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あの人に必要なもの


母が若年性アルツハイマー型認知症になって数年たった頃、やはり進行が早く、本人はもちろん、私を含めた周りは戸惑っていた。

そんな時ある人が
「お母さんは友達付き合いがないから余計進行が早まるんだ。だから友達付き合いさせた方が良い」と言った。

その人は介護に詳しい人だったので
素人で手探りの私たちはそれを信じた。
そして、それを本人にアドバイスのつもりで言ったり、地域の集まりに行かせようとしたりした。
母は、その約束の日が近付くと毎回体調を崩して予定をキャンセルした。

母は元々社交的で誰とでも仲良くなれるタイプだった。
小学校の養護教諭だから、いや、
小学校の養護教諭らしくないとも思えるような無邪気な面や、天然のような部分もあり、周りからは愛されているような人物ではあった。

しかし、お友達とご飯を食べに行ったり、旅行や飲み会〜というのは無いタイプで、たまにお友達の所へ行ったり来たりくらいだった。

趣味と言えば1人でディズニーの映画を見に行ったり、絵本や小説を読んだり、父に付き合わされたり。。。それも今思うと、母にとっては幸せだったんだと思う。

若年性アルツハイマー型認知症に冒され、変わる自分に不安な日々に、私たちは、私はなんて事を言ったんだろうと後悔している。

あのとき「友達付き合いしなよ、人と関わりなよ」
そんな言葉は彼女を追い詰めるだけだったと思う。彼女が欲しかったのは
「心配だよね、大丈夫だよ」それだけだったんだと思う。
「ゆっくり本でも読んで、休んで。なんかあったらいつでも言ってね」
その言葉だったんだ。

人の幸せは、本人にしかわからない。
人と関わることが幸せな人もいれば、苦痛な人もいる。
人と関わることが幸せだけど、苦痛な時もある。

自分の価値観を押し付けてはいけない。それは例え親子でも。

あなたの家族は今、あなたから見ると幸せじゃないかも知れない。
だけど、ご本人は今はそうするしかなくて、むしろ幸せだったりするのかも知れない。

いずれにせよ、やっぱり人に対して、アドバイスより何より大切なのは【共感・理解】だと思う。

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