2020年5月の記事一覧
孫のことで頭を悩ます
七月二十九日(金)福留
女房が見舞いに来た。「きみまろは楽しかったか」と聞くと、嫌味と勘違いしたようで、「悪かったわね、来られなくて」としおらしい顔をする。そういうつもりではなかったのだが、素直に謝られるとかえって何も言えなくなる。
お互いしばらく黙っていると、女房が着替えの入った荷物を取り出しながら、「昨日、恵理子から電話があったんだけど」と静かに言った。
「おう、恵理子が何だ」
イケメンが入院してくる
七月三十日(土)砂原
午後、向かいの部屋に新たな入院患者が来た。病室前の名札には「野田涼祐」と書いてあり、なかなかのイケメンだった。しかしあんなイケメンでも結核になるのかと思うと心強かった。廊下ですれ違った時に挨拶すると、かすかに香水の匂いがした。
夕食後、どこからかギターの音色が聞こえ、僕はふらふらと病室を出た。音を辿って階段を上ると、屋上のベンチで野田君がギターを弾いていた。格好いい
イボ痔の手術を手伝う
七月三十一日(日)田渕
またまた妙な夢を見た。
私はナースステーションの前に立っていた。これから起こる出来事を、私は知っている。ドアを開けると部屋の中は空だった。
不思議と恐怖感はなかった。イスに座り、誰かが来るのを待っていると、後ろから聞き覚えのある声がした。振り返ると、大野とかいう看護師が息を切らし、張り詰めた顔で私を見ていた。
「田渕さん、ここにいたんですか」
「ええ、
笑みを浮かべた双子が廊下に立っている
八月五日(金)大沢
僕が三階の病室にいた頃、向かいの部屋にとてもよく雰囲気が似ている老人たちがいた。彼らはよく廊下の突き当たりにあるイスに向かい合って座り、そろって窓の外を眺めていた。会話している姿を見たことはなかったが、本当の兄弟のようで、僕は何となく好きだった。
しかしある日、彼らはそろって退院してしまった。
と、思っていたのは勘違いで、二人ともまだ病院にいた。二階の廊下で兄の