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しおり目当てで行ったら、本屋の沼にはまった話

 読み切れないほど、本を買ってしまった。

 知り合いから、今だけ「木のしおり」がもらえる本屋がある、と聞いた水曜日。明日はせっかくの祝日だし、読みたかった本があるかもしれないし、久しぶりに本屋に行こうと眠りについた。なにより、人間、「今だけ」という言葉には、めっぽう弱い。

 さて、その祝日。普段は古本派なので、まっとうな(?)本屋に入ると、ちょっとワクワクする。札幌市内の「コーチャンフォー新川店」に向かうと、休みだから人がいるわいるわ、とにかくいっぱいいる。わらわらとしている。次の瞬間には、僕もその「わらわら」の一人になって本棚に吸い寄せられていった。

 本屋って不思議だ。あっちこっちの陳列棚にいろんな本が並んでいて、興味のあるゾーンにふら~っと入っていったつもりが、気が付くと店内をうろうろしていて、なかなか抜けられない。船乗りたちを悩ませた、セイレーンの歌声みたいだ(でも事故だけは勘弁)。

 あ、この本置いてある。
 あの本はないけど、へー、こんな本があるんだ。
 この作者、読んだことないな・・・
 あれもこれも気になるけど、買おうか買うまいか・・・

 そんな贅沢な逡巡を5分したつもりが、5分が10分になって、10分が30分になっている。

 気が付くと、読みたかった作者のものを一冊・・・で、済むわけがなく、七冊も抱えてレジに並んでいた。本屋には、きっと魔物が棲んでいる。こういう時に感じるのだ。

 さて、興味のあった「木のしおり」、レジで頼むと、ご丁寧に封筒に入れて渡された。小さいころ、おもちゃ屋さんの軒先で、小銭を握りしめてガチャポンを回した記憶がよみがえってくる。ちょっとドキドキする、あの瞬間。

 家に帰って、わくわくしながら封筒を開けると、茶色とうすーい黄色のコントラストが目についた。封筒を逆さにすると、ずずっ、としおりが飛び出てきた。ご丁寧に「スギ」と書いてある。

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 買ったばかりの本に挟み込むと、なんだかワクワクしてくる。

 街路樹がどんどん黄色く染め上げられていく秋を見つめながら、たくさんの本に囲まれる幸せ。

 せっかくだから、喫茶店で、おいしいコーヒーを片手に読もうか。

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