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年中休業うつらうつら日記(2023年1月28日~2月3日)

もうじきコロナは「第5類」でインフルエンザ等と同じ程度の警戒しかされなくなるそうです。私はなんとなく「すぐにはマスクを手放せない派」かも。こないだ息子の中学卒業式のビデオを見ていて一番驚いたのが「誰もマスクしてない…密…!」ってとこでした。いつの間にかすっかり頭がコロナ仕様になっていたようです。今後の世の中に対応していけるでしょうか。まあなんにでも必ずすぐに慣れてしまうものですけどね。

23年1月28日

前夜の定例ZOOM飲み会については、めずらしくせいうちくんが週終わりの金曜にしては元気で、けっこう参加していたことぐらいか。
「もう半年以上せいうちの顔を見てなかったぞ」とSくんが不満を漏らすぐらいだから、リアル忘年会はともかく毎週のZOOM会に顔を出さなくなってずいぶんになっていたのだろう。
たいがいZOOMやってる私の横に座ってて色々言ってるから半分参加してると思っていたけど、やはり「ちゃんと参加する」のも大事だね。

先週、末次由紀の「ちはやふる」を読んでなくて糾弾されていた少女マンガ研究家Xくん、今週もまだ読んでないそうだ。
もっとも私の興味はすっかかり田村由美の「7SEEDS」全35巻に移っていたのでそちらを読んだか、とつい聞いてしまい、「7SEEDSも読んでませんよ!」と大いに気を悪くさせてしまった。

親を入れた経験者の長老、Sくんから老人ホームをどう選んだらいいかの指南を受ける。
まあいろんな意見のあることあること。
要するに安く上げるにはなるべく長いこと自宅にいて節約生活を続けるしかないと思い知ったよ。
あと、子孫に美田を残そうと思わず使い切ってしまうのがいいそうだ。
でも、マンションぐらいは残してやりたいよなぁ。
特にうちの息子は収入不安定男だから。

いつ、どういう状態になったら入居するのか、まだ全然見当もつかない。
私の両親は入るほどの年になる前に亡くなってしまったし、せいうちくんの側は認知症の進んだお義父さんはともかくお義母さんは一生自宅で暮らすつもりらしい。
元気な人々だ。
私の場合、持病があるのでそのへんを診てもらえるところだといいなぁと思うのと、せいうちくんはきっと一族の呪いの「長寿で認知症」になるから早く手を打っておかないと自分で好きなところを選べなくなってしまう。

そんなわけで中の上ぐらいの老人ホームをあれこれネットで見ていたら、どう考えてもお金が足りない。
月々の年金で毎年の使用料が2人分支払えないのだから困った。
ぶっちゃけ、現在算出できる年金額では1人入るのがやっと。

現実派のGくんからは、
「おまえさんたちでもな、年金だけじゃ毎月赤字が出るんだよ。それを貯金を取り崩して補填していくのが老人ホームってやつだ!」と一喝された。
なるほど、月に5万円赤字が出たとして年に60万。10年で600万、65歳から95歳の30年年金暮らしをするとしたら、1800万円もかかるじゃないか!
これが常々聞いてきた「国民側は1人頭2千万円用意しろ」の実態かぁ!
老人ホームに入るどころか日常生活から困る金額、それが年金。

結局、せっかく新しい家に移ってきたのだからこのマンションにできるだけ長く住み続けることが節約の道なんだとわかった。
自分たちで暮らしていれば食費も抑えようがあるだろうし何かと料金を取られることも少ない。
よし、私が80歳、せいうちくんが76歳までぐらい老人ホームは忘れて、浮いたお金で楽しい思いをさせてもらおう。
せいうちくん、できるだけ長いこと元気でいて、私の面倒見てね~。

さて、とりあえず将来のバラ色の生活は粉みじんになったが、今日は息子夫婦と下北沢デートだ。
13時にお互いよく行く喫茶店「トロワ・シャンブル」で待ち合わせ。
せいうちくんの皮膚科がおしたので少し遅れてしまったが、メッセージで15分遅れると言っておいたうえ、待ちの行列ができてしまっていて彼らもまだ入れてなかった!

