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ヒゲ脱毛は、現代版『神話の法則』かもしれない。

突然だが、僕はヒゲの脱毛に通っている。理由は肌が弱く、剃ると毎朝血まみれだったから。

通い始めてもう時間も経ったので、ずいぶんとヒゲ事情は改善されたのが、そんなことはどうでもいい。

僕はずっと、このヒゲ脱毛にオプションでつけた『笑気麻酔』について、誰かに語りたかった。笑気麻酔は、ヒゲ脱毛をまぎれもないエンターテイメントに昇格するということを。

そしてこのエンタメ体験が、僕に現代版『神話の法則』のあり方について、天啓を与えた。(神話の法則はあとでも雑に説明をするが、ざっくり言うとストーリーづくりの手法だ)

取り急ぎ、結論だけを書かせてもらうと。

・笑気麻酔を使ったヒゲ脱毛はめちゃめちゃ楽しい
・なんで楽しいのかなと思ったら、神話の法則に従っているからだった
・そして神話の法則は、昨今の流行コンテンツを鑑みるとアップデート(『全能感の獲得』と『始まりへのループ』の追加)されている

以上だ。
さぁさぁ。誰の得にもならないが、毒にもならない記事の始まりだ。

神話の法則2

『笑気麻酔』とは、吸入器によって吸い込む麻酔のこと。詳しくはこちらのサイトがわかりやすい。

もちろんリンクを読んでくれないことは分かってるので、粗い要約をすると、お酒を飲んだときのようなフワフワ感が得られるのに、赤ちゃんが使っても問題ない(という説明を僕は受けた)安全性を持つ、奇跡の麻酔だ。

脱毛のなかで、顔面、特にヒゲはもっとも毛根が集中しているため、痛みが強い(という説明を受けた)。そのため、痛みを和らげる目的で笑気麻酔が使われるのだ。

字面だけ見ると、笑い茸的な、吸うと笑いが止まらなくなるヤバイやつっぽいのだが(ちなみに笑い茸は幻覚作用しかない)、これがなんとも不思議なことに、少し吸うだけで本当に頭がフワフワしはじめ、吸入器を外せば2,3度の深呼吸でシラフに戻れる。本当に画期的な代物なのである。

ただ、どうやら僕は相当に麻酔が効きやすい体質らしく、例えるなら家に帰ってシャワーも浴びられないくらい泥酔したときと同じくらいの感覚に陥る。居酒屋でもない、普通の脱毛クリニックでする泥酔体験。この非日常感が実に堪らないのだ。

法律に疎いので実現可能性はさっぱりわからないが、もしも笑気麻酔バーがあったら週1で通いたい。サラリーマンが外回りから帰社する前に、ふらっと笑気麻酔バーに立ち寄る。呼吸器をつけたサラリーマンが各々笑気麻酔を吸い込み、焦点の合わない虚ろな目でスマホを弄り、時間になったら呼吸を外し、数秒でシラフに戻って社会へ復帰していく。素敵だ。

はやく神話の法則の話もしたいのだが、僕の脱毛中の笑気麻酔体験があとで鍵になるので語っておきたい。

僕は脱毛の前にピーリング(なんか酸性度が強い液体を塗って角質を剥がす作業。よぶんなものを落とし脱毛をしやすくするらしい)という行程を挟む。目に水泳ゴーグルのような重しを乗せられ、笑気麻酔を待つこの時間がたまらなく好きだ。

ピーリングが終わり、いよいよ笑気麻酔の吸入器をつけられる。大概鼻の位置が合わないので自分で万全の吸い込みができる位置に直す。

かならず麻酔を流し始める前に、担当のスタッフさんから「これまで笑気麻酔で気持ち悪くなったことないですか?」と確認がされる。

やや食い気味で「大丈夫です」と返す。もうワクワクが昂まりすぎて、誰も僕を止められない。はやく、流してくれ。

定期的な電子音とともに「プシュー」というガスの送られる音が始まる。

ここで愚かにも、毎回おなじことを思う。「あれ、今回効きが弱いな?」
そう思ったのも束の間、笑気麻酔の猛烈な酔いが全身を襲う。

まず体に起きる変化は唾液への違和感だ。節度なく酒を飲んだことがある人なら分かると思うが、泥酔時の唾液のネバつきはほんとうに気持ちが悪い。お酒が苦手な人でも、よく終電のホームに倒れ込んで唾を吐きちらす御仁を見たことはあるだろう。

