新型コロナワクチン先行接種の善し悪しモヤモヤ

前湖南市長がFacebookで全体に公開している記事なんです。マスコミは、こういう事を知った上で報道して欲しい。

【首長のワクチン接種問題考】
 今朝の京都新聞が「滋賀の5市町長ら接種 医療従事者枠・キャンセル分」と報じている。ここ数日、マスコミが報じ続けている新型コロナウイルスのワクチンについてである。

 もとはというと、ワクチン接種については、平成29年9月12日最終変更の政府「新型インフルエンザ等対策行動計画」に定められており、プレパンデミックワクチンとパンデミックワクチンに分け、新型インフルエンザのプレパンデミックワクチンについて記述されている。

 ここではプレパンデミックワクチンが対応できる新型インフルエンザを仮定して規定されているが、新型コロナウイルスについても、すでにパンデミックワクチンが開発された現状においては、この計画に準じても差し支えないはずである。

 計画では、ワクチン接種については、「特定接種」と「住民接種」に分けられている。

 特定接種とは、医療の提供、国民生活および国民経済の安定を確保するために行うとされる。接種の対象者は、医療関係者、国民生活および国民経済の安定に寄与する業務従事者、対策に携わる国家公務員と地方公務員とされている。

 国民生活および国民経済の安定に寄与する業務従事者は、国立病院、日銀、日赤、NHK、空港、JR、郵便、NTT、日本医師会等各種団体、電気、ガス、海運、航空、鉄道、バス、通信など社会インフラに関わる事業者、介護・福祉事業者とされており、特例的に国民生活の維持に必要な食料供給維持等の観点から、食料製造・小売事業者なども特定接種の対象となり得るとされる。

 これら、特定接種の優先順位については、公益性・公共性を基準として、①医療関係者、②対策の実施に携わる公務員、③国民生活および国民経済の安定に寄与する業務従事者、④それ以外の事業者(すなわち食料製造・小売事業者など)の順が基本とされている。

 一方、住民接種は、①医学的ハイリスク者、②小児、③青年・若年者、④高齢者に区分され、重症化、死亡を可能な限り抑えることに重点を置いた考え方、我が国の将来を守ることに重点を置いた考え方、重症化、死亡を可能な限り抑えることに重点を置きつつ、あわせて我が国の将来を守ることにも重点を置く考え方が選択肢として示されている。

 この計画に沿えば、首長は自治体対策本部長であることから、特定接種の医療関係者が終了すれば、次に首長の順番が回ってくるはずだが、先に住民接種が入ってきたことになる。

 この接種順の変更は、計画には『危機管理事態における「特定接種」と「住民接種」の二つの予防接種全体の実施の在り方については、発生した新型インフルエンザ等の病原性などの特性に係る基本的対処方針等諮問委員会の意見を聴き、その際の医療提供・国民生活・国民経済の状況に応じて政府対策本部において総合的に判断し、決定する』とあるように、基本的対処方針等諮問委員会の意見を聴いて政府対策本部で決定することとされている。

 すなわち、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく新型インフルエンザ等対策行動計画に所定された接種順の決定は政府対策本部の権限であり、かつ、責任であるが、政府対策本部がその説明責任を果たさないため、現場が混乱しているといえる。

 政府対策本部が説明する責任を果たさないのに、基本的対処方針以外に接種するなら「住民に説明がつく対応をしてもらいたい」という厚生労働相の発言はもっての外である。だからといって、説明もせずに医療従事者枠と称して任意に接種をするということもいただけない。

 滋賀県内では、野洲市長と湖南市長が、医療従事者に当たるから、自分が経営する病院で余ったからと苦しい理由を付けて接種しているが、行動計画上は、医療従事者と対策本部長たる地方公務員は厳然と分けられている。行政を預かる身としては、手元にワクチンがあるから打ったでは、市民の不信を買う行動となるであろう。甲良町長と竜王町長も同様であるが、72歳の草津市長が高齢者向け接種の予約手順を踏んでワクチン接種を受けたというのは微笑ましく、かつ、市民感覚を感じられる。

 政府は、医療関係者に続いて、対策の実施に携わる公務員に対する接種を促進すべきだろう。自民党から自衛隊に優先接種をと指摘されている時点で、優先順位を誤っているのではないか。

 京都新聞はこのあと『首長「先行」 さらに判明』と記事を追加しているが、こうした一連の報道が行政に対する不信感を増大させるだけであってはならない。京都新聞に限らず、全国のマスコミが同じ行動をしているが、本来であれば、こうした混乱の原因や解決策を提示してこそ、ジャーナリズムといえるのではないか。

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