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年中休業うつらうつら日記(2021年10月30日~11月5日)

コロナの流行が驚くほど弱まってきましたね。3回目のワクチンの話もちらほら聞こえてきて、さて人類は今回の大疫病を乗り越えられるでしょうか。インフルエンザの予防接種も打ちつつ、用心しながらもうあと3カ月弱になってしまった千駄木生活を楽しみたいと思います。

21年10月30日

おとといミセスAに7個バームクーヘンをおみやげに差し上げ、その後、私も食べまくっていたら、息子のおやつに出してかつ自宅のカノジョの分まで持って行ってもらう、って計画が暗礁に乗り上げかけてる。
「今日は土曜日だからねー。確実におねーさんいるねー♪」と即席の鼻歌を歌いながら谷中ぎんざを抜けてお店へ。
やっぱりいた~!

「人にあげまくって、息子の分がなくなりそうなんです。あわてて買いに来ました。15個ください」と言うと、
「いつもいろんな方に広めてくださってありがとうございます。これを焼いてるマスターがね、来月からこれまで紅茶のは日に40個焼いていたのを100個にするって張り切ってました」
おっとっと、危うく店の経営を傾けてしまうとこじゃないか。

「でも、1月末からは私、引っ越してもう来られないんですよ」と言ったら、おねーさんは見る見るしょげてしまった。
「そうでしたね。そうかぁ…」
私に名残を惜しんでいるのか店のバームクーヘンの残り率を考えているのか、にわかに難しい顔してる。
ごめんなさい、しょせん旅人なんです。

今日はおススメの生チョコ(500円ナリ)も買う。
生キャラメルはいつも試食用の小パックをおまけしてくれるんだが、生チョコには試食用がないそうだ。
でも、おねーさんイチオシのこの店の生チョコなら食べてみたい。

「引っ越す時には1週間以上前に予約して、『切り分けてない長いバームクーヘン』を買いますからね。その時はぜひ、谷中暮らしの記念に一緒に写真を撮ってください」
引かれるかと思ったら、「まあ、写真にまで。嬉しいです」といい感じ。
「その日万一いらっしゃらないといけないから、今日撮っちゃってもかまいませんか?」と舌の先まで出かけたが、ここはひとつ、落ち着いた大人の雰囲気で引き下がろう。

1人でいろいろ考えてくたびれたところに、町は仮装した子供たちがいっぱい歩いてる。
どこにこんなに子供がいたんだろう。
年長さんから小学校低学年ぐらいの女の子たちには黒いゴスロリが人気らしい。
年少の男の子たちは、もうみんな鬼滅。
煉獄さんの炎ひらひら印のマントをまとった男の子が嬉しそうに走って行ったので、保護者らしき女性に、「ハロウィンですが?煉獄さんですね?」と尋ねると、嬉しそうに「もう、大好きで」。
私もです、とまで言ってしまうとなんか不審者案件になってしまいそうなので、あくまで無害な一般人のおばさんとしてにこやかに立ち去った。

息子が来たのは「何でもありライブ」にインプロコントで出演していた関係で0時。
「あれっ、部屋の様子がだいぶ違うね」
うん、ソファ買ったしテレビが50インチのテレビが65インチになってるし見慣れない二段式のゴミ箱も導入したからね。
「さすがにこの部屋(狭い)で見ると、テレビでかいな―」との感想。

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昼間買っておいた「ビビンバ肉丼」弁当をみんなでひとつずつ食べ、お風呂はあとで入るという息子と本格的におしゃべりに入る。
人の心について、敬意と誠意について、「人を笑わせる」という職業について。

「オレ、どうしてコントやりたいんだろうって自分の心を深く掘って行ったらさ、とんでもないもの見つけちゃったんだよ。オレが子供の頃から、お母さんは具合が悪くて、いつも辛そうだったじゃない?オレはね、お母さんがいつ死んじゃうか、心配でならなかったんだよ。だから、そんなお母さんを笑わせて楽しくさせてあげたいってすごく思ったんだよね。それがオレの原点」
なるほど、ある種の人助けか。