あの感覚がリフレインする程の泥酔感であるにも関わらず、酒を飲んでないので唾液はさらさらなのである。この違和感が、想像以上にすごい。さらに麻酔が効いてくると、こんどは唾液を甘く感じ始める。

笑気麻酔ヤバくねえか?と思っただろうか。こんなの、まだまだ序の口だ。

ますます麻酔が効き始め、仰向けに寝ているはずが、重力の感覚が無くなっていく。自分が自分でなくなっていくような倒錯的感覚に興奮を覚えつつ、いつもここでひとつの不安がよぎる。このあと必ずスタッフさんに「笑気麻酔効いてきましたか?」という質問をされるのが、この返答がキチンとできるのか。酔ったあまり大声で返事をしてしまうんじゃないかと怖くなり、鼓動が高まっていく。

笑気麻酔初心者だった頃はこの不安が大きすぎて、質問される前に小さな声で「大丈夫です…大丈夫です…」と繰り返し発声練習をしていた。スタッフさんも気味が悪かったに違いない。申し訳ない。

しかしながらさきほどの唾液の現象と同様、脳はキマっているが身体は正常なので、普通に返答できる。毎回恐る恐るの声で「だ、だいじょうぶです」と返している。

さぁ、ここからが笑気麻酔の真骨頂だ。いざ脱毛が始まると普通に痛いので、この麻酔吸入直後に比べて、非現実的体験は薄れてしまう。つまり、吸入後脱毛前のいまが一番キマってる。

このときだけに得られる体験が、周辺環境音の音楽化である。

クリニックは薄い壁を隔てて隣の部屋でも患者たちが脱毛を受けているので、さまざまな音が鳴っている。脱毛機が発するピピピという電子音、ガスを送り込む音、廊下を歩く人の音、さらには駅も近いので、電車のガタンガタンという音なども。

これらすべてがこの世界のどこにも無く、再現もできない、唯一無二の音楽に昇華されていく。

目を閉じているのにぐるぐると回る視界、即興で作られた脱毛周辺音楽、そして重力から解放された身体。そう、笑気麻酔とはトランスなのだ。

このとき脳裏に浮かぶものがある。子供のころに読んだ百科事典に載っていた、アフリカのシャーマンたちだ。

彼らは幻覚作用のある植物を服用し、音楽を鳴らしながらトランス状態に入り、占いを行なっていたという。子供心ながらに、インチキだそんなものと義憤に駆られていた。(当時僕のなかのシャーマンとはオーバーソウルのことだった)

しかし、僕は知ってしまった。たかがヒゲ脱毛の施術中に、人はトランスができると。麻薬もサウナもやらないので、正式なトランスがどういった状態なのかは知らない(正式なトランスってなんだ?)。しかし、はるか昔のアフリカのシャーマンたちに思いを馳せてしまうだけの力を、脱毛笑気麻酔体験は秘めている。

このあと始まる脱毛については痛いの一言なので詳しくは割愛する。ただ特徴的なこととして、スタッフさんはいつも「一緒にヒゲ脱毛を乗り越えている」的なスタンスで声を掛けてくれる。

毎回担当スタッフさんは違うのでおそらくマニュアルなのだろうが、これは非常によくできていると思う。脱毛時は普通に憎悪が芽生えるレベルの痛みなので、もしも「ほら、さっさとやるよ」みたいな事務的な態度で脱毛を痛みを与えられたら、文句を言い出す患者が現れるなどのトラブルになる可能性もあるのだろう。なのでいつも脱毛を行う前には「いきますね、がんばりましょう、ハイ」という掛け声と、終わったあとには「痛かったですね、だいじょうぶですか」というフォローの言葉がはいる。

こうして痛みを耐えたあと、僕はイオン導入をされる。原理も効果もさっぱり分からないが、濡れた紙を巻いた冷たい金属製の棒を手に握らされ、顔にあてた保湿パック的な物の上からイオン流し入れるらしい。

このイオン導入に入る前、笑気麻酔の呼吸器とは、泣く泣く別れを告げることになる。しかし痛みに耐え切った自分への誇らしさを胸に、僕は大人しくイオン導入を受け、帰路についていくのだ。

神話の法則3

非常に長くなったが、ここまでが僕の脱毛&笑気麻酔によるトランス体験だ。お分かりいただけただろうか?これらすべてが、神話の法則に当てはまっていたということを!!!