並んでやっと入ってゆっくり珈琲を飲む。
せいうちくんはここの「カゼブレンド」がお好みだ。若干酸味が強いらしい。
私はたいがいの季節、アイスコーヒーかオレ・グラッセ。
「お2人が初めて会った40年以上前からずっと同じこの喫茶店に今、みんなでいるんですね。素敵です!」と彼女は感動してくれたらしい。
次世代と一緒に来られるとはこっちも思ってなかったよ。じーんとするね。

しばらくお茶と会話を楽しんだのち、これまた40年以上変わらない思い出のラーメン屋「珉亭」の二階座敷でそれぞれのオーダー+野菜炒め。
14時頃はまだまだ行列。
私たちはいつも変わらぬラーメンとチャーハンのセット「ラーチャン」で、せいうちくんの分はラーメン大盛りにしてもらっていた。
Mちゃんはお店イチオシの「江戸っ子ラーメン」、息子は大好きなあんかけラーメンだった。
野菜炒めもあっという間になくなった。
野菜しか入ってないのに、なぜこれほど肉の味がするのか。

食べ終わると、息子は今夜の公演の稽古があると言って離脱した。
Mちゃんと3人でぶらぶら歩き、私がひとり暮らししていたアパートの外観見学(当時築30年ぐらいは軽くいっていたのに、40年後もまだあった!ただ、入居者はほとんどいないようで、近く取り壊しかなーと思われる)を行って遊ぶ。
その後、何をして3時間近くをつぶそうか、いっそ各人解散にしてまたあとで集まるか、といろんな意見が出たが、Mちゃんとゆっくり話すのもめったにないことだ。
今日はお話をさせてもらおう。
またしても少し並んで「星乃珈琲店」へ。


どこでも行列だなぁとは思いながら、せっかく入れたのだからと名物スフレを食べる私とスフレパンケーキを食べるMちゃん。
言われるままにスフレパンケーキに果物や生クリームがデコレーションしてあるクリスマス特別仕様を頼んだせいうちくんは少し恥ずかしそうだった。

息子がいないとこでMちゃんと話す機会も少ないから、張り切って結婚式の予定を聞く。
やはり沖縄でのリゾート婚にしたいようで、ただ、友人も含めて40人ぐらい呼びたいのだと言う。
うーん、リゾート婚ってのは親族しか呼ばないからこそコンパクトで、遠隔地でもできるんだと思っていたよ。
沖縄での式は家族だけでやって、東京でまた友人を集めての披露宴、そして最後は息子が関わっている下北沢の店で二次会なんてどうだろう。

Mちゃんも「そうですね!」と目を輝かせてくれたが、このうえ息子の意見も聞かないといけないんだよね。
「とにかくお母さまとよく相談して。きっと娘さんの結婚式にはお母さまがいろいろ夢を持っていらっしゃるでしょうから」と言っておく。
どうなるとしても、楽しみだなぁ。
奇しくもMちゃんとお母さま、私と女性陣全員が「結婚式に向けて」髪を伸ばし始めているとわかって何だか大笑いしながらもほのぼのした。
長い方がどういう形にも結ってもらえておしゃれのし甲斐があるものね。

さて、そろそろ18時半だ。
インプロコントをやる息子たちコントグループとインプロ演劇をやっている劇団さんの合同ライブだ。
40席ほどの小さなライブだがほぼ満席だった。
お客様から「お題」をもらってコントや寸劇に仕立てるのがインプロだが、今回は劇団さんの方の引き出しが多いのか、ずいぶんいろんなメニューを楽しませてもらった。

① ノートペーパー
観客からもらったマンガや演劇、CMなどのセリフをもらい、12枚の紙に書いてそのまま床にまいておく。3人ずつ出るコントの途中で拾って「どんなセリフであろうとも」それを入れて芝居を続ける。(指名されたので「ろくでもないこの世界」と言わせてもらった)

② バウンサー(門番)
高級クラブに様々な「物事」である客たちがやってくる。みんな顔パスで入ろうとするが、門番は誰が誰なのかきちんと確認しなければならない。しかも「知らないことを悟られないように」真正面から質問するのはNG。これが一番面白かったな。「タイタニック」から「バナナ」「困っている」まであるお題は広すぎるよ。クラブ客たちも張り切ってジェスチャーやったり苦労してたなぁ。「タイタニック」で船首で両手を広げていたNくん、いったんは「お通り下さい、キリストさま!」と言われて退場してたが、「金曜とかに『またか!』と思うほど観られるよ」「みんな、観て泣いたねぇ」のセリフがヒントとなって門番が正解してた。客席からヒントあげたくてしょうがなかったよ。

