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『2ひきのねこ』

中年になってから、絵本を買うようになりました。
自分の家に対象年齢の人たちが出現したからですが、いざ絵本を選ぼうと思っても、日本の絵本、外国の絵本、昔から読み継がれている本、新しく書かれた本、美しい本、面白い本、教育的な本・・・その海はあまりにも広くて深くて、何の手がかりもなしに漕ぎ出すのは非常に心許ない。
更に、読み手の年齢によって適切な文字数とか文章の長さなどというものもあるようで。
ついでに言うと、だいたい一冊1,000~2,000円くらいだから、手当たり次第に買うというわけにもいかない。

「子供の頃に好きだった絵本を」
というのも、一般に流通している絵本ではない絵本を読んで育った私には通用しない。
とにかく「絵本」についてなーんにも知らないので、絵本出版各社の目録を取り寄せてみたりもしたし、ネットで「〇〇才におすすめの絵本」なんて記事も検索して読むし、雑誌の絵本特集とか(著名人50人がおすすめをそれぞれ3冊ずつ挙げているやつとか)、絵本専門書店の人のエッセイとかまで読んでみて(真面目だ)、「良さそう」はたくさん見つけられたけれども、「よしこれを買おう」のためには、もう少し絞り込まなければいけない。

これは何か、自分なりの基準を作らねばと思い、今のところ自分で買う絵本は
「とにかくビジュアル。絵柄が美しい・整っていると思うもの、装丁やデザインが優れているもの」
を選ぶことにした。
ビジュアルが好み、というのは私の主観なので、それだけになると偏った好みの押しつけになってしまうわけですが。
(というわけで、友人など違う目線の方から絵本をもらったりするのが大変ありがたい)

美しい絵本を選ぶのは楽しいです。
気をつけねばならない点としては、どうしても本を選ぶときに「まだちょっと難しいかしら」等と考えて、コレはという本を後回しにしてしまったりするのですけれども、絵本も普通の本同様、わりとあっさり絶版・品切れになりますね。
絵本というのは昔からの定番が多いので、たとえば今わが家にある『おおきなかぶ(福音館書店)』は、1966年初版でうちのは196刷(!)だったりするので、なんだか永遠に売っている気がしていたけれども、当たり前だがそうならない本のほうが多いのですよね。
というわけで、美しいと思った絵本は「そのうち買おう」とか言ってないで、思い立ったら対象年齢にかかわらず買っておいたほうが良いようです。
要するに、本当に自分が買いたいだけなのね。そうです。自分が買いたいだけです。

というわけで、美しい絵本の一冊。
『2ひきのねこ』(ブロンズ新社)

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イラストレーター、宇野亞喜良氏が文章も絵も手がけている絵本です。
児童画・児童書というイメージとはちょっと違う、AQUIRAX先生の誰にも似ない、美しいイラストレーション。

すべてのページの絵が、オシャレで素敵で、見返しのページすら素敵。主人公の猫の「ボンボン」と飼い主の「ももちゃん」がペアルックだったり、主人公達の背景にジャンコクトーとピカソがさらっとお茶してたり。

ひらがなで1ページに5行くらい。
言葉遣いも大変優しく、3歳くらいの子供でも(いちおうは)理解できる内容・・・なんですけれども。
しかしとにかく切なくて、なんていうか、たぶん本当の本当は大人向けの絵本だと思う。それとも、子供の方が響くんだろうか。

ともあれ、買ってから少し積んでおいて、大人向けかなぁと思いつつ子供に渡しましたが、案外気に入って読んでいます。


宇野亞喜良先生と言えば、10年位前に銀座の小さなギャラリーで、ハガキより小さいくらいの小さい作品を並べた個展を見に行ったことがあります。
ボールペンと色鉛筆のさらっとした十二宮の絵が中心で、とても素晴らしかった。
少し背伸びすれば買えない値段ではなかったのに(たとえば、冬の短いコートとか、国内一泊旅行とか、そのくらいの金額だったと思う)、買わなかったことを今でも後悔しています。

と、同時にそのときに画廊主のおじさんに、
「あなたあの、〇〇さんですよね?」
と、年齢も顔も体重も大幅に違う女優さんに間違われ、女優さんなんて悪い気はしないが、いや、うれしいとかうれしくないとか以前に、「画廊主」ってもっと目利きというイメージだけども、そんな間違えてていいのかな・・・?と面白くなっちゃったことを思い出します。
性別しか合ってないよ、おじさん。

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『2ひきのねこ』

出版社: ブロンズ新社
言語: 日本語
ISBN-10: 4893096397
ISBN-13: 978-4893096395
発売日: 2017/11/9

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