見出し画像

マッスーニッポンvol.1

皆さまこんばんわ。

湿った都会、肌に触れる空気が湿っぽくてなんだか嫌になってしまいますね。空気が重く、眠たくなってしまいます。雨なのか、晴れなのか、ジメリとした大気が空を覆っていますね。外に出ると額の汗を拭く会社員の方が目に入ります。

2019年ももう7月、新しい週の始まりは澱んだ雲と通り雨と供にやって参りました。

外を歩くと綺麗に咲いた紫陽花の花が上品に雨を謳歌しており、野良猫は宇宙を目指し階段を駆け上がるのでした。
熱々の珈琲を片手に歩く私の身体は少し気怠く、吸い寄せられる様に喫茶店に入りました。

店内は珈琲の香ばしい匂いとラッキーストライクの薫りです。私は一番奥のテーブル席に座り煙草に火をつけます。

本日はこちらコーヒーハウス『POEM 高円寺南口店』さんから記念すべき第一回目のラジオを配信したいと思います。

本日はラジオ第一回という事で、簡単に私の自己紹介から初めなければいけませんね。

あ、珈琲が来ました。良い薫りのブルーマウンテンです。

では。

名前は増田朋弥(マスダトモヤ)、年齢は二十二歳。職業は俳優。十五歳の夏休みの頃、サッカー部だった私のチームは夏の最後の大会で二回戦敗退。その後絵に描いたようにグレ初め、不登校、問題児として正式に認定。【WCCF】というゲームセンターのサッカーゲームに夢中に。サッカー部の鬱憤を晴らすかの様にゲームに熱中。毎日ゲームセンターで大人相手に奮闘。キラカードを引いた日は上機嫌に、引けなかった日は蟻の巣にコーラを流し込む日々。ユーザーは三十代、四十代が多い為強いカードにお金をかけて金の力で勝ちまくる。中学生チームはまるで歯が立たず肩を落として帰宅。帰宅、帰宅。掻き上げる前髪、飛び交う馬券。そんな毎日。納得のいかない私は家に帰って研究。研究、研究の日々。

“どうすれば金の力にモノを言わす大人達に勝てるのだろうか”

自分で契約した携帯電話で情報を収集し、取り憑かれた様に全国大会の動画を何度も見て研究。だが成果は芳しくなく過ぎていくのは時間だけ。昼に起きては冷蔵庫を漁り部屋に篭り研究。飽きてくると音楽をかけたり、覚えたばかりの射精。射精、射精。

そんなある日。正式に問題児認定された私は遂に自主退学を勧められ近所の中学校に見学に行くことに。気乗りしないまま歩くこと五分。

こんなとこに中学校あったんだなあ、と思いながらパチンコ屋のトイレを借りる気分で校長室に入室。出てきたのはズボンをおっぱいくらいまでズリ上げたまあまあの禿げたおじさん。この時校長室に三十分弱いたらしいが何を聞いたか、何を話したかはあまり覚えていない。

覚えているのは、「人間誰しも間違いはある。僕も過ちは犯す。大丈夫だ。うちにもサッカー部はあるし、人生は永いんだ。途方もなく永い。何も心配する事はない。君を助けたい。中学生らしく、皆と同じ様に生活していこう」みたいな事。

でもこの時僕は【WCCF大会】の事で頭がいっぱいだったし、大人の言う事がよく分からなかった。大体なんでこんなズボンをおっぱいまでズリ上げているおじさんに人生教わらなければならないのか、と思っていた。

私は、ズボンは腰までにした方がクールですよ。と言い残し校庭に出た。

この校長が私にとって最大の敵になる事、校長がズボンをおっぱいまでズリ上げている事への意味は後々に知る事になる。

校庭ではサッカー部が練習をしていた。下手だ、と思った。

三年生だろうか、上級生らしき生徒はボールの上に座り、下級生は一人の生徒を囲み蹴る、ズボンを脱がすなどをしている。

暫くすると練習試合が始まった。赤のビブス対ビブス無し。練習着が赤色のヤツがビブス無しチームにいる為大変に見ずらい。終いには赤ビブスの一人がソイツに間違えてパスを出す始末。

パスミスを受け取った赤の練習着は「ヤッター‼︎ツイたー‼︎」と歓喜の声をあげ無人のゴールへ。

結局試合はビブス無しの圧勝。その殆どの特典契機は赤ビブスチームのパスミスだった。その赤の練習着は得点王でチームメイトから持てはやされ、いい気になったソイツは「スパイ作戦大成功だぜ‼︎」と言っていた。