③ おはなしの続き
誰でもが知ってる童話や昔噺の「めでたしめでたし」の続きを即興で作る。舞台上に半円に並んだメンバーたちを客席先頭真ん中に陣取ったディレクターがランダムに1人ずつ指名し、どんどん続きを作っていってもらう。白雪姫が王子を毒殺しても、やっぱり最後は「めでたしめでたし」。

④ テンション
やはり客席側にディレクターが座り、3人で展開していくコントに「5」を普通とする「1」から「10」までのテンションを振りつけていく。同じ話をしているところにいきなり「テンション10!」がはいったところのスラップスティックぶりは見事。

⑤ ダブルキャスト
全員を3つのグループに分け、5人ずつの組を作る。それぞれ整列した横1列の3人が「違う人が同じ役柄をやるダブルキャスト」になる。役者が変わっても登場人物は同じ、という縛りの中で行われる、今回の場合5組いたので5幕までの芝居となる。

公演はこれで終わり、2月半ばにまた息子たちのコントグループの公演があると告知されて、終了。
「チェキ」を撮るのも可能だったようだが、Mちゃんとこっそり、「家で撮ればタダだもんね」とささやきあってすぐに出てしまった。
よく考えたら、そういうことして推しを買い支えなきゃいけなかったのかもしれない。

息子からは、「終わって退屈ならライブハウスの方に行っててもらえればいいよ。僕らもあとから打ち上げで行くからさ」」と言われていたので、そっちへ向かう。
すっかりわけのわかんなくなった下北の街について愚痴りながら、会場とお店はすぐ近くだった。
息子ファミリーの我々はさすがに「あっ」と言われ、奥の席に案内してもらえた。
今日はトランペットの奏者さんが来ているので本来チャージを払って聴くんだが、もう1時間以上過ぎているし激しく舞台袖なので、ここで聴く分にはチャージはいらない、と言われた。
3人でのんびりトランペットの調べを程よいボリュームで聴きながら、息子のことや新夫婦の生活などのことをしゃべっていた。

なんと、Mちゃんが一番好きなマンガは古谷実の「行け!稲中卓球部」なのだそうだ。
「ヒミズ」なども彼女が息子に教えたのだと言う。
さすがは息子のヨメ、ただ者でないな。

そう言えば、お店の人たちが何人も我々(特に彼女)に挨拶しに来ていた。
「林賢(こういう場合の息子のコードネーム)さんのヨメっすか!美人ですね!おめでとうございます。これからもよろしくお願いしますッ」みたいなのが何人も来てくれたわけで。
「ヨメ」と呼ばれるのが嬉しいかどうかはともかく、「そういう文化って本当にあるんですねー」とひたすら感心し、ちょっと照れてカワイイMちゃんだった。

30分ほどすると今日一緒にコントをやった2グループが全員で打ち上げにやってきた。
ちょうどトランペットの演奏が終わった頃だ。
息子やコントグループの子たちが挨拶しに来る以外は静かなものだった。
いろんな団体とやるのは勉強になるし励みにもなろう。
お互いにとても有意義な時間と空間を共有したのではないだろうか。

昼からずっと動き回っててMちゃんも疲れただろうから、どうせ終電でうちにくるつもりの息子は置いて行って、Mちゃんを拉致してタクシーに押し込み、家に帰った。
これだけ一緒にいて抗原検査も何もないだろう、といきなりくつろぎ、Mちゃんにいろいろ見せたがる我々。
前回は赤ん坊の頃のアルバムを見せたから、次は保育園や小学校、オトナになるまでの写真をまとめてスライドショーにして見せたかったんだが、あいにくまだ全然整理の手をつけてない。
ならばDVDシリーズだ。

