「餃子とビールの日曜日」に込めた小さな小さな想い
ある日の日曜日。
その日の晩ごはんは
餃子と、味噌汁と、ごはんと、トマト
だった。
旦那さんが何気なく
「なんだかビールが飲みたくなるなぁ」
とつぶやいた。
私も旦那さんも、
お酒は外でしか飲まないので
お家にビールは常備していないけれど
その日はたまたま
実家でもらってきたビールが
1本だけ冷蔵庫にあったので
1本を半分こして飲むことにした。
そのビールは異様においしく感じた。
ビールを飲むことで
お家で食べる餃子が
何だか特別に感じられた。
「おいしい〜おいしい〜」
そう言い合う父と母をみて、
3歳の息子がビールをほしがった。
いたずら心が湧いてきて
ちょっぴり飲ませてみると
期待通りの反応が返ってきたので
私と旦那さんは笑った。
「週に1回、晩酌をすることにしようよ」
そう決めてから
何週間かはビールに合うおかずを
考えて作ってみたけれど
餃子に匹敵するおかずが
見つからなかったのと
考えるのが面倒になったのとで
日曜日は
「餃子とビールの日」というのが
定着していった。
これからも
週に1回。
1年間で、約48回くらい。
5年間で、約240回くらい。
10年間で、約480回くらい。
20年間で、約960回くらい。
餃子を食べて、
ビールを飲むかもしれない。
この習慣は
ずっとずっと続くかもしれないし
いつのまにか
なくなっていくかもしれないし
餃子に飽きて
違うおかずに変わっていくかもしれない。
それはわからないけれど
「こういうの、いいな」と思った。
もしこの小さな習慣が長く長く続いたとして
例えば、大人になって家を出た息子は
餃子を食べるたびに
私と旦那さんの顔を、
3人で食卓を囲む雰囲気を、
思い出して、
心をじんわり温めるかもしれない。
たまに行く遊園地や
たまに行く家族旅行や
たまに行く豪華な外食よりも
きっと深く深く心に浸透する
家族だけの小さな習慣。
お金をたくさん使って
刺激的で魅力的な場所に行ったり
ふだん食べないような物を食べたりして
「非日常」を味わうのは
もちろん楽しいけれど
気が遠くなるくらいの日数を
コツコツと家族で積み重ねた、
「何気ない日常」のパワーには
敵わないと思うのだ。
まだまだ3人家族になって
3年しかたっていない私たち。
そんなような小さな小さな習慣が
これからもっともっと
増えていくんだろうな。
そのことがうれしいな。
そう思った。
血のつながっていない
お互いがただ好きになって一緒にいる
私と旦那さんと
その間にたまたま生まれた息子。
小さな小さな人間関係のはじまり。
なんだか特別で深いような
家族のつながりだけれど
放っておけば
育まなければ
きっと簡単にバラバラになってしまう。
それをつなげ続けてくれるのが
数えきれない家族だけの
小さな小さな習慣なのかもしれないなと
思う。
たとえば
日曜日に餃子を食べてビールを飲む食卓。
金曜日は会社から帰ってきた
旦那さんの手にシュークリームの袋が
握られていること。
休日は3人で公園でブラブラして
疲れたら近くのコンビニで
甘いものを買って食べる、
そのときに座る三人掛けのベンチ。
夜暗くなって
お風呂に入ってから
楽な格好で夜道を歩いて食べにいく
あのハンバーグのおいしさ。
息子をねかしつけたあと
コーヒー牛乳とチョコレートをお供に
いっしょにドラマをみる、
夫婦だけの暗黙の習慣。
そんなような何てことない習慣が
心の深いところに
ハンモックみたいに
やわらかく積もって
家族をつなぎ続ける土台になるんだと
思う。
大きなことは続かないし
大きなことをしようとしなくていいんだと
思う。
小さなことを通して
家族一人一人がつながろうとする。
その場所で
同じ時間を過ごそうとする。
そのことが
すごくすごく大切なんだと思う。
家族が1番大好きで
お家が1番大好きな
子供のそんな時期は
たぶんそんなに長く続かないけれど
今日は日曜日で、餃子の日だから
お家に帰ろう。
そんなことがふと頭によぎって
外の刺激的なことが魅力的な
大人の階段をあがっている
途中であっても
ふと帰りたくなるような場所を
作れたらいいなと思う。
そしていつのまにかその食卓で
息子もビールを飲んでいたりしたら
おもしろい。
そんな想いをこめて
今週の日曜日もせっせと
餃子とビールを食卓に出そうと思う。