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少年と虹に


最近、私は
ふとした瞬間に微笑むことがある。

母のことだ。

忘れたくないので書いておく。

母が病気になって、
字が不思議な形になって
次は書けなくなって
字が読めなくなって
塗り絵は一色になって
なんだか悲しそうな母を見て
私も悲しかった。

いずれ私を見て
「あなた誰?」
と言われる日まで
数える程だなと
覚悟をしようとしていた。
だけど
まだ60にもならない母に
覚悟なんて出来なかった。

今はもう話すことが出来ない母。
1度も言われなかった。

「あなた誰?」

聞くことは無かった。
今ならわかる。
母はとても優しいから
言わなかったんだ。

私の顔を見て
「わかる?」と聞くと
「ん?」という表情をして
「ともこだよ!ともこ」
「うん、ともこ、そうそう、ともこ!」
そうやって思い出してくれたような
合わせてくれていたような。
母の優しさだったんだなって
今わかった。

お母さん、わかってなかったんじゃん!
そうふと思い出しては微笑む。

「あなた、どなた?」

なんて聞かれたら
すごいショックだったろうと思う。

なんとなく合わせて
わかったふりして
ニコニコ笑ってくれた。

優しい母が誇りです。

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