息子「もちろんやっていくうちに動機もやりたさもどんどん新しい発見があって変わっていったよ。でも、オレの心の一番奥にある動機はそれなんだと思うなぁ。笑いで救いたい、なんて傲慢な意味じゃなくて、人間、楽しければ笑えるんだ、そして楽しい状況は作れるんだ、ってことだと思う」
私「うちは笑いの少ない家だった?」
息子「多くはなかったね」

うーん、それはきっと私が理屈っぽい落とし噺や洒落やパロディは好きだけど、単純に子供を笑わせてあげるような朗らかさ、無邪気さをいたく欠いていたせいだと思うよ。
息子がある程度大きくなってからは冗談も言えたし、笑い合いたいと思ったもん。
ただ、今度はあっちの方が反抗期に入っちゃって、笑うどころの騒ぎじゃなかったからなぁ。

息子「でも、そんな僕らが今こうして真面目に過去を振り返り、好きな映画を一緒に観て笑えるってのはすごいことだと思う。今共有できてるものはとっても多いよ。オレも反抗期が長くてすまなかったけど、そこを抜けて大好きな人と幸せに暮らしていて、お母さんも心臓の手術をしたり薬を減らしたりして少し健康に近づいた。『今』はとても素晴らしい時期だと思う」

珍しく「オレ、酒もらうわ」とお徳用料理用赤ワイン紙パックからどぼどぼとコップに注いで、せいうちくんにも「まあ、飲みなよ」とか言って飲ませてる。
もう遅いのに、
「2時まで話そう、ねっ?」と熱心で、それすらも「もう15分延長ね」と言ってきた。
よっぽど楽しいかよっぽどやけくそになってるのかどっちかだろうな。
結果として大興奮してるのはまあ確かなところだ。

息子「お父さんは、おばあちゃんの何がそんなに怖いの?」
せいうち「さあ、小さい頃から怒鳴られっぱなしだから、もうよくわからないや。勉強しないとものすごく怒られたね」
息子「勉強、イヤだったの?」
せ「うん、すごく」
息子「じゃあそう言えばいいのに」
せ「言える雰囲気じゃないんだよ。もう、一切スキがない」
息子「(とつぜん声色を変えて)『どうして勉強しないのっ!』」
せ「勉強きらいだから…」
息子「『今頑張っておけば、あなたなら頂点大学に入れるの。そうしたらお金もたくさんもらえるし、世の中の人にも尊敬されるの!』」
せ「お金もいらないし、尊敬されなくていい…」
息子「『何言ってるの。お金が一番大事なのよ。好きなことができるし、好きなものが買えるの。お金のない生活は、みじめなのよ』」
せ「今、楽しい方がいい…」
息子「『そうやって努力を怠ると、ろくな人間になれないわよ!あなたは特別な人なんだから、特別な人生を送るの!』」
せ「普通がいい…」
息子「(憑き物がおちたように素に戻って)もうやめよう。お父さん、本気でおびえちゃった。最初にオレに『勉強がキライ』って言った時の目、子供の目になってたよ。いやぁ~、言葉って恐ろしいね~」

こんなひと幕もあったが、実に楽しく和気あいあいとした時間が流れた。
カノジョとの結婚を前提とした同棲を認めてもらうようカノジョのお母さんにお願いに行く件も、今年中にはきちんとしたいそうだ。
来年1月28日を超えると、あなたの住民票が宙に浮いちゃうよ。
ちゃんと彼女と同じ住民票を胸張って取れる状態になってね。

せいうちくんが気に入って選んだフランスベッド製のソファベッド(単に背もたれとひじ掛け部分が可動で角度をいっぱいに変えれば平たくなるってだけの代物だけど)を開いてタオルケットをかけ、ベッドを作ってやってる間に、息子はお風呂に入ってきた。
「バブは何入れる?森の香り、ミカンの香り、花の香り、いろいろあるよ」と問うたら、
「素うどんで」と短い答え。
なにも入れないのが好きなのね。

もう3時過ぎてるけど明日はいろいろ動くよー、早起きするよーと声かけて、お互い寝た。
「言葉を大事にするお母さんを尊敬してるし、大好きだよ。お母さんの心の穴はオレも手伝ってふさいでいくから、元気で長生きしてね」と言われ、涙そうそう。
興奮して眠れないじゃないか!

