落ちていく「推し、燃ゆ」宇佐見りん
こんばんは、となカエです。
ベストセラーなので、読んでみた。
生きることが苦痛な主人公が《推し活》してる話。
作品内容
人が死ぬかどうか
主人公のおばあちゃんが死にますが、本編の主軸ではありません。
感想★ネタバレ★
発達障害なのか、グレーゾーンなのか、それとも性格なのか、《普通》ができず、どこにも所属できない主人公がファン活動=《推し活》を中心に生きる。
推し活する力はあるのに、生きることを放棄してる主人公に腹が立つ。
ここまでではないし、推し活もしたことはないけど、生きることを放棄してる時期があった自分と重なる。
当時は絶望しかないし、何もかも嫌だった。
今思えば、視野狭窄に陥ってたけど、当時は必死だった。
そんな自分に重なるから腹が立つ。
家族からの当たりも主人公視点なので少しキツいと思わせるところがあるが、正直普通の反応だと思う。
金額は分からないものの、一人暮らしの主人公に3回ほどでもお金振り込まれてるだけ優しい。その後も少額ながら振込は続いている。
推し活に自分のバイト代を全額使えるのは最高に幸せではないか。
自分ことしか考えない。考えてない。
そんな狭い、でも必死に推し活だけで生きてる偏った思考を表現してる。
刹那主義のような本。
最後の方に
「生きているだけなのに」って繰り返してるけれど、そーゆーことじゃないんだよ。
ただ呼吸してるだけなのに
ただご飯食べただけなのに
生きてるって言っていいのは、本当に生きることに必死な人だけだよ。
健康なら、一人暮らししてるなら、付随して《片付ける》《食い扶持を稼ぐ》が基本的にはついてくるんだよ。
「生きてるだけ」ってお金がかかるんだよ。
推し活で、思考停止してるように感じられた。
そして後半、生活・メンタルが崩れて高校を中退する。
親からは就職するように促されるが、電話を数件しただけで就活していないことをとがめられる。
「これ以上養うことはできない」と通達される。
父親は、ひとつひとつ解決していこうと現実的なことを述べる。
「進学も就職もしないなら、期限決めてやろう」という言葉が、どこか気に食わない主人公。
たぶん気持ちはこう。
「何も知らないくせに」「私の気持ちなんてわからないくせに」
病気の診断を盾に「私は働けないんだよ」という。
診断があっても、働かないといけない。
親がその方面の就職サポートに協力的ではないところは、少し悲しい。
その後、亡くなった祖母の家で一人暮らしする。
そして、推しが引退する。
チケットを自分でとって、電車にも乗れて、ライブにも行ける。
その内容を、ブログにも書いて、他のファンと交流もする。
これで「病気だから働けない」と言われて、納得できる人がいるのだろうか。
多分、会社やバイトではなく、創作活動でお金を稼ぐのが主人公の基質にあっているのではないかと思う。
恐らく、親に十分に愛されていないと主人公は感じている。
自分で自分を大事にしないといけないことに、まだ若いから気が付いていない。
全体的に、あまり気持ちのいい小説ではないけれども、少しの言葉に意味や背景・感情を感じるので、なんとなく読み終わった後もパラパラと手に取ってしまった。
まとめ
主人公の心情もさることながら、リアルに情景が浮かぶほどの表現力。
作品ジャンルとしては、個人的に好みではなかったけど、文章力に引き込まれました。
久しぶりに腹が立つ主人公の作品を読み終えた。
携帯小説的?な軽い文体で、するする読めます。
この文体も、《主人公》を表現してる一部なんだろうなと感じました。
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