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人にさわること。そのロマン。

人をさわる仕事だけど、人に触れることについて真剣に考えたことがある人は少ないと思う。

触ることで相手になにが起こるのか。相手の無意識下でなにがおこるのか。

傳田光洋さんの本ばかりを読んでいた時期があった。聞いたこともなかったその内容に衝撃を受けて、繰り返し読んでいた。


皮膚感覚は自他を区別し、空間における自己の空間位置を認識させる。皮膚が自己意識を作っている、と言っても過言ではないでしょう。
傳田光洋著 皮膚感覚と人間のこころp106


表皮には中枢神経と同じ情報処理のための分子機械がある.....外部電場や温度、圧力といった物理的因子をも表皮が受け取り、それを身体全体に伝達できることもわかってきました。
傳田光洋著 賢い皮膚 p184

一般的には、神経の末端が温度や圧力、光などの感覚を受け取り、神経を伝って脳に届く。そして脳が判断し、神経を通じて各臓器に命令する。また脳の命令によりホルモンが出てそれが血流にのって運搬され、しかるべき所で作用すると考えられている。

しかしこれらの著書の中では、

表皮細胞に光や音、電場や圧力をも感じる機能がある。
さらに表皮細胞自身から情報伝達物質が放出されるなどして、表皮から脳や全身に影響を及ぼすことが最近の研究で明らかになってきている。

というようなことが書かれている。
(非常に濃い内容なので上手くまとめきれず...是非著書をお読みください。)

つまり皮膚自身が感じた、意識にまでも上らない感覚から、全身に影響が及ぶということだ。 皮膚は自律していて、判断し、他に影響を及ぼす。ただの皮ではなく、ひとつの臓器なのだ。

「さわる」は無意識と無意識のコミュニュケーション

上述したような意識にまで上らない表皮細胞での感覚や反応はもちろんあなたにも、わたしにもある。
つまりだれにも意識されない情報交換が、あなたの皮膚とわたしの皮膚の間でされている。

ほんの少し汗ばんでいたり、ほんの少し張りがあったり、ほんの少し電気的な違いがあったりするのかな。

夫婦や友人間であればそれでいいと思うけれど、施術者と患者となれば話は別だと思う。

施術者は、無意識下で情報交換がされていることを「意識」しなければいけない。

わたしが持つ微妙な緊張感や、この人苦手かもといった苦手意識、今日忙しいなあという憂鬱、今日の夕飯の献立の悩み、そんな些細なことももちろん言葉や態度に出さなくとも、皮膚には出てしまうのではないかと思うのだ。

だから、さわる前には呼吸を整えて、目の前のことに集中してからさわる。

あなたの少し張りのあった皮膚がふーっと緩んでくる。
自分を守る防御壁、防御センサーとしての皮膚がわたしを受け入れてくれたのがわかる。

そこからいろいろが始まっていく。
なによりそこをクリアしないと何をやっても上手くいかないと思うのだ。

肌をかさねる

傳田光洋さんは、著書のどこかで「肌をかさねる」という表現が好きと書いていた。

お互いの愛情が肌を通じて意識下にも無意識下にも伝わることを、肌で感じてこその言葉だと思う。

そんなふうにロマンがあるのだ肌に触るってことは。
そのロマンに敬意を払って、人にさわることにしている。


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