「まずはこれを見てもらわなくっちゃ」堂々の第一位はTBSの「モニタリング」なる番組の「大学生の子供がいきなり大学辞めてお笑い芸人になりたいと言ったら、お父さんは何と言うか」というドッキリコーナーの録画。
これ、本当にせいうちくんだけが何も知らずに話していたんだが、実にもっともなことをスマートに熱心に言っていたよ。
今より10歳若い息子もせいうちくんもとても若くてカッコいい。
私はほぼ変化なし。
今、こうしてみると隔世の感があるねぇ…本当に芸人になっちゃったからねぇ…この頃はドッキリでお笑い芸人になりたい、とは言うものの、本人もサラリーマンになるつもりでいたようだよ…ホント、人生って何が起こるかわからない。
今のMちゃんにしてみれば、
「芸人になりたい、ってのが嘘、っていうのが信じられなくて頭が混乱しますね」って感じらしい。

続いては小学生の頃、中学生の頃、そして高校生の頃の柔道やってる息子が山のように出てくる。
高校では坊主なのでちょっと笑えた。
Mちゃんはまったく柔道を知らないそうで、初めての試合観戦だったのでせいうちくんの解説にうなずきながら見ていた。

おう、そうだ、私はまたしてもタラモサラダを作ろうと材料用意してあったんだ!
「もう明日にしなよ。みんな、おなかすいてないよ」と止めるせいうちくんを振り切って、
「私が食べたいんだよ!」と言いながら30分ほどでボウルいっぱいのタラモサラダを作り終わったら、ちょうど息子が打ち上げから帰ってきた。
「ただいま!ごめんね~、お待たせして。あ~、おなかすいた~」
さっそくMちゃんと息子にタラモサラダを出し、とても喜ばれた。頑張って作った甲斐があったよ。

そののち買ってあったケーキを食べてお茶を飲み、実に和気あいあいと楽しい夜になった。
もう夜中の3時近いので息子たちがお風呂に入るのにまかせて寝たが、彼女が今求職活動中で面接なども受けてるようで、この2人の生活時間帯の違いが心配だなぁ。
ということろで今日はおやすみ。
明日もあるんだよ~!

23年1月29日

そろって昼近くまで寝ていた一家。
11時頃にリビングに行ってみたら、Mちゃんがソファで本を読んでいた。
息子は13時からZOOM会議だと言っていたからそろそろ起こすかな。
Mちゃんをもってしても「いつ起きるのか、ほんッとにわかりません!」らしい。
せいうちくんも起きて来て、みんなで声かけ続けていたらなんとか時間までにはかろうじて起きた。
頭が働いているかはまた別の問題だと思う。

端のダイニングテーブルで息子がZOOMしており、せいうちくんは向かいの椅子でくつろいでいる。
私はダイニングチェアからソファのMちゃんに清水玲子の「秘密」一番最初の短編を薦め、読んで「面白いです!」と大喜びしてくれたMちゃんに感謝してもしても足りない。
息子にいくら「これ、いいよ」って言っても聞いてくれないんだもん。

少しはMちゃんを休ませてあげなくちゃ、と思ったのに気づいたらずーっとしゃべり続けていた自分にオロオロして、余計に何やらしゃべりまくってしまう。
息子のZOOM会議が終わってカフェに昼ご飯を食べに行こうとなった時には申し訳ないやら恥ずかしいやらで汗びっしょりになっていたよ。

カフェはずいぶんと混んでおり、珉亭で並んでた時みたいに2人を仲良く放牧して、我々は行列をキープ。
4人席に2人で並んで座ってる老人男女がなかなか立ってくれないなぁ。
もうすっかり飲み終わってる様子だが、女性側がバッグからパンフレットを出したり入れたりしているのは何かの勧誘なのだろうか。
パンフ本体にもしきりと書き込みをし、老人男性に激しく媚びを売る。
「まさか何かの壺とか石とか水じゃないよね~」
「もしそうだったら通報すべきなの?笑」などと言ってるうちに、最初に立ち上がりそうな気配を見せてからたっぷり20分後に2人は席を立ったのであった。

ちょうどこちらの2人も戻ってきたので、席についてからカウンタで料理の注文をし、先に出てきた飲み物を飲みながら静かにおしゃべり。
息子は楽しそうだし、Mちゃんは愛らしい。
遠くから見ていてこのカップルが歩いてくると、「なんて初々しい、愛らしい一対のひな人形のようなんだろう」とつぶやいてしまう。
親バカすぎて前が見えない。

店を出て駅前でハグし、Mちゃんとは握手にとどめ、穏便にお別れした。
結婚相手の親の家なんかそれほど遊びに行きたい場所でもあるまいに、季節のご挨拶以外にもこうしてちょくちょく顔を見せてくれる。
何しろ帰ろうと思えば帰れる大宮なのに、泊まってってくれるんだぞ!
ああ、あのMちゃんの真っ白なウェディングドレス姿が早く見たい!

