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データがネットワークを流れる仕組み - 第一章・パケット通信とインターネットの誕生 -

少し間隔が開きましたが、久しぶりにIT系の話題を書きたくなったので書きます。今回は、いつも通り何度かに分けて今日扱うデータがネットワーク、インターネットを流れる仕組みについて書きます。記述は下記の順で行っていく予定です。

  • インターネット誕生までの歴史的な話

  • 「層」としてのネットワークの構造

  • TCP/IPとイーサネットの深掘り

  • ワールドワイドウェブ(WWW)の仕組み

初回である今回は、インターネット誕生までの歴史的な話を私なりに時系列を追いながら書いてみたいと思います。


パケット通信の始まり

誤解を恐れずに言えば、今日ネットワーク上を流れるデータの一単位を「パケット」と言います。パケットは、送るべきデータをある決まった単位に分割(小分け)した一単位です。パケットは受信側でアプリケーションのデータとして組み立てられます。

パケット通信は、1960年代にポール・バランとドナルド・デービスという二人の研究者によりほぼ同時に考案されました。二人の目的はそれぞれ異なりましたが、共通で取り上げられた概念として、「中央を持たない」「データは小分けする」「小分けしたデータはどんな経路を辿っても構わない」などの点が重要なこととして挙げられると思います。それまでの通信は回線交換で、中央に集線装置があり、通信を行う「ノード」同士が電気的に接続している必要がありました。

これらの概念は、戦時下のような特殊な条件で広域的にネットワークが損害を受けた場合でも、通信を継続して行うことができるネットワークの構築が目的の一つだったと言えるかと思います。

原型としてのARPANET(アーパネット)

米国国防総省の研究組織としてARPAという組織があり、この組織は非軍事目的を含めて先端的な各種の研究に資金提供などの支援を行っていました。このARPAにより、1967年、回線交換に代わる「分散型」のネットワークとして、先述のパケット通信によるARPANET(アーパネット、Advanced Research Projects Agency Network)の研究プロジェクトが開始されました。ARPANETは、実際に1969年に構築され、当初は4つの大学や研究機関を接続する、科学者同士がデータを共有することを目的としたネットワークでした。

パケット通信の採用により、ARPANETは中央となるノードを持たず、また、仮に中継器や回線などに障害があった場合でも、それを迂回して端末同士が通信することが可能なネットワークでした。

TCP/IPとイーサネット

ARPANETは、開始当初は「NCP(Network Control Program)」という通信規約(プロトコル)を採用していました。ここで、1973年と1974年に、今日のインターネットを構築する上で欠かせない幾つかの技術が開発されます。1973年に、ベル研究所で「Unix」オペレーティングシステムが開発されます。1974年には、今日の主要なインターネット・プロトコル(スイート)である「TCP/IP」、そしてLANの主要な通信規格である「イーサネット」が開発されます。

TCP/IPは、正確にはTCPとIPという異なる役割を持つプロトコル(通信規約)からなるプロトコルのセット(プロトコル・スイート)です。TCP/IPの仕組みについては後述しますが、TCP/IPによりより簡潔で信頼性の高い通信が実現しました。Unixは、同じくベル研究所で開発されたC言語で書かれ、様々なシステムへの移植が容易であったことから広く普及し、カリフォルニア大学で開発された「4.2BSD」というUnixに最初のTCP/IPが実装されました。イーサネットは、今日のLANでも用いられている通信規格の一つです。

Unix、TCP/IP、イーサネットは、現代のインターネット通信を支えている重要な技術基盤といって過言ではありません。Unixの普及とともに、TCP/IPとパケット通信は世界的に普及するようになりました。このとき、事実上、「インターネット」の仕組みが出来たと言えます。

WWW(ワールドワイドウェブ)

今日、インターネットで情報を参照する主要な仕組みである「ワールドワイドウェブ(ウェブ、WWW)」は、1990年に欧州の欧州原子核研究機構(CERN)のティム・バーナーズ・リーにより考案・実装されました。最初に実装に用いられたコンピューターは「NeXT」というシステムで、Appleの創始者・スティーブ・ジョブズにより開発されたものです。世界初のウェブ・サーバーとブラウザー(ユーザーエージェント)がティム・バーナーズ・リーにより開発されました。

初期のWWWは、テキスト(文書)のみを扱うものでしたが、1992年にイリノイ大学のマーク・アンドリーセンにより画像を扱えるブラウザー「NCSA Mosaic」が開発されました。NCSA  Mosaicは無償で公開されたことにより爆発的に普及し、この時、今日のウェブ閲覧の仕組みがほぼ揃った、ということが出来ます。マーク・アンドリーセンは、その後Netscapeを起業し、Netscapeのブラウザーは現在、Firefoxとして今日も利用されています。


初回は以上となります。続編では、次回、ネットワークの「層」の話題について扱います。通信は層(レイヤー)構造で成り立っているため、その仕組みや構造について書く予定です。本稿もお付き合いいただきありがとうございました。


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