ちょっと何言ってるか分からなかったが、プレーの殆どが個人技でパスをせず、あと一本ワンツーパスがあれば、という場面が多数あった。パスを出して足を止める選手が多く三人目の動きが全く無い、三人目の動きがなければ守備側は攻撃の予想が簡単に出来、容易に守れるのだ。

自販機で買ったファンタグレープを飲みながら試合後の彼らの反省会を遠目で見ていた。飲みながら、声もなかったなと思った。「ヘイ‼︎右あいてるぞ‼︎」とか、「後ろからきてる‼︎」などの声がサッカー、結構大事だったりする。

声。声、コエ‥‥、肥え‥‥乞え‥‥超え‥‥声‥‥コエ‥‥‼︎

「声だ‼︎

私は大声を出していた。出したと頭が認識した瞬間既に走り出している事に気付いた。

声、声。そう、声。つまりコミュニケーション。連携、連携、黄金の連携。どんなに強い選手が一人いたって、それは二人には勝てない。ましてや、三人、四人となっては。

かつて長宗我部元親という武将がいた。彼は四国の戦国大名として知られ、弱みである山の多さを逆に強みと捉え、木材を管理し、職人たちの力で商品化を進めて経済難を回避した。そんな彼の言い遺した言葉の一つにこんなものがある。

『一芸に熟達せよ。多芸を欲張るものは巧みならず』

走り出した私は何か無敵にも近い感覚だった。部屋で閉じ篭っていては思いつきもしない事だった。この時、喜びと閃きから興奮していたが意外にも冷静だったのを覚えている。電線に止まる鳥、飛び跳ねる蛙、飛び交う馬券、ソフトクリームの様な雲、蟻の行進、飛び交う馬券。急に走り出した私を赤いビブスを着た少年とビブスを着ていない少年が訝しそうに見つめていた。

校長室からは校長が、こちらを見ていた。

家に着くと私は早速作業に取り掛かった。自分が管理する選手(カード)の国籍、出身地、利き足、交友関係、恋愛関係までもを調べ、絶対に仲良く、気さくに声を掛け合い、時には喧嘩もできるであろう最高の十六人を選出した。大会まではあと二週間。時間は無い。

その十六人はいわゆるメッシや、クリスティアーノ・ロナウドといったスター選手ではなく側から見たら「誰が使うんだよそんなヤツ」と笑われる様な選手だった。ただ私には自信があった。何故ならば

『ウチのチームは連携に熟達する』

と明確に決めたからだ。パス、パス&ゴー、三人目の動きで相手守備を翻弄する。大会まであと一週間。

ここで一つ言っておきたい事がある。これを読んでくれている方の中に“目標”を持っている人もいると思う。一つ聞きたい。期限は決めていますか?

期限は大事だ、期限を決定する事でやるべき事が具体的に、積極的になる。アメリカが月に行けて日本が月に行けなかった理由。それは、

「〜までに月に行く」と決めていたか決めていなかったかの違いだ。

アメリカは決めていた。日本は決めていなかった。それだけだ。

さて、マッスーWCCF物語ももうそろそろ終わりに近い。ここまで読んでくれて本当に有難う。もう少しだ。マッスーの闘いを最後まで見て欲しい、見届けて欲しい。私にはこの物語を伝える義務がある。


大会当日。店内は休日もあってか大勢の人で賑わっていた。普段この店舗にいる大人、中学生。更には見た事がない大人たちも大勢いた。エントリーを済ませ、自分の選手(カード)をスキャンしスタメンを登録する。数々のスター選手が登録されていき、周りの大人たちの盛り上がりは最高潮に達した。缶ビールを片手に騒ぐ大人達、私は被っていたキャップを取り前髪をかき上げた。

「長宗我部元親」

とモニターに映る。映った瞬間周りからの嘲笑と異様なざわめきが聞こえた。

これは、私のチーム名だ。絶対に勝つ、一芸に熟達して絶対に勝つ、と心に決めたが故つけたチーム名。だが周りの嘲笑はチーム名が由縁ではない。その登録選手だ。「こんな選手聞いたことねーよ」「あーあ、中学生が俺らの大会でふざけてるよ」「こいつと当たったとこはラッキーだな」「マジウケんだけど」「かわいそう」「なんなのフザケてんの」

「死ねよ」とまで聞こえてきた。

悔しさを押し殺してトイレの個室に閉じ篭った。私は大事な試合の前や緊張している時トイレに篭る癖がある。携帯電話を開き「大丈夫、負けない、大丈夫」とメモに打ち携帯電話を閉じた。目を瞑る。試合の展開をイメージする。良くなる展開、運をも味方につける展開。だが浮かんできたのは夏の最後の大会で敗けた場面、ゲームセンターに通う廃人の様な場面、校長の私を可哀想に見下す目、そんなものばかりだった。腕に雫が落ちた。試合まであと十分。



