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あかんたれ

成田凌がこんなにいい俳優さんだとは知らなかった。朝ドラ「おちょやん」の一平(ヒロイン千代の夫)を演じているのだが、その「あかんたれ」ぶりが新鮮だ。あのイケメンがずいぶん存在感を控えめにしているなぁ、と思っていたら、妻を裏切るという爆弾を抱えた役だったのだ。

昔から、関西のドラマはどうして「しっかり者のごりょんさんとあかんたれの若旦那」が好きなのだろう、そしてごりょんさんがあかんたれの息子(ぼん)を再生産し続けるのをどうして容認するような筋立てなのだろう、と思っていた。甘ったれの「ぼん」が、ただひたすらにしょーもない男に見えていた。

「おちょやん」の脚本家の八津氏が関西出身でないためか、一平のダメなところと悩みが腑に落ちるように描かれ、成田凌がそれをうまく演じている。千代の台詞に「男はちょっと何かあると女か酒に(逃げる)」というのがあるのだが、一平は、妻の千代と暮らす家庭と劇団が一体化しているから、脚本が書けない時に、逃げ場を他所に求めてしまった、捨てられた子犬のような眼をした灯子にふらっとはまり込んだ、とわかる気がした。あかんたれであることに違いはないのだが...

千代の父親であるテルヲについても、本当にひどい父親なのだが、わかる気がしている。テルヲは、超近視眼的にしか物事が見えない、その場その場を言い抜けることがすべてになってしまったのだ。娘の千代が「ほげたが達者」とされるのはおそらく父譲り。妻を亡くした喪失感、やりきれない貧しさ、酒と博打に溺れ、借金を重ねる...あとは金欠を逃れることを手当たり次第にやるしかなく、それでいっぱいいっぱいなのだ。最後に、自分でさんざんなめにあわせた娘に会いたくなる、という正直さにも違和感はない。

これからラジオドラマでの当郎(アチャコがモデル)とのかけあいで人気を博す、という筋書きがみえてきたが、どう締めくくるのか、あと2週間のドラマをとても楽しみにしている。

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