21年10月31日

めずらしく朝8時にひょこっと起きた息子と、買ったばかりの「ヘルシオ ホットクック」が夜のうちに作っておいてくれたカレーで朝ごはん。
「少し水っぽかったな。レシピより水を少なくするべきだった」とせいうちくんが反省してたら、
「でも、うちのカレーの味だよ。なつかしいし、おいしい」と息子の嬉しい言葉。

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食後に朝風呂に入りたいとはこれまた贅沢な。
しかし時をかまわず風呂に入るのが好きなのは私も一緒なので、快く沸かしてやる。
ずっとペンディングだった虫プロの「クレオパトラ」をやっと観た。
奇天烈な作品だが、大画面テレビで見るとさらにひとしおである。

とりあえず息子の荷物は置いて散歩に行く。
主たる目的は選挙だが、他にもいろいろ回ろう。
まずは裏山のてっぺんにある小学校の体育館で投票。
「小学校って懐かしいな。平均台とかさ」と息子。

図書館に寄って、せいうちくんは借りた本を返し、予約の本を受け取る。
少なくとも文京区では23区内どこの図書館にある本でも探し出して貸し出してくれるようだ。
23区内全部がそういうシステムかどうかは知らないが、少なくとも西の市部ではやってなかったシステムだ。
毎週10冊近く借りて、それを非破壊型のスキャナでずっとスキャンしている。
どうも読む量より撮る量の方がよっぽど多く見えて、せっかく自分用にデータ撮ったんだから少しは読めばいいのに、と思う。
まあ、これに関しては人のことは言えないんだが。
ただ私は、機械を替えて速くなったとはいえ1ページずつめくってスキャンしていく過程を見ていると、自分で買って裁断してザーッとスキャナに流し込む方が好きだ。

図書館をあとにして団子坂を下る。
「団子坂下」の交差点から少し登ったところに「乱歩」という喫茶店がある。
とても正統派の、昔ながらの「喫茶店」って感じの渋い店。
私「乱歩に『D坂の殺人事件』ってあるでしょ」
息子「ああ、縞の浴衣がどうこうってやつね」
私「あれの『D坂』ってのがこの団子坂なんだよ。だから『乱歩』って喫茶店があるんだろうね」
息子「へえ~、面白い」
私「通るたびに入ろう、入ろう、って思うんだけど、母さん初めての店とか苦手だからなかなかチャンスがない」
息子「じゃあ、今入ろうよ」
私「い、いや、今はまだ心の準備が…」
息子「時間もあることだし、入れるときに入っちゃうのが一番だよ。入ろう入ろう」

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こうして憧れと畏怖の対象の喫茶店に入ってしまった。
中は思った通りクラシックな雰囲気。
「かかってるの、ジャズだねぇ」と言った息子、
「お、灰皿がある。喫煙可なんだ、めずらしいねぇ。オレ、タバコ買ってくる」と飛び出していった。
「母さんにもあなたの1本くれる?」
「お母さんのは別に買ってくるから」とのセリフを残して。
彼のはマルボロ、私のはメビウスだからなぁ、強さが違う。自分用があった方がいいだろう。

やがてそれぞれのひと箱を持って戻ってきた息子に、
「ありがとう。たばこ代、払うよ。少し多めに払っとくね」と渡したのは250円。
息子の、掌の中の貨幣と私の顔を何度も交互に見ての困り顔で初めて気づいた。
うわー、すまん、いつもカートンで買ううえにペイ使うから、実際ひと箱いくらかをすっかり忘れていて、20年前の感覚に戻っていた。
大過去のマイルドセブンの金額を渡されて、息子も困惑しただろう。
あらためて、600円渡して一件落着。
いやあ、習慣って思わぬところで出るね。

