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サンタクロース

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クリスマスのおはなし
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#クリスマスプレゼント

サンタクロース~04.フランとカエル

4 フランとカエル    十二月に入った、ある日の事でした。学校も数日前から休みになり、トトは朝からフランと遊んでいます。といっても最近はフランの調子があまり良くないので、ベッドで横になっているフランにトトが話しかけるといった感じでした。  フランがトトにこう言いました。 「ねぇ、おにいちゃん。クリスマスプレゼントにカエルは欲しくなくなったの……」 「今度は、何が欲しくなったんだい?」 「パパとママ!」  明るく答えるフランに、トトは何も言い返す言葉が浮かびません。トトだって

サンタクロース~05.小さな、えくぼ

5 小さな、えくぼ  クリスマスの前日、深夜から降り続いていた雪が辺りを真っ白に染めました。そっと息を吐き出すと、細長く伸びていく冷たい空気。トトのほっぺたがリンゴのようにツルツルと赤く光っています。 「フラン、見てごらん。雪が降っているんだよ!」  トトはフランの部屋に入ると、フランに声を掛けて自慢げにカーテンを開けました。 「ねぇ、起きてごらん」  フランは返事をしません。トトが不思議に思いベッドをのぞき込みます。 「ねぇ、フラン?」  するとベッドの中で、フランが目を

サンタクロース~06.見知らぬ老人

6 見知らぬ老人  妹のフランを失ったトトの悲しみは深く、あの日以来、感情をほとんど外に出さなくなりました。笑っていてもどこか寂しそうでした。祖父母はそれをとても心配しましたが、いつしかトトは 『他人に深入りしたり、期待しなければ、ガッカリする事も悲しむこともないんだ』  と思うようになっていったのです。本当は、それはとても悲しい事なのです。 それでも、祖父母と居る時は安心できたし幸せでした。二人も今まで以上にトトを気にかけてくれたからです。  それから、当たり前のようにト

サンタクロース~07.トトの友達

 7 トトの友達  公園で老人に会ってから半年が過ぎた頃です。トトの家の隣に新しい家族が越してきました。その家族は父親が居なくて、母親と八歳になる女の子の二人暮らしでした。  二人はまず始めに、近所の方に挨拶をして回りました。最初に出かけたのは隣のトトの家です。 「こんにちは」  トトの家のベルが鳴るなんて久し振りです。トトは少し驚いたのですが、ゆっくりとドアを開けました。 「こんにちは、隣に越してきたポリー・ランドールと言います」  痩せた人の良さそうな顔をした女性がお辞