たっぷり4人で過ごし、16時頃に駅前で別れるまでなんと30時間近く一緒にいた嫁姑!
本当に仲良さそうで若々しく可愛らしい新婚夫婦を堪能した。

日曜夜の愉しみは何といっても「どうする家康」。
いまだに完全にはついていけてないが、けっこう変わった大河として注目を浴びるかもしれない。
「第六魔王」ならぬ「V6魔王」は相変わらず怖いし、お市の方も聞いていたのと全然違う猛々しいブラコン。
しかし2人とも家康を相当に可愛がってるね。ありがたいのか迷惑なのか。

23年1月30日

高校時代の友人に会いに行って、べろんべろんになって帰ってきたせいうちくん。
私、話が通じない酔っ払いって本当に苦手なんだよな。
「もうわかったから、寝てくれない?長老たちとZOOMしてたのに、あなたが具合悪そうだから抜けてきたんだよ」とうながしても、
「大好きなんだ、そばにいたい!気持ち悪い!」と洗面所に走り込んで水をガブ飲みしてトイレで吐いてる様子。
「だから、もう寝なよ」
「うさこが寂しいでしょう。僕はうさこが大好きだから、ずーっとそばにいるんだ」
「それってもはや暴力だよ」
「うん、暴力だ」

自分で認めちゃってどうする。
そこから私もにわかに精神状態が不安定になり、せいうちくんがトイレにこもってる間にIKEAで買った気に入りのクッションをひとつ、包丁でめった刺しにして台無しにしてしまった。
自傷が他害に向いたのは本人にとってはいいことかもしれないが、このまま他人を傷つけるような人になったらどうしよう!?

トイレから出てきたせいうちくんはクッションの無残な姿に驚いて私の手から包丁を取り上げ、寝室に連れて行って薬を飲ませてくれた。
「明日、病院の予約を取ってあさってに先生に会いに行こうね」と言われ、素直にうなずく。
かなり景気よく薬をのんでしまっているから、ここらで少し取り返しておきたい。

しかしね、せいうちくん。
君がもうちょっとしゃんとして帰ってくれたら「どうだった?」「楽しかったよ!」ですんだ話なんだよ。
高難度中高一貫男子校では「個人個人が能力の高いエリートで、何かにならずには一生を終えられない」のだとしても、あなたまでつきあわなくてもいいじゃないか。
「平凡な暮らしが好きだ」と言って、
「君のように成功した人がそれじゃいかんだろう」とか言われたって、何かになろうと思ったわけでもなければ何かを成し遂げようと思ったわけでもないんだから。
ただ、私と子供たちを元気に生活させてくれて、みんなで幸せになりたかっただけで、今、その夢はかなっている。
まったくもう、サラリーマンとかエリートの病ってやつぁ!

23年1月31日

あまりに私が不調なので、せいうちくん午後はテレワーク休んで一緒にいる時間を作ってくれた。
病院の予約も取れたから、明日一緒に行ってくれるって。
症状次第では木曜になってもそばについててくれるかもしれない。
1人でも大丈夫は大丈夫だが、心細いんだ。
薬でほとんど眠っているとは言え、自分が何をしでかすか正直わからない。

世界中の人に謝ってもらいたいと思っている。
もちろん本当に世界中の人が私に悪いことをしたなんて思ってるわけじゃなく、母親と姉から謝られたい気持ちがそれほど強いってことだ。
母は絶対謝らなかった。
姉は「あら、そう言ったように聞こえたならごめんなさい」とは言うが、あまりにつるつると言う。

私の中でずっと怒り続けている、この理不尽を許してなるものかと猛り立っている自分がまったく消えない。
たとえ神様がやってきて私の額に手をかざし、「あなたの罪はすべて許されましたよ。貴女はもう誰にも何の負い目も負債もない状態ですよ」と言ってくれたとしても、
「いいから、あの2人を連れて来てくれ。彼女らが心の底から私を気の毒に思い、傷つけたと思って泣いて後悔して謝ってくれるまでは、なんとしても気が済まないんだ!」と言ってしまいそう。
なんでこんなに怒ってるのかなぁ。
「自尊心を根こそぎ奪われ、自分の意見をことごとく否定されてきた人が自我に目覚めたら当然そうなるんじゃない?」と人ごとのように言うせいうちくん、自分の実家に対する君の怒りはいつ炸裂すんの?