せいうちくんはブレンド、息子はアメリカン、私はアイスコーヒーで。
他にはひと組しかお客さんはおらず、とても静かで落ち着いたたたずまい。
いい喫茶店だ。

またいろいろ話し込み、「乱歩」をあとにする。
次は谷中墓地だ。
せいうちくんちのお墓があることはまったく有名でなく、徳川慶喜や渋沢栄一の墓で有名。
息子から「どうして『けいき』って呼ぶの?」と素朴な疑問。
「難しい慶ぶと簡単な喜ぶを書いて『慶喜(よしのぶ)』って読むんだけど、音読みをすると『けいき』でしょ。歴史上の人物を音読みすることは結構あるよ」と言いながらまずは慶喜のお墓に一礼。
「わー、ホントに葵のご紋だー」と息子。

そのあとせいうち家の墓を見る。
「お父さんの知らない人の名前ばっかりの墓石が並んでる」と言うせいうちくんに、
「中央の新しい石碑の裏を見れば、あなたのおじいちゃんからおばあちゃん、こないだ亡くなった伯父さんの名前まで全部彫ってあるよ」と教えると、
「えっ、ホント?」と裏側を見に行く。
なんで嫁が夫の家の墓を説明してやらなきゃいかんのだ。

納骨か四十九日か、黒服の親族たちの一群らしき人たちを見たので、「どっちだろうねぇ」とささやいていたら、息子から爆弾発言。
「納骨ってのは普通の格好でいいんでしょ、GパンにTシャツとか。ほら、名古屋のおじいちゃんとおばあちゃんの骨を収めた時、オレ、走って水くみに行ったからよく覚えてる。普通の格好だった」

いや息子よ、あれは略式中の略式と言うか、私の実家はあんまり冠婚葬祭に繊細な方ではなかったと言うか…とにかくあれはノーマルじゃない!
孫2人で墓石の下を抜いてプラケース取り出して洗って中身収めて戻したなんて!
たとえ実状はそうでも、そこにいろんな儀式やしきたりがあるのよ。
お坊さんなりなんなり、宗旨にあった権威ある人を呼んで、開く手続きをきちんと踏んで、納骨したらまたきちんと閉じる儀式をするもんなの!
あああ、へんな例ばかり見ている息子、大丈夫か?
2年ぐらい前には友達の結婚式に呼ばれた(二次会じゃないよ、披露宴だよ)からって、「三千円ぐらい?ご祝儀袋?それなに?普通の茶封筒でいいんでしょ?」と言い放った。
私に聞かずに実行していたら、と思うと背筋が凍る。

朝倉彫塑館の前までは行ったが、時間が押していてちょっと見て行けそうにはない。
「また今度のお楽しみにね」と言いながら、「ほら、屋根の上見てごらん」と息子に促す。
上を見た彼は、今まさに跳躍せんとするかのような男性像を認め、
「今から飛び降りるみたいだね」。
もうちょっとましな言い方はないのかい。

すぐ並びのいつものバームクーヘン屋さんに寄る。
別に今、バームクーヘンには不自由してないんだが、大好きなおねーさんに「いつもおみやげに持たせてる」と語ってある息子を見せたかったんだ。
息子は丁寧に「いつもお世話になっております」。こういう時だけはきちんとしてるんだよなぁ。
おねーさんも、「いつもご愛顧いただいてありがとうございます!」と言いながら、また生キャラメルをおまけしてくれた。
「ありがとうございます!」と喜ぶ息子。
ついでに生チョコ買ってあげようね。カノジョと食べて。

その辺で時間切れとなり、家に戻って荷物をまとめて回収し、息子は芝居の練習に行ってしまった。
今回も演出補で、いちおうお手当が出るらしい。
息子出ないけど観に行く。頑張れ。

ぎゅっとハグして、耳元で、
「あなたのこと、とっても愛してるよ。いつでも元気で幸せでいてくれると嬉しい」と言うと、
「こちらも同じだよ。愛してる」とぎゅっ。
せいうちくんはさすがに恥ずかしいのか握手ですませていた。
なんだかバタ臭い一家だなぁ。
でも、親子・夫婦間で「愛してるよ」「大好きだよ」が飛び交うのは決して悪いことではあるまい。

息子が去ってしまうと、いつものように少し茫然。
しーんとして、どちらからも口をきく気になれない。
やっと出た言葉は「寂しいね」「うん」。
この辺がGくんあたりから「どいだけ息子LOVEなんだ、あんたら」と言われる所以であろう。
しょうがないじゃないか、けっこういい息子なんだぞ!