私は闘った、闘った。無我夢中に。一生を懸けて。自分を信じ、カードを、運を信じた。ある程度の運は計算に入っている為、本当の奇跡を信じた。

決勝まで勝ち上がった私は決勝戦前で再びトイレに篭った。

決勝戦はお互い五分五分の闘いが続いたが前半終了間際『長宗我部元親』は先制点を許した。相手は今までとは比べものにならない程強く、賢こかった。

その後ハーフタームで適切な選手交代を行い後半を迎えた。相手が三人目の動きで崩してこようもんなら四人目を出して対処し、チャンスとあれば人数をかけた。右サイドにいた選手を左サイドの選手と入れ替え翻弄し、途中からは4-4-2のシステムを4-3-3に、更には3-4-3にまで上げ攻め続けた。私は最後の最後まで諦める事なく闘った。

この後半からの記憶はあまり無い。本当に集中していたのだと思う。

結果は4-1。

私は敗けた。惨敗だった。

試合が終わると私はカードを纏め直ぐに店を出た。敗者に居場所は無かった。参加賞の限定カードを貰える列には行列が出来、大人たちはレアカードの交換や売買で盛り上がっていた。居場所は無かった。


決勝戦の相手は、高校生だった。


自転車を漕がずに押して帰った。鳥たちは忙しなく飛び回り、蛙は無感情でゲコゲコと鳴いている。ソフトクリームの様な雲は溶け、蟻は一列に並んでいた。その光景はまるで優勝する筈だった私を祝福しようと準備している様だった。

私はコンビニに入り、コーラとチョコレートを手に取った。レジに並び、「あ、揚げ鳥も一つ下さい」と言った私の声は震えていたと思う。

コンビニを出て蟻の巣に向かった。いつもの公園のベンチの下。だが蟻は一列に行進している為巣は周りからバレバレだった。

ベンチに腰を掛け、コーラを喉の奥に流し込んだ。半分くらい飲んだところで息が苦しくなり顔を上げた。顔を上げると夕陽があった。オレンジ色、綺麗な色、でもこの世界の終わりみたいな色。美しいな、そう思った時自分が泣いている事に気付いた。腕に落ちた雫は次第に滝の様に流れ出し、ベンチを零れ落ちた。悔しかった。ひたすらに悔しかった。試合だけでなく、何かとてつもなく大きなモノに敗けた気がしていた。そしてそれは私一人ではなく、私の様な人間、その全ての人達を代表して敗けた様な気分だった。夕陽は嘲笑に聞こえた。

顔を落とすと蟻の巣の近くに雫が溜まっているのが見えた。私は咄嗟に雫を砂で隠し巣の横にチョコレートを置いて帰宅した。



その後何を思ったか劇団に所属し、十九歳で事務所に移籍。そして昨年先輩であり素晴らしき女優「冨手麻妙」とマネージャーDと三人で独立。転機は山田孝之さん主演ドラマ『REPLAY&DESTROY』(2015.MBS/TBS.監督:飯塚健)でオーディションを勝って2話ゲストで出演させて頂いた事。

決勝戦から一年後の出来事だった。

映画、ドラマの仕事が多く、現在は楽天ラクマのCMに川栄李奈さんと二人で出演させて頂いております。

そんな私マッスーこと増田朋弥、本日から「note」にてブログを始めさせて頂きます。

今回は自己紹介がメインになってしまいましたが、次回以降はラジオ形式で配信していきますので、ご質問、下らない事、下らないネタなど御座いましたらコメント欄より宜しくお願い致します。

コメントは当ラジオへのお便りとして受け取らせて頂き、ラジオ内でご紹介する場合も御座います。


それではこの辺でお別れの時間となってきてしまいました。

本日のマッスーニッポンもここでお別れ。また来週お会いしましょう〜。


⭐︎増田朋弥スケジュール⭐︎

○「楽天ラクマ」CM  全国放映中!

○映画「ブルーアワーにぶっ飛ばす」
(箱田優子監督)         
2019年10月11日テアトル新宿他、公開!

○映画「任侠学園」
(木村ひさし監督)
2019年9月27日 東宝シネマズ新宿他、公開!

○映画「タイトル未定」(角田恭弥監督)               ※主演 2019年夏、テアトル新宿他公開!

○舞台「にじゅう昭和歌謡短編集〜其の三」
(穂科エミ演出) 2019年11月13日〜18日@中野BONBON
はぶ談義20周年公演、出演!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?