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ぺけぽん
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#ショートショート

ダーカカカアカーカ

それはいつも 突然にやってくる --*-- 「新山、おまえのことが好きらしいよ」 修学旅行が終わってからずっと、空前の恋愛ブームが中等部の校舎で巻きおこっていた。発端は、旅行の最終日にA組の田辺が綾瀬さんに告白してOKをもらったビッグニュース。綾瀬さんはファンクラブが各学年に存在するほど人気が高いバスケ部のエース。いっぽう田辺は、目立たなくて影が薄い優しいだけが取り柄みたいなヤツだ。 そのニュースは一瞬でオレたち2年生の間に広まり、学校中に知れ渡るのに2日とかからな

欠ける、満ちる、食べる。

中国や台湾では、どこも欠けていない満月を「円満・完璧」の象徴ととらえている。中秋節の満月の日に、家族が日本の正月のように集まり、食事をしながら満月に見立てた丸い月餅というお菓子や、文旦という果物を食べる習慣がある。 引用:https://www.gldaily.com/inbound/inbound2611/ *** 理由なき否定ほど、腹の立つものはない。 結婚前に勤めていた職場の上司は「なんか違うんだよね~」が口癖だった。 タバコ休憩が趣味の二回り以上年の離れた上司

犯人はあとがきにいる【ショートショート】

ーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーー あとがき 親愛なる読者の皆様へ 著者の天津川侑吾です。 まずはこの『犯人はあとがきにいる』を手に取ってくれたことに謝意を述べたい。 そして編集の橋本君をはじめとした関係者各位にもお礼を申し上げる。 「あとがきを袋とじにしたい」という私の要望を(苦悶の表情を浮かべながら)受け入れていただいたお陰で、このような特殊な装丁の小説が完成したのだ。 まあ、彼らは二百篇を超える私の著作でたいそう儲けているだろうから、このくらいの注文は呑

三杯目のレモンサワーと逆転の神様に祈り

この世に神様がいるなら、土下座してもいい。 枕営業でも何でもするから、就職先を決めてほしい。 難なく駒を進めてきた人生のスゴロクで、「一回休み」を何回続けているのだろうか。 賽の目が5でも6でも、もう一歩のところでゴールでも、マスを戻り、戻り、また戻り。 結局、ふり出しに戻っているではないか。 気が付いたら大学4年生の夏。 周りの友達は既に内定というゴールに駒を進め、残り少ない大学生活を満喫している。 ひとり残された私はというと、エントリーシートから数えて37連敗。 暗黒

タイトル公募断篇小説「夕立そうめん」

先日、断篇小説のタイトルとして使える「夏の終わりに食べたくなる存在しない食べ物」をTwitter上で公募しました。 その結果、たくさんの素敵なタイトルが寄せられました。そのなかで、とくにシンプルでピンときた「夕立そうめん」を使わせていただき、小説を書いてみようと思います。では以下が本編となります。どうぞ。 **************  夕立そうめん  2003年の夏の終わりのことを久志は強烈に記憶している。その日、久志は恋人の彩夏とドライブをしたのだった。ラジオではどこか