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奈良に行ったり、宇宙に行く /日記

1年ぶりに奈良の若草山に行った。

ここのところはすっかり足が遠のいていたものの、晴れた日の夕焼けを眺めているとつい若草山の山頂の夕日を思い出してしまう。
久しぶりに行って元気になりたいところだったが、この日は夕方からあいにくの曇りであった。上手くいかないから人生はたのしい。

途中までは晴れていた

しかし、この日の僕は大変賢かったので、大和西大寺にて温泉宿を取っていた。
温泉!和室!ワビサビ。もっとも、素泊まりであるが。溜め込んでいた楽天ポイントが火を噴いた。
GW突入の前日を狙ったのが功を奏し、温泉は貸切であった。
温泉は気持ちいいが、大浴場の人口密度によってその快適さは大きく変化する。裸眼に全裸で他人に囲まれるのは、おのれの無防備さに不安になってしまう。
温泉は貸切状態にて初めてその魅力を最大限に発揮する施設なのだ。

あまりにも貸切だったからか、
夜風呂と朝風呂、それぞれで警備員さんが露天風呂までやってきて、僕に声をかけてくれた。
「いい湯加減ですか、ゆっくりしていってください」
「朝風呂はどうですか、気持ちいいでしょう!」
こういうNPCかと思った。村上春樹の品川猿は、この手のシチュエーションから連想されて書かれたのかもしれない。


DMMが30%オフだったので、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読む。
少し前に『火星の人』を読んでいたこともあり、すこし冷静に読めてよかった。作風の事前知識がなければ、あまりの面白さと興奮で頭がおかしくなっていたと思う。
ネタバレをしないで日記で簡単に書くのが難しいので、物語の詳細は一旦傍に追いやる。
しっかりと宇宙空間に滞在して、またこの6畳間に帰ってきたような、そういう体験のある読書であった。

小学生低学年の頃、『海底二万里」を一気読みしたときの記憶をなんとなく思い出している。あの頃の僕には、潜水艦の計器類や、不自由で自由な船内、ひんやりとしたガラス窓、窓の外の風景が、目の前に見えていたように思う。
狭く息苦しい潜水艦の中にいる抑うつ感も、水中を歩くスーツのべったりじめじめとした不快感。
物語から想起される五感を使って、登場人物たちと共に聞きに迫り、空想上の奇跡に感嘆する。
そういった、楽しい読書の原体験を思い出しながら読んだ。

題材の面白さよりも、話の構成や舞台設定の巧みさなど、メタな部分から語りたくなってしまう。たぶん、ろくに科学を理解していない証拠だろう。
こういった作品を、中高生で読める人々が、少しうらやましいと思っている。

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