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介護職員が知っておきたい医療行為の基礎

現在は介護職員でも一部の医療行為が認められるようになりましたが、介護福祉士は医療従事者ではないため、明確に禁止されている行為もあります。

その線引きを十分に理解していないと、思わぬ事故や訴訟に繋がる危険性があるため、改めてここで整理をしておきましょう。

医療行為でないもの

厚生労働省医政局長通知によって、原則として医療行為ではないと考えられる行為について以下のような記載があります。

①水銀体温計、電子体温計により、腋下で体温を測定すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること

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デイサービス等では、日々電子体温計で体調確認をしているかと思いますが、これは医療行為ではありません。

②自動血圧測定器により血圧を測定すること

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これも体調確認として日々おこなうものですが、医療行為ではありません。
ただここで注意しなければならないのが、「自動血圧測定器」と表記されていることです、水銀血圧計での測定は聴診器を使用し専門的な知識が必要となるため、水銀血圧計での測定は医療行為に該当する可能性があります。

③新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを装着すること

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新生児に対して測定する機会はないとは思いますが、「入院治療が必要の必要がないもの」という記載には少し注意が必要です。

④軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)

専門的な判断や技術を必要としない点が少しややこしいですが、普段の日常生活で起こりうる怪我、私たちが「絆創膏を貼っておけばいいか」と感じる程度の処置と考えておけば良いと思います。
なお医政局長の通知には「切り傷、擦り傷、やけど等に対する応急手当を行うことを否定するものではない。」という記載があるため、緊急性のあるものに対する応急処置はおこなっても構わないと私は解釈しています。

⑤患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること。
具体的には、皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。
 1.患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
 2.副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
 3.内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な
   配慮が必要な場合ではないこと

⑤は長々とした文言が記載されていますが、ついおこなってしまいがちな「軟膏の塗布」「湿布の貼付」「点眼薬の点眼」「一包化された内用薬の内服」「坐薬の挿入」「鼻腔粘膜への薬剤噴霧」などに対する注意点の内容です。
これらは本人や家族の同意があり、なおかつ医師や歯科医師、薬剤師や看護師などと連携を図った上で介助をおこなう必要があります。

その他にも

① 爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を
  爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること
② 重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着し
  ている汚れを取り除き、清潔にすること
③ 耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く)
④ ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること。(肌に接着したパウチの取り替えを除く)
⑤ 自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと
⑥ 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて浣腸すること

などは医療行為でないとされていますが、特に爪切りに関しては注意が必要です。
高齢者に多い巻き爪を切る行為は、皮膚を傷つける危険性があり医学的知識も必要となるため、巻き爪は介護職員がおこなわないべきです。また白癬などがある場合には医療行為が必要となるため、爪の状態は十分にみておく必要があります。


今回は医療行為とされていない行為の概要を紹介しました。
この他にも、「たんの吸引及び経管栄養」が一定の条件のもとで介護職員が実施可能となるなど、今後の制度改正によっては介護職員ができる範囲が広がる可能性があります。

可能性が広がると同時に、医師や看護師との連携の必要性も高まってくるため、今後の動向には注目していきたいものです。


最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

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