選挙の結果は自民党が勝った。
何も言うまい。

21年11月1日

ひと月近くたって薬が残り少なくなったので、ゆりこ先生(仮名)の心療内科に行く。
今日はすいていて、他に1組しか患者さんいなかった。

すぐに呼ばれ、部屋に入ってゆりこ先生(仮名)と対面。
私「主人が実家の家族信託問題で大変忙しくなり、またみんな勝手なことばかり言うのでキレかけてます」
ゆ「あなたはその問題から離れていた方がいいんじゃない?あなたの精神衛生のために」
私「でも、主人は私のアドバイスを必要としてますし、サポートしてあげないと本当にうつ状態になりそうなんです」
ゆ「じゃあ、『うまく行くといいわね』『頑張ってるのね』程度にはげましてあげたら?」
私「そうします。私自身、引っ越しも近づいてきて、落ち着きません。コロナが収まりつつあるとは言っても来年始めにはまたぶり返すんじゃないかと思い、不安です。息子のコント師修行が進みませんから」
ゆ「そういう問題もあるわね。でも、もう開き直って落ち着いていきましょうよ」

薬が多すぎるのか、テレビを観ている時など、せいうちくんに、
「今、車のタイヤのアップになったよね?」などと聞いてしまうが、いつも、
「いや、そんなものは映らなかったよ」と言われ、ビデオを戻して観てみても確かに人物が会話している映像だけだ。
海辺の風景とか男女がしゃべっている光景とか、いろんなものを見る。
しかし実際には映っていないものばかりだ。

その点を相談して、
「薬の影響でしょうか」と聞いたら、
「お薬でそういう影響が出るものは出してないわね。確かに幻覚を見る病気はあるけど、あなたと今お話ししていて全然そういう病気の兆候は感じられない。いちいちビデオを戻して観たりする方がストレスになるから、『不思議な幻覚』ってことにして、気にしないでいたらどうかしら」。
なんでも気にしない主義の先生だ。

毒にも薬にもならない問答だけど、どっちかというと実物の薬を求めて来てるので、会話にはあまり重点を置いていない。
それでも話し込んでしまって、私が出てきた時には待合室がいっぱいになっていた。
申し訳なし。

睡眠薬をひと月分手に入れたので安心。
これがないと3時間ほどで目が覚めてしまう。
もっとも前は2時間で起きてたから、少しは良くなってるということだ。
ゆりこ先生(仮名)のアドバイスに従って、「気にしないで、やけくそで」行くことにしよう。

21年11月2日

今日はせいうちくん朝から出社。非常に寂しい。
マンガを読んでいてもPCに向かっていてもお布団にもぐっていても、何をしていても寂しい。
テレワーク以前は毎日がこうだったなんて信じられない。
引っ越して通勤時間が伸びるの嫌だなぁと真剣に考える。
当人あまり気にしていなくて、「電車の中で本が読める」とか喜んでるけど。

引っ越しが近づいてきたのとコロナが弱まっているのとで、今月も社交月間。
今まで谷根千まで呼べなかった友人に声をかけまくる。
すでに1人に「散歩&落語&うなぎ」の会を持ち掛け、他のひと組は「散歩&落語&串揚げ屋さん」、もうひと組は「穴子寿司&散歩&落語」。
計3組の予約を落語とお店の予約を全部取って成立させた時は安堵で腰が抜けそうだった。
やはり世間の皆さんも遊びたくなってるらしくて、さまざまなところが大人気で予約が取りづらいので。
全部の計画にはもれなく喫茶「乱歩」がついてくる。
ほとんどの土曜と祝日を使っちゃったよ。