神話の法則とは?という話をさせてください。そもそもこの本のことだ。

内容については、こちらのサイトが分かりやすい。

もちろんリンク先など読んでくれないと思うので、僕の独自解釈をもとに説明をすると、

『万人ウケする王道ストーリープロット』が神話の法則だ。

とある神話学者が世界中の神話を調べた。すると地域も言語も違うのに、多くの神話には一定の法則(プロット)があったのだ!!!というのが神話の法則の概要だ。

僕は中学二年生のころ、しっかり厨二病だったので神話にはたいそうハマった(魔探偵ロキのせいだ)。いろいろ読んだなかでも、とくに北欧神話と日本神話はこの神話の法則通りのエピソードが多いと思った。

さぁ、ここから本題。
神話の法則とは以下のストーリープロット(あらすじ)のことを指す。

1.日常の世界
2.冒険へのいざない
3.冒険の拒絶
4.賢者(師)との出会い
5.第一関門突破
6.試練・味方・宿敵
7.最も危険な場所への接近
8.最大の試練
9.報酬
10.帰路
11.復活
12.帰還

それぞれ具体例が無いと意味が分からないと思うので、3つの物語を当てはめて行く。
・エヴァンゲリヲン序
・ハリーポッターと賢者の石
・ガンダムSEED
このあたりが説明しやすい。あなたがどれか一つでも知っていますように!

1.日常の世界
だいたいの物語は日常シーンから始まる。
シンジくんはなにも知らない中学生、ハリーはマグルの家の物置で暮らす子供、キラ・ヤマトは普通の工科高校の学生として冒頭は描かれている。

2.冒険へのいざない
そんな主人公たちは、突如冒険という名の非日常に巻き込まれる。
シンジくんはゲンドウからの電話で使徒との戦いへ、ハリーはホグワーツからの入学案内で魔法の世界へ、キラはZAFTの襲撃でコーディネーターとの戦争へ、それぞれ非日常へ踏み出すきっかけとなる。

3.冒険の拒絶
主人公が非日常の世界へいくことを、本人がためらう、もしくは周囲の人間が引き止める。
シンジくんはエヴァに乗りたがらない、ハリーはダーズリー家に邪魔をされ、キラはマリューさんにガンダム乗るなと諭される。
(でも最近の物語は嬉々として非日常に行く主人公も多い、理由は後述)

4.賢者(師)との出会い
主人公は自分を導くor追いかけたくなる存在に出会う。
シンジくんにとってのミサトさんや綾波、ハリーにとってのダンブルドア、キラにとってのフレイやムウさん。
ロードオブザリングなら、ガンダルフ。
スター・ウォーズならマスターヨーダ。千と千尋ならハク。鬼滅の刃なら冨岡さん(鱗滝さんも)……
物語を進めやすい賢者の存在はほぼ必須なので、具体例の枚挙に暇がない!!!
個人的には、賢者は途中で死んで主人公の成長の糧になるのが好きだ。(グレンラガンとかね)

5.第一関門突破
主人公は敵を初めて倒す。
シンジくんはサキエルを、ハリーはクィディッチでマルフォイを、キラはミゲル(cv.西川貴教)をなんとか倒し、少しの自信を手に入れる。
このときの盛り上がり & 少し暗雲たちこめる感じが僕は大好物だ。(謎の強キャラのシルエット出たり、悪の組織が主人公の存在に気づいたり、物語が大きく進んでいく感じがする)
その点、「ぼくらの」というアニメはすごかった。第一関門突破後即激鬱。近頃は神話の法則をどこで裏切るか、によって話題性が作られやすいようにも思う。(まどマギのマミるシーン等)

6.試練・味方・宿敵
文字通り、新たな試練が生まれ、味方も増え、そのぶん敵も増えていく。
週刊連載の漫画で一番長く描かれるところだろう。
エヴァ序ではなくテレビ版の話になってしまうが、味方になり、敵になり、試練にもなる。カヲルくんはまさにこれを凝縮したキャラだったのかもしれない。

7.最も危険な場所への接近
クライマックスの始まりパート。要はラスボスへと近づいていく段階。
エヴァ序ならヤシマ作戦開始(アツい!)、ハリーポッターと賢者の石なら巨大チェスのシーン(アツい!!)、ガンダムSEEDならミーティアを装備して最終決戦にいくところだ(アツい!!!)。