長老とGくんと昼間少しZOOMをした。
せいうちくんがヒマになったらレンタカーのハイエースによる「車中泊の旅」につき合ってみたい、とGくんの計画への参加を打診したところ、最初はあまり乗り気じゃなかった。
ハイエースの後部に3人は寝られないせいかと思ったが、実は、
「せいうち家の旅行はどうせホテルがあったら泊まっちゃうとかメシはレストランで美味いもの食うとかいう贅沢旅行だろう」と忌避していたらしい。
「いや、Gくんの貧乏旅行につき合うつもりでいるよ。お風呂は2日にいっぺん、銭湯かスパランドでいいし、パンツも毎日替えなくても大丈夫!」とせいうちくんが請け合ったため、
「よし、そっちの気分がわからなくて困っていたが、貧乏旅行をしたいと言うなら話は別だ。わし流の貧乏車中泊を見せてやる!」と勢いづいたGくん。

G「どのくらい行くんだ?」
せ「ヒマになれたら1週間ぐらい」
G「おお!せいぜい2、3日程度のつもりかと思っていたぞ。そこまでの覚悟なら、せいうち家との貧乏旅行、わしは真面目に考えるからな!」と頼もしい。
本当に行けるといいなぁ。
何より、こういうくだらない計画を立てる時のせいうちくんは本当に生き生きとしていて、最初に好きになった学生時代と変わらなく見えるんだよ。
あー、せいうちくんのこういう無鉄砲で無神経なところが大好きだったんだよなぁ。
長い会社員生活ですっかり埋没してしまった彼の野性を取り戻したい!

23年2月1日

今週も急に入れた予約で心療内科のドクターに会う。
なにしろ調子が悪いのでしょうがないのだ。
薬の消費も激しいので、余分にもらわないといけない。
せいうちくんも一緒に来てくれた。
初めて自転車で行ってみたよ。

せいうちくんとつまんないケンカをしてクッションを台無しにした話をする。
「とにかくちょっとした嘘をつかれることとか理屈に合わないことがどうしても無理なんです。イヤでたまりません」と訴えると、ドクターはせいうちくんに向かって言った。
「この人は噓がつけない人だからさ、絶対正しいから、何でもこの人の言うこと聞いてください」
さすがにここまで全肯定してもらえるとは思わなかったので、思わず聞き返した。
「嘘がつけませんか、私は?」
「嘘の言えない人だから、こんなに苦しんでるんじゃないですか。嘘のつける人ならここまで辛い思いはしませんよ」
そうだったのか!

ドクターによれば私の症状は非常に重く、言語や感情が発生する前に刻まれたトラウマ、なんなら胎児の頃にDNAレベルで傷つけられてると言ってもいい深さなのだそうだ。
「だからね、言語でも感情でもこのトラウマを意識して治すのはとても難しい。自分を許せない気持ちがもう根底の根底にある。配偶者がもう大変だからって別居したケースもいくつか見てますが、そうすると死んじゃいますね、患者さんが」
せいうちくんはこれを聞いてむしろほっとして張り切ったそうだ。
「自分がそばにいることに意味がある。うさこを何より大事にして暮らしていくのにはちゃんと理由があって間違ってないんだ」と。
奇特な人だね、まったく。

「それでもこうして足しげく通ってくれればこちらもやれることを探せます。今回も、よく来る決断をしてくれました。毎回、話をしていきましょう!」とドクターは力強かった。
せいうちくんにも、
「ダンナさんも仕事もあって大変でしょうけど、今とても不安定になっているこの状態を何とかしていきましょう」と励ましの言葉をかけてくれた。