「土曜は家の都合で出かけられない」と言う「乱歩」を一番気に入ってくれそうなN野さんとは、残念だが今夜ZOOMして千駄木遊びの替わりとすることになった。
向こうから、「今日か明日の23時にZOOMでもどうです?」と言ってきたのだ。
「今日の23時でお願いします」とせいうちくんが返事を打ち、るんるんと5分前から2人でPCの前に並んで座ってZOOM部屋開いて待つも、いっこうにN野さんは現れない。
15分過ぎても電話にも出ないし他にLINEやMessengerといった連絡手段を持たない彼であるので、どうしようもない。
留守電に「入れるようになったらご連絡ください」と入れておくのだけが頼みの綱。
「寝落ちでもしたんじゃないの?」と言いながらこっちも寝る。

それが0時の出来事で、珍しくすぐに眠れたと思ったらパッと目が覚めた。
気になってメールを見たら、ZOOMからN野さんが入ったという連絡が来ていた。ほんの5分前のことだ。
「!」となってZOOMに入ってみると、N野さんの名前だけが表示され、本人の姿はない。
「おーい、N野さーん」と呼びかけても返事なし。
せいうちくんのスマホでショートメッセージを見ると、
「すみません、寝落ちしてました…今からでも気づいたらご連絡ください」と来ている。
1時15分ごろの出来事。

N野さんに電話をかけると「あっ、すみません…」と申し訳なさそうに出る。
「今、せいうちくんを起こしますから」
「いや、寝てるんならわざわざ起こさなくても」
「もう起こしちゃいました」という会話で電話は終わり、今度はN野さんが画像と音声両方が安定しないのを何とかする苦労が待っていた。

PCは壊れているのでスマホでトライしている、と言いつつ、それもうまくいかないので別のガジェットを取りに行った様子。おそらくタブレットだろう。
しかしそれもうまくつながらないので、結局ZOOM画面に映る互いの顔を見ながらせいうちくんの電話(かけ放題プラン)を使って話をすることに。
画が見えてて話ができれば、立派なZOOMもどきだ。

大塚康生の追悼をしたい、と言うのはアニドウ好きのN野さんらしいが、なぜ今頃?
確か半年以上前に亡くなったと思うのだが。
よく聞いてみたら、世間に疎いので、数日前に大隈正秋の番組を見ていたらその中で紹介されており、初めて大塚康生の訃報に接したんだって。
高畑勲が亡くなった時はいち早く聞きつけてファンたちの「お別れの会」にも行ったし、「かぐや姫」の展示会で資料集を買い求めたりしていたのに、ずいぶんな差があるものだ。
別に大塚康生の方を軽んじてるわけではないと思うんだが。

せいうちくんはせいうちくんで、PCで大塚康生を調べているんだが「康夫」って書いてる。
「お、は生きる、じゃなかった?」
「いや、確かこの字だよ」
私はさぁ、アニメーターの名前なんか知らないけど、娘が生まれた時に「健康に生きてもらいたい」って思って「康生(やすみ)」って名前考えたんだよ。
それを「大塚康生」と間違えられて「やすお」って男の子だと思われる心配までしてくれたせいうちくんは、いったいどこに行っちゃったんだろう?
そう指摘したらこれまたずーんと落ち込んでいた。
アニメファンは繊細だなぁと面白く2人を眺めた。

当面の目標である谷根千の魅力について語り、特に朝倉彫塑館を推しておいた。
高校の時、家にデッサン用の石膏頭部像を持っていたほどのN野さんなら必ず興味を持つだろう。
週末は動けないのを踏まえて、平日金曜の閉館時間ギリギリに時間を設定して、何とか会うことに。
穴子が一件増えちゃったよ。
落語は昼からの公演なので泣く泣くあきらめる。
相手は一応サラリーマンだ。

そこで和やかに話は終わり、N野さんとお別れ。
それにしても、N野さんがZOOMに入ってきた途端に目が覚めた私の特殊能力はいったい何だろう?
役には立つが、疲れるぞ、この能力を使うと。

