいぶ楽なことは確かなのだが…。

ようやくありつけたホットコーヒーで温まろうと思ったが、カップを持つ手が震えてコーヒーがこぼれてしまうほど。手だけでなく体がガタガタと震えてじっとしていられない。ちょっとこれはまずい冷え方をしてしまったんじゃないか…と不安が強まるも、とにかくじっとしていても温まることはないので走って体を温めるしかない。

約80km地点を通過、まだ山形の内陸に下ったばかり。目的地の日本海はまだまだ遠い。

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