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二度の休職を経験してやっと、「できない自分」を受け入れられた。


突然ですが、休職されたことってありますか?

私はあります。

一度目は医師5年目の時。
二度目は医師7年目の時。

休職と復帰を繰り返したことによって、自分自身への評価や人生観が大きく変わりました。今回は、そのことについて書きたいと思います。


一度目の休職。仕事の挫折。

最初に仕事を休んだのは、社会人5年目の冬でした。
当時の私は、ある専門病院で勤務していました。そこでは少し特殊な、専門性の高い仕事についていました。仕事はとてもやりがいがあり、学びも多く、貴重な経験でした。

ですが専門性が高い分、仕事におけるプレッシャーも強く感じていました。なんとか上司の力を借りたり、勉強をしたりして日々の業務をこなしていましたが、次第に、求められるレベルの医療を提供できていない、自分はここにいてはいけないと感じるようになりました。

数ヶ月続く不眠と、一ヶ月近く治らない風邪。連日飲んでいた風邪薬と痛み止めで慢性的な眠気や気怠さを感じていました。

そんなある日。「もうだめだ。このままでは患者さんを危険に晒してしまう」と思い、その場で上司に話をし、翌日から仕事を休むことになりました。

それが最初の休職でした。



一度目の復帰。「元通りの自分」になろうとした。


幸いなことに2ヶ月後、私は別の職場に復帰しました。

復帰した私は「以前と同じように、できれば以前よりもパフォーマンスを出せるように」と頑張りました。病気になったことに後ろめたさを感じていたのだと思います。休職した自分は他の人より劣っている、だから他の人より結果を出さないといけない、ちゃんと働けると認めてもらわないといけない。そうに考え、焦っていました。

ここで働けなくなったら、次はどこで働けばいいのだろう。病気持ちの自分を継続して雇ってくれる場所なんてあるのだろうか。無職になったらどうやって生きていけばいいのだろうか。

働く場所を守るため、私は必死で「働ける自分」になろうとしました。病気になったけれど、薬物治療は続けているけれど、それでもちゃんと働ける。朝早くに出勤して、居残りもできる。月4〜5回の当直もできる。多少のことは一人で解決できる、無理も効くし、研修医の指導もできるのだ、と。


それでなんとか、仕事はしていました。

疲れることはあるけれど、帰宅して布団に倒れて翌朝まで起きられないことも時々あるけれど、それでもなんとか毎日をやり過ごしていました。

そんな生活を続けてしばらく経った頃、妊娠が発覚しました。



二度目。育児休業という休職。

妊娠がわかってから半年後、私は育休に入りました。

育休に入った時、私は仄かな期待を抱いていました。
それは、もうすぐ出産できる、そうしたら自由になる、という期待。

今はお腹の中に子供がいて、全てがこの子を中心に動いているけれど、出産したら自由になる。悪阻や妊娠にともなう様々な辛い症状から解放される。食べたいものを食べて、行きたいところに行って、やりたいことができる。だから産むまであと少しの我慢、と。

ですが、この期待は見事に裏切られます。
当たり前ですよね。出産したからと言って、自分一人の生活に戻るわけではありません。出産したら今度は育児が始まります。自分の時間を自分のためだけに使うなんてできません。

もう二度と、決して、出産前には戻れない。
出産して、体が軽くなって、つわりがなくなっても、どうやっても妊娠前には戻れない。毎日休みなく働いたり、夜まで残業したり、毎週のように当直したりできない。どんなに働きたくとも、どれほど頑張っても、限界がある。

自分の努力だけではどうしようもない現実に、私は打ちのめされました。

出産後、育児が始まりました。自分の時間を子供に差し出す日々が始まりました。子供は私の体から出ていきました。けれど今度は、子供を背負って生きていかなければなりません。そんな状態ではとても、出産前のように働くことはできませんでした。

どれだけ努力しても、以前のような働き方には戻れない。昔の自分が目指した、多少の無理も厭わないような、自分を追い詰めるような働き方はできない。


認めたくはなかったけれど、それでも「自分には限界がある」ことを認めるしかありませんでした。



二度目の復帰。「できない自分」ができること。

今年の四月、私は育休から復帰しました。

平日フルタイム勤務、月に1回の日直。
子供の熱発で早退や遅刻のリスクあり。

そんな条件で、私は今、仕事をしています。

復帰をする過程でに、私は「ここまでならできます」という線引きをせざるを得ませんでした。なんでもできます、とは言えません。でも、こういう状況なら、ここまでのパフォーマンスができます。この日であれば残業はできます。でも、こういったリスクや可能性があります。それらを全て棚卸して、開示して、上司に伝えるしかありませんでした。

元通りの自分を目指すのは、諦めました。
それはもう、私一人の努力ではどうにもならない事だからです。


一度目の復職時は「まだまだ出来る」と信じて自分を追い込みました。
ですが今度は違います。「出来ることに限りがある。だから出来ることを精一杯やろう。体を壊してまで仕事や育児をしてはいけない」と考えるようになりました。


自分の限界を受け入れられたおかげで、今はむしろ、産前より健康的な生活を送っています。睡眠時間を確保し、息子の離乳食を作るついでに自分の食事も作り、ものを減らし、タスクを減らし、夫と会話し、1時間でも自由な時間を作る。そんな毎日を過ごしています。

あれもこれもできると考えると、あれもこれもやらなければと思いがちです。
でも、その思い込みから離れたことで、かえって自分にできることが広がったような気がします。


休職2回。復職も2回。

時間はかかりましたが、良い気付きを得られました。



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