疑惑の花粉症

くしゃみが止まらない。
そういうと、間違いなく「花粉症だね」と言われる。
しかし、違うのだ。
私は花粉症ではないのだ。


去年の春は大変だった。
喘息の発作が出て、咳も止まらないしくしゃみも連発していた。
おまけに顔にはアトピーが出てきてマスクが痒い。
とりあえず喘息の薬をもらおうとかかりつけの病院に行くと、先生に「花粉症?」と聞かれた。
いつものごとく、「最近くしゃみはよく出るんですけど、5年前の血液検査では何もなくて」と答えると、先生曰く「今年の花粉は本当にひどいから!今年はみんな花粉症になってるよ」とのこと。

「絶対花粉症!検査するまでもない!」と太鼓判を押され、花粉症=アレルギーなのでそれで喘息の発作が出ているのだろうと言われたので、では念のために何の花粉に反応しているのかを知りたいと、血液検査をお願いした。

1週間後に検査結果を聞きに行くまでの間、いろんなマスクを探した。
喘息でたたでさえ息が苦しいのに、マスクをするのはしんどい。呼吸が浅いのでついついマスクを外してしまう。耳もいたい。

なにかいい解決法がないか「喘息 花粉症」とか「喘息 マスク」とかネットでググりまくった。するとたまたま某マスク(最近よく見かける黒とかピンクとかいろんな色があるやつ)が喘息患者にピッタリだとオススメしている人の文章がヒットした。
軽くて通気性がいいので呼吸が楽、しかも花粉をブロックできるし洗って繰り返し使える!と知り、近所のドラッグストアを巡ってやっと一軒だけ取り扱いのある店を見つけ購入したのだった。

これが本当に良かった。
開封して数時間は独特のにおいがしたが、息が楽、耳が痛くならない、顔も痒くない!
唯一のデメリットは、数日経つと紫外線で黄色く変色してしまうことだったが、そんなことお構いなしにすっかりこのマスクにハマってしまって、でも人気商品で当時(昨年の春)でもこのマスクだけ品薄だったので、丁寧に洗って1週間繰り返し使っていた。


そして、検査結果を聞きに行く日。
診察室に入って座ると、先生はうーんとうなった後、不満そうに言った。

「アレルギー反応、1個も出てないね」

スギ、ヒノキ、ブタクサ、イヌ、ネコ、ハウスダスト……
何にもない。アレルギー反応ゼロ。

これにはさすがに先生に気を使ってしまった。
あんなに「間違いない!」と断言していたのだ。先生も、まさかこんな結果になるとは思わなかっただろう。
ひとまず花粉が原因ではない、花粉症ではない!と言うことがわかって、嬉しすぎてその週末に夫とお花見に行った。

結局、何が原因で発作が出たのかは謎のままだった。
先生が言うには、刺激臭(線香、香水、柔軟剤、たばこ等)で引き起こされることもあるとのことだった。
コンビニの店先から漂うたばこの煙を吸ってしまって咳き込むことが多かったので、原因はそれかもしれない。
そうなると、対策はなかなか厳しい。
極力コンビニの前を通らないようにしても、歩きたばこや自転車に乗りながらの喫煙に巻き込まれることも多い。
これはどれだけこちらが気をつけていても防ぎようがない。ただでさえ気管が炎症を起こして狭くなり、呼吸が苦しくなっているのだ。
息を止めて我慢、なんて無理だ。

それでも対策しないよりはいい。飲食店に入るときは完全禁煙の店を選ぶ、外出する時はマスクと厚手のタオルハンカチを使って少しでもたばこの煙を吸わないようにするなど対策して、喘息の発作頻度は格段に減ってきている。

今年もくしゃみを連発している。顔も痒く赤くなっている。
あれ?やっぱり花粉症じゃないの?
けれど、今のところ喘息の発作は出ていない。
マスクが売っていないので、正直今年は喘息発作で死ぬかもしれないと思っていたが、必要最低限の外出にとどめて引きこもっているせいか今のところぴんぴんしている。


隣でつらそうに鼻をかむ夫に、花粉、しんどくないん?と聞かれる。
全然。だって私、花粉症じゃないから!


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