21年11月3日

久しぶりに何もない祝日。
せいうちくんと散歩がてらバームクーヘンを買いに行く。
こないだ5つ買ったんだが、息子のために6つ別に分けておいたのと一緒におみやげと勘違いして持って行かれてしまったのだ。
生チョコも生キャラメルも根こそぎあげたっつーのに。

あとはだらだらして過ごした。
「ふしぎの海のナディア」も「鬼滅」の5夜連続も観てしまった。
そのあと始まったテレビシリーズの「鬼滅」、「無限列車編」も録画した分はもう観てしまった。
このうえは、まだ観てない「鬼滅」のテレビシリーズを観ることにしようか。
アマプラ無料かなぁ。それともNetflixでやってるかなぁ。

ああ、たまにヒマだとどうにも眠くなる。
2人でベッドに入ると本を読む間もなく寝てしまう。
これを不眠症と呼べるかどうか、とても疑問…。

21年11月4日

月イチの心臓の検査。
前回の血液検査の結果がクリーンだったので、今月はワーファリン値だけを測ると言う。
行動に支障のなさそうな右手の小指の先を、針が飛び出す仕掛けの器具を使って「パチン」と小さな穴をあけ、そこからマチ針の頭ほどの血液を絞り出し、測定器につける。
数値は「1.5」。少し低すぎる。
これは、今回ワーファリン増量だな。

あと、新しい検査をしてみましょうと言われていたのは24時間心電図を取り、自分でつける行動記録表と合わせてどんな時にどんな波形が出るかを詳細にチェックするもの。
心臓上部分にテープをはがして平たい器具を取りつける。
それがずっと心電図を取ってくれるんだそうだ。すごいぞ、科学進歩。

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行動表の方は、「歩行」「運動」「食事」「睡眠・起床」などの各項目に時間を描き込みチェックを入れる。
16時10分から「早歩き」を10分したら、「16:10」と書き込み、「運動」の欄をチェックして、16:20に「休憩」をチェック。
トイレは時間と一緒にチェックでなく「大」「小」を記入する。
これを、器具を起動させた15時55分から24時間続け、翌日の15時55分に病院行って、ほいっと剥がして行動表と一緒に渡すだけ。
来月の検診日までに精査しておいてくれるそうだ。

こないだは睡眠時無呼吸の検査もしたし、前のドクターと違ってこちらのドクターは新しい検査に積極的。
前はせいぜいCTとエコーぐらいしか撮らなかったもんなぁ。
もちろんこちらでもそういったものはとっくに撮っている。
2カ月に1度ぐらい撮るレントゲンを見ると、私の心臓はかなり肥大しているらしい。
肺を圧迫して息苦しくなるわけだ。

インフルエンザでも命取りになると言われ、予防接種を打ってもらう。
これ、すごく副反応出るんだよね。
夜には赤く腫れあがって熱を持つに違いない。

さあ、さっそく病院の帰りに早歩きでスーパーまで行って買い物してきたぞ。
「運動」の欄に時間とチェックを入れ、備考に「早歩き」と書く。
お風呂はもちろんNGだ。
「食事」「服薬」などもチェックし、早寝しよう、早寝。

ちなみに「ヘルシオ ホットクック」の水を減らしたら、とろりとした「我が家のカレー」が再現できた。
材料を放り込んでおけば自動で混ぜるところもやってくれて、タイマー仕掛けておけば夜仕込んで朝食べることもできる。
かつてない良い買い物だった。
ラタトゥイユは少し柔らかいが、かえって野菜の青臭さが取れて食べやすいような気がする。
これからもいろんな料理にチャレンジしてみよう。
美味しいから、しばらくはカレーが続くかも。