8.最大の試練
さぁ!さぁさぁさぁ!いよいよラスボス戦!基本主人公が勝つとわかっていながらも、ここに到るまでのストーリーを蓄積してきた僕らはもう目が離せない!
ラミエルの極太ビームが零号機を焼いている!ヴォルデモートに操られたクィレル先生がアバダケダブラを射ってくる!プロヴィデンスのドラグーンにフルボッコにされるキラ!そんな苦境を乗り越えて主人公たちはしっかり勝利を掴む。

9.報酬
壮絶な戦いを終えた主人公たちは、なにかしらの報酬を得る。物だったり、立場だったり、形はさまざまだが、望んでいたものが手に入る。
シンジくんは綾波の笑顔を手に入れ、ハリーは賢者の石を手に入れ、キラは平和を手に入れる。

10.帰路
めちゃくちゃややこしいのだが、帰路といいつつ帰路じゃない。
倒したラスボスの置き土産を処理するパートだ。
ここが無い物語も多い。エヴァ序はラミエルを倒したら宇多田ヒカルが歌い始めるし、賢者の石もクィレル先生が焼け始めたらヴォルデモートは尻尾を巻いて逃げていく。一方、ガンダムSEEDは非常に分かりやすく、ラスボスのクルーゼを倒したあと、もう一人の主人公アスランが、地球に向けられた大量破壊兵器を止めるために自爆攻撃をしかけ、すんでのところで逃げ出す。
「せっかく敵の本拠地乗り込んでボス倒したのに、こいつ自分が負けたら自爆するようセットしてやがった!(しかも即爆発じゃなくて逃げられるかどうかギリギリに)」というのがこの帰路だ。
ちなみにNintendo64のゲーム『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のラスボス戦はまさにこのままの設定だ。ガノンを倒しにガノン城へ赴き、ようやく倒せたと思ったら城が崩れ始める。ゼルダ姫を手を引き、制限時間内に脱出できれば無事クリアとなる。
こどもの頃「せっかくラスボス倒したんだから休ませてよ任天堂!!!」と思っていたのだが、たしかにクリア後の達成感はより増していたように思う。

11.復活
基本的には帰路でラスボスの置き土産のせいで死にかけた主人公を観た観客が「え、主人公死んだ、マジ?」となったところで奇跡の復活を成し遂げ安堵と感動の涙を流させるところだ。前述のガンダムSEEDで言えば、アスランが大量破壊兵器を自爆で破壊し「え?アスラン死んだ?」と思わせておいて無事に脱出を決めるところが復活にあたる。

神話の法則では

8.最大の試練→9.報酬→10.帰路→11.復活

という時系列であるという記載になっているが、最近は

8.最大の試練(10.帰路→11.復活)→9.報酬

のように、最大の試練のなかで帰路と復活が内包されていることもある。
エヴァ序だと分かりやすく

【8.最大の試練】ラミエルとの対決
【10.帰路→11.復活】倒した!と思ったのにコアが別にもあってヤバいビームきた!綾波死にしそう!…と思ったけど勝った!
【9.報酬】笑えばいいと思うよ

といった形で最大の試練のなかに帰路と復活が内包されている。
どちらが良いとかはないと思うが、尺が限られた媒体にはこのエヴァ方式が合い、ゲームのような尺が関係ないものは帰路→復活パート取りやすいのかもしれない。ガンダムSEEDも尺制限があるアニメという媒体だったので、W主人公の片方が最大の試練、もう片方が帰路→復活パートという同時進行的な描き方になっていた。

12.帰還
ここまで読んでくださってありがとうございます。ここがこのnoteの第一関門の終わりです。(絶望しましたか?)
こうして冒険を終えた主人公たちは日常生活へと帰っていく。
エヴァ序は綾波笑顔後即宇多田なので描写は無いが、テレビ版で言えば束の間の学生生活編に(アスカ来日)、ハリーは汽車に乗ってダーズリー家へ、キラはラクスと隠居生活に入っていく。

はい!ということで神話の法則、ご理解いただけただろうか?
要するに神話には長い間語り継がれるだけの理由があって、それはストーリーの面白さだった。この面白さは万人共通で、現在でも映画・アニメなどに活かされている。ということだ。

そしてようやく本題の本題(最大の試練)だが、察しの良い読者のみなさまはすでにお気づきのことかもしれない。やはりヒゲ脱毛笑気麻酔は、この神話の法則に当てはまるエンターテイメントなのだと。それぞれ照らし合わせてみる。

