未来の職業を10個考えてみた
我々は、先端テクノロジーが引き起こす大きな社会変革の入り口にいる。AIが人間の仕事を奪い、あらゆる業務の効率化、自動化が進み、社会の最適化は極限まで進んで行くであろう。一方、新たな仕事が生まれるという期待もある。加速するテクノロジーの進化によって、未来社会はどう変わり、どんな職業が考えられるのか。今は存在しなくて2030-2050年にはありそうな新たな人間の職業を10個考えてみた。
1. AI事故の調査官
凄まじい速度で進化するAI。自動車の完全自動運転(レベル5)や手術ロボットなど、人の命に関わる重要な作業を任せる方向に進んでいる。人間がこなすよりも、相当高い精度でミスなく動作するようになったとしても、事故がゼロにはならないであろう。事故が発生した場合、高度なAIの振る舞いを解析し、事故の原因を究明することは、かなりの難題となると思われる。これを行うのが、AI事故の専門調査官・アナリストである。AIシステムが学習したデータセット、各種パラメータの設定、動作環境、その他の複合要因などを分析し、事故の原因を解明、再発防止につなげる。
2. アバター操縦士
アバター・ロボット(分身ロボット)を遠隔において、離れたところから制御して、仕事をこなすことが一般的になる。自宅にいながら空き時間に仕事をしたり、時差を利用して地球の裏側の仕事をしたり、寒冷地や危険な場所、さらには宇宙の仕事をリモート制御で行うこともできるかもしれない。アバター操縦士は、新たな働き方となる。専門スキルが要求される医療行為や介護などは、アバター医師、アバター介護福祉士といった資格もできるかもしれない。人口減少が進む日本、地球の裏側から制御されるアバター人口で、労働力不足を補うことになるかもしれない。
3. ロボットの人格クリエーター
ロボットやAIは、機械の制御やデータの処理にとどまらず、人間的な作業もこなすようになる。人間とコミュニケーションするようになると、感情を表現したり、相手の理解、個性が重要になってくる。我々は、対話の相手に人間的な振る舞いを期待する。ロボットやAIに、こうした機能、いわば「人格」を設計するのが、人格クリエーターだ。対話の言葉の選び方、口調、表情、ちょっとしたしぐさなどに関係する。こうした表現の技術が進化すれば、ロボットは人格を含めたUIが重要になってくる。ユーザの好みに合わせた人格、ある仕事にふさわしい人格、企業の個性を代表する人格、といったさまざまなニーズがある。
4. 美食プログラマー
料理をつくるプロセスとは、素材からある手順にそって、調理器具を使い、順番に作業を進めていくプログラムのようなものだ。並行に作業を進め、時間管理と同期(タイミング)が重要である。キッチンがロボット化し、自動化できるようになれば、料理はロボットを制御するまさにプログラムとなる。美味しい料理を作る料理人の技をプログラム化する。さらに、分子レベルで料理を分析し、ロボットをミクロに制御することにより、これまでより精密な料理ができる(分子ガストロノミー)。美食を創作する料理人兼プログラマーが、活躍する時代となりそうだ。
5. サイボーグ専門医師
人間の機能の一部を人工物やコンピュータで補う人間拡張の技術が進展する。脳の神経ネットワークの情報を外部のコンピュータと接続できると、大きなブレイクスルーになる。脊髄損傷などで動かなくなった足、手指、腕などの運動を人工的な神経接続で可能にする。脳の神経細胞の老化による認知能力の低下を、外部のデバイスの補助によって、情報処理能力を補えるかもしれない。サイボーグ専門医師が登場。人間の脳が直接外部とつながることにより、考えたことが直接的にモノや人に伝えられるかもしれない。人類は、「人間の境界線」はどこまでなのかという課題に向き合うことになる。
6. ゲノムデザイナー
あらゆる生物で、ゲノムが解析されつつある。ゲノムとは、生物を形づくる設計図のようなものだ。ATGCの4種類の塩基対の配列で、人間の場合(ヒトゲノム)は30億個ある。ゲノムデータを大量に集めることにより、形質や特徴とゲノムとの関連が解析できる。農産物をゲノム解析することで、目的合った新たな品種をゲノム的に設計できるようになる。形、大きさ、色、味、寒さ耐性、砂漠でも育つとか、さらには植物工場で扱いやすくするなど、ゲノムをデザインする時代になる。そして、ゲノム編集技術を活用して、新たな品種の開発が加速的に進むようになる。
7. 生態系アーキテクト
人類は、これまでの環境破壊から、地球環境との調和へと転換する必要がある。長期的な環境維持には多様性が重要である。これからは、人間中心のシステムや街づくりではなく、すべての生物との共生を念頭においた生態系の設計へと向かって行く。地球を理解する生態系アーキテクトが必要になる。未知の部分も多い生物の生態系を研究し、データの分析、シミュレーションを行い、解決策を提示する。農地や森林などの生態系から、海洋まで多くの課題がある。未来の都市設計においては、自然エネルギーの活用、ゴミ処理、CO2の排出なども含め、循環型でかつ生態系全体を考慮する時代となる。
8. 宇宙職コーディネータ
宇宙が身近な時代になる。ロケット技術の進化、月面基地の開発、ゲートウェイ的な宇宙ステーションなど、宇宙開発が今後加速して行く。将来、宇宙ステーションでの仕事や、月や火星での仕事が生まれ、地球上でのあらゆる仕事が、徐々に宇宙でも必要になって行くと思われる。とは言え、宇宙環境への適性チェックや、リスクの正しい認識、何かあった場合の備え(保険とか)などが必要になる。これを行うのが、宇宙職コーディネータだ。本人が宇宙にいる間、地球での活動の代行も必要になるかもしれない。さてさて、どんな宇宙の仕事が生まれるのか楽しみだ。
9. チーフ・フィロソフィー・オフィサー(CPO)
これからの豊かな時代、企業にとってミッションと哲学が重要となる。その企業が大事にする倫理観、正義は何か、すべての活動の指針となるフィロソフィーを策定する。事業を通して、どういう世界を実現したいのか。人類の未来、地球の未来について、どういう哲学をもっているのか。その責任者が、いわば、チーフ・フィロソフィー(哲学)・オフィサーだ。ユーザ、株主、一般の人々も、そのミッション、哲学に共感することで、企業活動を応援する時代になるだろう。株主第一主義から脱却し、ミッション・ドリプンへ。利益追及の前に、どんな哲学を持っているか、存在意義が問われる。
10. 150年人生の設計カウンセラー
今のところ人類の最高年齢は、110-120歳くらいと言われている。どうやら、病気にならず、健康で長生きすると、人間の生物的な限界としては120歳くらいらしい。今後、がんなどの重要な病気をコントロールしたり、老化の仕組みが解明されたり、さらには人間拡張テクノロジーによって、我々はもっと長生きできるようになるだろう。人生150年も夢ではない。そうなると、人生設計は根底から変わってくる。さて、仕事は何からスタートするか、医者かエンジニアか、とりえず世界を放浪するか。人生設計カウンセラーが、多様化する人生の選択肢をアドバイスする。
以上は、多くの可能性のほんの一部ですが、皆さん、興味を持った職業はあったでしょうか。これからは、むしろ新たな職業を自ら創る時代、未来を考えるヒントに少しでもなれば幸いです。
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