21年11月5日

朝7時に起きて、「起床」にチェック。「排泄」は「小」。
せいうちくんは出社してしまったし、まだ眠いからもう1度寝よう。
これは「休憩」ということで。

朝ごはん代わりにバームクーヘンを2個食べて、さて散歩せずばなるまいなぁ、裏の坂を登って、それからだんだん坂を上り下りしてみようか、と考えていたら、予想外の出来事が出来した。
再来週の土曜日に穴子寿司を食べてから谷中散策をし、それから有楽町よみうりホールでの「春風亭一之輔のドッサリまわるぜ2021ファイナル」を聴きに行く予定だった、その4人のメンバーのうち1人が都合が悪くなってしまったのだ。
家族の介護にかかわる重大な案件なので、致し方ない。

しかし、せっかく頑張ってネットで取ったチケットを1枚だけ人に譲るのももったいない。(払い戻しやキャンセルは効かない)
ここは頑張ってもう1人、別のメンツを見つけよう。
「谷根千で飲みましょう」「谷根千歩きをしましょう」と言ってくれてる人はけっこういるから、何とかなるだろう。

まずは建築関係の女性に都合を聞いてみる。
穴子寿司と落語だよ。朝倉彫塑館も入れるよ。どうです?
しかし答えは「すでに先約アリ」だった。
急には上手く行かないよね。
続いてデザイン会社社長を誘う。
こないだ一緒に谷根千歩きをしたが、その時はうなぎだった。今度は穴子で、どうだ!?
こちらも「残念ながら予定が入っています」。
うーむ、もう人材が尽きてきた。意外と貧弱な我々の友達ネットワーク。

「落語は苦手。じっと座って長い話を聞くのがつらい」と言う自称ADHD気味の長老にも声をかけつつ、割と近所に住んでる某大学教授を並行して誘う。
さて、そろそろ散歩のノルマを果たさねば。

まず裏の急な坂を上り下りし、「運動」にチェックしたうえで、備考欄に「坂の上り下り」と書く。
それから早歩きで谷中ぎんざを抜けて、だんだん坂を2回上り下りする。
そのまま早歩きで帰ったので、正味30分以上「運動」していたことになる。
午前中はこれで勘弁してもらおう。
今からは「仕事」(事務)だ。

早歩きしてる間に大学教授から「素敵な企画ですね。ぜひ参加したいです」とのお返事が。
「メンツ埋まった!」と大喜びで、まずは長老に「メンツ見つかりました。また今度、落語でない時に穴子食べましょう」とメールを打ち、それから落語会グループに「教授が来てくれます」と連絡し、せいうちくんにも「教授、捕まえた」と打って、「教授!ナイス!すごい!」と絶賛される。
そして最後にメンバーのKちゃんに「急にメンツが変わってしまい、ごめんなさい」とお詫び。
昔から何度も会っている人だから、大丈夫だろう。
やったぞー、トラブルを、すごい勢いで解決したぞー!
私って有能、としばしうっとりする。自画自賛。

その勢いを借りてたまったレシート整理して家計簿をつけ、先月の赤字が7万円も出ているのにびっくり!
20万の予算に対して7万だよ。大赤字だ。
ほとんどが私のバームクーヘンとタバコの分である。
ストレスが大きいからと好きほーだいするのにも限度があるぞ、と自分を戒める。
とは言え、両方とも新居に引っ越したらなくなる出費だからなぁ…(新築マンションなのでさすがに禁煙である。息子には換気扇の下で吸ってもらう。私はきっぱりとやめる)

せいうちくんが時間ができたからと帰ってきた頃、私は家計簿と格闘し終わって心電図を取るための最後の早足散歩に出かけるところだった。
15時55分に器具を外してもらうまでに「運動」の欄にチェックを入れたいのだ。
「息切れ」「動悸」もチェックする。
器具の電源を切り、胸からはがしてくれた看護師さんが「行動記録表」を受け取ってちらっと見て、
「模範的な記録表が出来上がりましたね」とほめてくれた。

やれと言われたことはけっこうがっつりきちんとやってしまう性格はどうも30代で発現したらしい。
大学時代、女子寮でお掃除やさまざまなお当番をサボり倒したのと同じ人間とは思えない。
機会があれば同僚たち、先輩たちに謝りたい。すみませんでした。
謝ってすむことではありませんが、本気です。

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