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ゴミの城〜025~父親の命日

これまでのお話

仕事が休みの日に、少しだけゆっくりと過ごしてから家のドアを開けると、太陽が何時間も前から活動をしていて、外に出かけることを躊躇わせる。

先日は父親の命日だった。当日は仕事で都合が悪く、休みの日に実家の近くのスーパーで父親が好きだったポテトチップスなどを買って、太陽の光をサングラスで遮りながら実家へと出かけた。

実家へ着くと入れ違いに兄が買い物へと出かける。父親の遺影の前には何も置かれていなかったので、父の命日など誰も気に留めなかったのだろう。兄に声をかける。

「昨日、お父さんの命日だし、先週はお父さんの誕生日だったから、何か買ってきなよ」

兄が出かけると設定温度が少し高めで、ほんのりとしか冷えていない二階の母親の部屋で留守番をする。いつも母はベットに横になったまま。声をかけても頷くだけで言葉は発さない。少し前に弟の奥さんが亡くなったこともわかってはいない。うちは男の兄弟しか居なかったから、母は弟の奥さんを可愛がっていたのだれけれども……。

兄が帰ってきて一階に降りる。父の遺影を覗くが兄が線香をあげた様子も何かを供えた様子もない。

台所に大きなダンボールがあり、兄に聞いたら「レンジが壊れた」そうだ。箱には有名なメーカーの『オーブンレンジ』と書いてある。オーブンなんか使わないから安い電子レンジを買えば良かったのに……。シーリングライトの時もそうだったけれど……。

喧嘩になると嫌だからそれには触れなかった。

膝が痛いので、窓を拭いたり簡単な掃除をした。家に帰る前に子供から連絡があって一緒に映画を観ることになった。先週、家の駐車場に車を止めたときに、近くの公園から盆踊りの音楽が聴こえてきて子供を誘ったのだが、あっさり断られたので今回は一緒に出かけることになって少し嬉しい。上映時間が夜の八時から十一時までと遅かったが「ミッション・インポッシブル」の新作を観てきた。とても面白かったので帰り際に、子供と感想を話しながら帰る。

冒頭に「父親の好きなポテトチップスなどを買って」と書いたが、スーパーで買物をしながら「父親の好きだった物」を考えたときに「湖池屋のポテトチップスのり塩味」「サッポロ一番塩ラーメン」「明治の板チョコ」くらいしか浮かばなかった。父は食べ物の好き嫌いが多かったし……。

身内でもその人のことで知っていることなんか、ほんの少しだけ。父を知ろうとしなかったのか? それとも結局、人とはそんなものなのか? 

僕にも子供が三人いる。長男は家を出て一人暮らし、次男と三男とは同居はしているが、一週間あっても殆んど会わない時も話さない時もある。

映画を観るのが好きなので、たまに子供と一緒に家で映画を観ることがある。同じものを一緒に観て子供はどう感じるのか? 観終わってから5点満点で何点かを聞く。

今はそんな時間がとても尊い。

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