あと、認知症の家系なのを心配しているせいうちくんに最近「もう今から物忘れ外来とかに行け。早いうちにデータを取っておいた方がたとえ今は何ともなくても将来的には健康な時のデータがあった方がいい。薬も進歩しているがまだ『治す』薬はないので、少しでも早くから『発症を遅らせる』『進行を遅らせる』薬をのんだ方がいいに決まってる」と口を酸っぱくして言っていて、
「えー、まだ還暦前だよ。70歳ぐらいになったら考えるよ」と言われていた。
せいうちくんがドクターにその話をしたら、
「奥さんの言う通りです。メモリークリニックなどなら若くても受けつけてくれます。心配があるなら少しでも早く受診しておくことです。長期のデータは必ず役に立ちますし、薬も予防的なものがずいぶん出てきてますから、病院にかかるなら早いうちからかかるべきです」と言ってもらえた。
だからさぁ、私の言うことは正しいんだってば!
「ここまで医者と同じことを言ってるとは思わなかった」とせいうちくんもあらためて感銘を受けたそうだ。えへん。

こんなおまけまでつけて心療内科はたいそう実りある面談だった。
自転車で自由度が高かったのであちこち買い物して回った。
TOPSのケーキ、WESTのクッキー、福砂屋のカステラに加え、昔よく行ったパン屋さんに行って「いちごジャム&マーガリン」のコッペパン買ったり、また悲しい時用にタラモサラダの材料買ったり。
体重のことは今は考えない。
精神的に健やかに過ごすことだけ考える。
何しろたった今のミッションは「死なないこと」という最底辺のレベルなのだ。
ああ、言ってて恥ずかしい。

23年2月2日

せいうちくんが私と過ごすためにお休みを取ってくれたので、1日一緒にのんびり。
何をするでもなくBSで録画した「仕事人シリーズ」を観たりするのが楽しい。
気になっていた録画の山から「親愛なる僕に殺意をこめて」も全部観ることができたよ。

そういえば「暴れん坊将軍」に「彗星回」なる江戸の夜空に彗星が現れてみんな大慌てする回があり、SF好き元天文少年の長老の大のお気に入りだったんだが、今回、「仕事人」にも「彗星回」があるのが発見された。
もちろん長老は大喜びで皆に宣伝していた。(江戸に何度も彗星が現れた?1回のことを2つのドラマに盛り込んだ?)
ところが録画したものを見ていたら、彗星が落ちてくるそのことが事件になってる「暴れん坊将軍」と違って、「仕事人」では夜空にただ彗星があるというだけで、仕事人たちの仕事ぶりはいつも以上にまったく普通であった。
ただ「禍々しいほうき星」が空にあるだけ。
さて、明日の夜の定例ZOOM飲み会ではどのような話になるだろうか。

時々、すごく苦しく重たい気分になる。
親戚の家を訪ねたことも姉に電話したことも激しく後悔する。
ある意味、誰にも悪意はなく、自分の立場でものを言っているだけだから、私もただそうすればいいだけなのだ。
イヤなことには関わらず、自分に都合の悪い人のことは「悪い人だから」と嫌ってしまえばいい。
それだけのことが、なぜか難しい。
自分が悪かったと思う方が何万倍も楽に思える。

23年2月3日

今日は節分なので、恵方巻を買ってきた。
豆はまかないが恵方巻は食べる。それがうちの節分。
恵方巻は美味しいが、豆は別に美味しくないからだ。

薬が強いせいか、記憶が途切れがち。
ちょっと前のことを思い出すのに骨が折れる。
そうそう、息子妻のMちゃんが就職面接に受かったと言っていたなぁ。
子供に英語を教える塾の先生らしい。
これでMちゃんの方は収入が安定したが、問題はやはり息子。
Mちゃんとしては全力で息子の夢を応援したいそうなので、将来的にいろいろ問題はあるがとりあえず我々も一緒に応援しよう。

そのMちゃんが大好きだと言う古谷実(「行け!稲中卓球部」を描いた人)の「ヒミズ」他いくつかのシリーズを読んでぶったまげた。
「稲中卓球部」が好きだ、という時点で女子としてはヘンなんだが、「ヒミズ」などはもっとヘンだった。
息子が嬉しそうに「ヒミズとかはカノジョに教わった」と言っていたが、うーん、これを面白いと思うとは、可憐で愛らしいMちゃん、恐るべし。
いや、面白いんだよ。思ってたよりずっと高級というか、シュールで社会派でもある。
しかし人は見かけによらないものだ。
これなら息子との苦労の多い人生も明るく歩きぬいてくれるだろうとあらためて確信した。

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