伝染する夢

 八月六日(土)野田

 夢の中で僕はヤクザの事務所にいた。そこがヤクザの事務所だと分かったのは僕の周りをヤクザが取り囲んでいたからだ。彼らは黒いスーツや派手な柄のシャツを着て、品のない笑みを浮かべていた。僕はイスに座らされ、後ろ手に縄で縛られていた。

 どうやら僕は監禁されているようだった。監禁され、自分の顔が元々どの位の大きさだったか分からないほど殴られている。

 なぜ自分がヤクザに監禁されているのだろう。理由を聞くために顔を上げると、黒いネクタイの男がペンチ片手に近づいて来た。男は目の前に立つと僕の顔を押さえ、頬を掴んで無理やり口を開かせた。そして無表情のまま僕の上唇をめくると、ペンチの刃で前歯を掴んだ。

 しっかりと根を張っているのか、僕の前歯なかなか抜けなかった。ペンチを握った手に揺られる度、口の中からは血が溢れ、僕のズボンや床を汚した。その様子を笑いながら見ていたヤクザの中に、高校時代の同級生がいるのを見つけた所で目が覚めた。寝ながら強く噛んだのか、唇が切れて血が出ていた。

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