神話の法則4

1.日常の世界
僕はサラリーマンとして平凡な日常(痛み無い日々)をすごしている

2.冒険へのいざない
脱毛の予約が僕のことを笑気麻酔による非日常体験へと誘う

3.冒険の拒絶
麻酔の効き始め、僕は笑気麻酔によっておかしな行動をとらないか不安になる

3EX.全能感
不安をよそに、しっかりキマって非日常体験を楽しむ
ここがこのnoteの肝だ。昨今の風潮は、まず冒険のはじまりに全能感がある。つまり俺TSUEEEEパートだ。(もうそんな言い方しないのか?)
リスク回避の時代だからこそ、冒険に足を踏み出すのには、まず主人公(および視聴者・読者)に全能感を与えることが、感情移入のしやすさにつながるのかもしれない

4.賢者(師)との出会い
担当スタッフが僕に優しく声をかけ導く

5.第一関門突破
麻酔がガンギマリのなかで、不安になりながらも正常な応答をすることに成功する

6.試練・味方・宿敵
ヒゲの各部位の痛みという試練を、笑気麻酔を味方に乗り越える。
このときスタッフさんは言葉で応援してくれながら、とんでもない痛みを与えてくる、味方であり敵でもある。(つまりカヲルくんだ!)

7.最も危険な場所への接近
これはヒゲのなかでもっとも痛い鼻下にいく直前だ。
なんと鼻下を脱毛する時はマスクをつけられないので、笑気麻酔の吸入器を外すことになる!この心もとなさは計り知れない。
かならずスタッフさんからは「マスク外すので、いまのうちに笑気麻酔をしっかり吸い込んでください」とアナウンスされる。
このときする深呼吸は、まさにラスボスへ立ち向かう主人公のそれだ。

8.最大の試練
鼻下を脱毛しているときだ。ガンギマリ状態から痛みで即シラフになる。(いや、もしかしたら効いていて、痛みは和らいでるのかもしれない)
そして僕は痛みに耐えきり、放心状態でイオン導入を受けることになる。(基本的にビタミンC一択だ)

10.帰路
ここで順番が前後する。僕にとっての帰路は、脱毛後の肌荒れだ。猛烈な熱を毛根に与えて生えなくさせているので、ただでさえ肌の弱い僕は、施術後一週間は肌荒れに悩む。まさにラスボスの置き土産だ。

11.復活
1週間後、そこには元気に暮らす関の姿が!(アンビリーバボー再現VTRのこの定型文はすごいと思う)
そこまで大きな帰路でもなかったので、復活の感動度合いもそこそこだ

9.報酬
肌荒れが治ると同時に、ヒゲがポロポロと抜け出す。2,3日もすれば本来の目的であった、髭剃りのいらないツルツルお肌が手に入る。

12.帰還
こうしてぼくはまたサラリーマンとしての生活を始める

12EX.ループ
ここも新・神話の法則のポイントだ。
オチとして、実は最初につながる、という手法は映画でもよく見られる。
毛は一度脱毛しても、また生え変わりの周期がくるので、根絶やしにするまで定期的に通うしかない。また3ヶ月後くらいには、1からやり直すことになる(もちろんだんだん薄くなっていく)
日常に戻れたと思ったが、それは次の脱毛との戦いまでの束の間の平和だった……続編が期待したくなるいい終わり方だ。


神話の法則5

……いかがだろうか?ありふれたヒゲ脱毛の行程が、笑気麻酔によって、現代の流行コンテンツにも見受けられるような『新たな神話の法則』まで盛り込まれた、すばらしいエンターテイメントになってはいなかっただろうか。

安心してほしい。このnoteで語りたかったことは、すべて語り終えた。
ラスボスよろしく、帰路としてさらなる駄長文を押し付けられないかとヒヤヒヤしていた方はご安心を。僕ももうぶっちゃけ書き疲れているので、これにて帰還パートとさせていただきたい。

この長過ぎたnoteの報酬が『現代版神話の法則は、全能感の獲得と、始まりへのループが追加されているかもしれない』などという、なんの後ろ盾もない仮説の提供ではなく、忙しいあなたへのほどよい睡魔の提供になっていることを祈りながら、ここまでお読みいただいた御礼を申し上げたい。

読んでくださってありがとうございました。おやすみなさい、よい夢を。


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